何がびっくりしたってこのドラマ、主演の田中圭も、牧役の林遣都も、今回初めて知った訳じゃなく、むしろ色んなドラマで目にしていた、どちらかというと「よく知った」役者だったということだ。
このドラマの予告だって、役者陣を見て「手堅いキャスティングで見ごたえありそう」と思ってたくらいだもん。それが、蓋を開けてみると
「こんな人だったのーー!?」
と驚愕する展開になったのだった。
そう、知っていたはずなのに、
「知らなかった……!!」
という衝撃が大きかったんだよね。
田中圭の春田がもう、最初から全力で可笑しい。あの顔芸と、コンマ数秒までタイミングを合わせたかのごときモノローグ。やや大げさなBGMがまた、寸分の狂いもなく笑いの波を連れてくる。
一方の牧。「モテない独身アラサー男が、なぜか上司と後輩から突如迫られる」というのがこのドラマの軸となる設定だから、当然いくときはグイグイいくんだけど、それより圧倒的に多いのが「抑制」の演技。想いをたたえた牧の眼が切なすぎて、一気に気持ちを持っていかれる。
関わったすべての人が口を揃えて言うように、林遣都、眼で語る稀有な役者だと思う。
私が田中圭という俳優を知ったのはもうずっと前だ。いつだか思い出せない。「図書館戦争」の小牧教官も見た。クールで知的、清潔感溢れるイケメン教官役。相棒のいたみんこと伊丹刑事のツレとして劇場版から登場する岩月捜査官もいい感じのエリート刑事だったし。
どのドラマでも、その役としてごく自然に存在していて、「いい俳優だな」と思って見ていても、田中圭という個人にまで深く関心を向ける機会がなかったのだ。
林遣都もそう。はっきり認識したのは「風が強く吹いている」の実写映画かな。
これはそもそも三浦しをんの原作小説が大好きで、何度も繰り返して読むうち、(走るのって気持ちよさそうだな…)と思い始め、とうとうランニングを始める切っ掛けともなった作品。小説や漫画で好きな作品は多々あれど、実際ランニングを趣味としてしまうほど影響を受けたのは、私にしては珍しい。
蔵原走という、不世出にして孤高のランナーを林遣都がよく演じていた。あの映画は他のキャストもハマっていたな。
小出くん……
閑話休題。
まあともかく、実力のある演じ手として既に知っていた二人を、
「でもここまですごい役者とは知らなかった…!」
と目からデッカイ鱗がぼこっと落ちた、という、衝撃にも似た感動を与えられることになったのだった。
それは私だけでなく、世間でもそう感じている人が多いことは、回を重ねる毎に高まる反響の大きさからも伝わってきた。
おっさんずラブ、ラブストーリーとしてもコメディとしても、言うまでもなく素晴らしい出来なんだけど、私にとっては
「芝居の力って凄い」
とこれまでになく実感させられたドラマとなった。
演者の皆さんはもちろん、脚本・演出・その他小道具や照明のスタッフの皆さん、そもそもの企画を打ち立てた貴島P、この作品を作ってくれたすべての人に感謝。