おっさんずラブが好き!

ドラマ「おっさんずラブ」の細かすぎるレビューブログ。OLの深い沼にハマって当分正気に戻れません。ほぼおっさんずラブの話題しかないかもしれない。ネタはバレまくりなのでご注意を。

昆虫すごいぜ! ~6時間目:「アリ」~

 NHKの番組はさすが国営放送、予算にいとめをつけない(多分)だけあって、内容が濃厚で、視聴後「ええ番組見たなー」と満足感を得られるものが多い。

 中でもこの番組、スペシャルがあると欠かさず視聴するようにしている。

 私だけでなく、一部の大人たちの間で非常に人気があるようです。

 

 いやもう、香川照之が本気すぎてやな。

 毎回嬉し気に装着しているカマキリの着ぐるみがもうハンパない。伊達や酔狂で着れませんよアレ。

 と思っていたら、やはり香川さん自身で事細かに注文をつけて作っていたのだね。。。むべなるかな。

 要求を詰め込み過ぎて、お腹部分が膨れすぎちゃって、香川先生が好きな「オオカマキリ」ではなく「ハラビロカマキリ」のビジュアルに近くなってしまったそうな。

「カマキリのお腹はぺったんこが好きなの! 飢えてる感じがイイの!」

と熱弁をふるい、

「動きづらそうですもんね」

と拾ってくれたゲストの高田夏帆ちゃんに

「動きのこと言ってないんだよ(゚Д゚)ノ」

とかみつく。

 この番組においてカマキリ先生に「大人気(おとなげ)」というものを求めてはいけない。

 

 昆虫大好きなカマキリ先生が長年温めていた構想を実現した番組だけあって、番組冒頭から熱量がすごい。令和一発目の放送に並々ならぬ気合を見せつける。

 このロケ現場、どこかの梅林かな。遠ーーくからちょろちょろと木々の間を縫って駆けてきた先生、

「昆虫!! すごいぜ!!!」

とタイトルを叫んだ後、「ハイ!」とOKの声がかかると、

「…長ぇ…」

とゼイゼイ息を切らしながら木を離れる。笑

 大人気はないが、体力はオーバー50の年齢なりの先生であった。

 

 ところで、私も昆虫好きです。というか、一部をのぞいて生き物はほぼ全般好きと言っていいかもしれない。

 アリの大行列を見つけると、今でもつい立ち止まって、どこからどこまで続いているのか確認したくなってしまう。

 ずっと前、道端でしゃがみこんでアリの行列の観察してたら、通りすがりの親切な人に

「あの…大丈夫ですか?」

と心配をかけてしまった。以降、周りに人目があるかどうかよく確認することにしているけど、人気がない場所だと、心ゆくまで観察せずにはいられない。

 朝ミミズがのたくってると(この辺の土壌は豊かなんだな)と思うし、西日が強い場所だと(スズメバチの巣がないといいが)と心配になる。

 色んな生き物と密接に関わり合ってますからね、人の暮らしって。

 

 なので、地べたにしゃがみこんで生き生きと生きものに触れるカマキリ先生の心情は非常に共感できる。

 今回の「アリ」も面白かったです。

 そうなんですよ、すごいんですよねアリって。自分よりずっと重くて大きいものをせっせと運んでさあ。

 自分の後についてくる同胞のためにマーキングして、すれ違うときは触覚を触れ合わせて挨拶を交わしている姿もけなげ。

 子供の頃、ばあちゃんの畑仕事を手伝って、次の種を蒔く場所を耕していたとき、鍬がアリの巣を掘り返しちゃったことがあった。

 真っ黒なアリがわらわらと出てきて、「うわあーどうしよう」「大変だ!大変だ!」とパニックになっているらしい様子が面白くて、しばらくほけっと見惚れてしまった。

 で、お米より一回り小さいくらいの大きさの白い卵を一生懸命運ぶんですよ。その様子が必死で、いじらしくて、巣壊しちゃってごめんな…といたく恐縮したものの、

「ちょっと、早く耕さんね!」

とばあちゃんに怒られて、容赦なく畑を耕した遠い日の思ひ出。

 

 この番組、香川照之がただただ自分の趣味に突っ走って、「NHKだから」とか「子供番組だから」とか、そういう忖度を一切していなさげなのがよい。いや、実際は多少しているのかもしれんが、少なくとも一視聴者として番組を鑑賞する限り、そういう気配はまったく感じられない。

 番組冒頭でも大好きなオオカマキリの卵を見つけて大興奮。

「もうすぐだから。もうちょっとで出られるから」

と話しかけていて、見ている方は一瞬「?」てなるんだけど、これは卵の中でじっと春を待っている(と思われる)幼い無数のカマキリの命に呼び掛けているんだね。

 草むらでアリを見つけたときには、自分の手にのぼらせて、

「うわ、触覚を掃除してる!」

と大喜び。挙句、

「(人間なんてもんに触れたもんだから)汚いわね~しかもコレ、おじさんよ。50超えてるわよこの肌」

とアリにアテレコ。

 地面を這うアリを見つけようとしゃがみこんだものの

「何も見えないよ!」

と立ち上がって文句を言うカマキリ先生に、すかさず「老眼鏡」と「虫めがね」というマストアイテムを手渡すスタッフさんたち、心得ている。

 しかしヒートアップして「アレ持ってきて、アレ!」とホワイトボードを要求し、そこに教授よろしく板書しながら説明が始まると、長すぎて放送出来ないので、割と容赦なく早送り。笑

 この、カマキリ先生とスタッフとの温度差も随所に感じられて、この番組の面白さのひとつですね。

 

 生まれ育ったのがド田舎で、虫やミミズや色んな生き物に慣れ親しんで育った身としては、都会の子供たちが大抵虫嫌いで、それこそアリほどの大きさしかない羽虫にも大騒ぎして「イヤ~~」と逃げ回る風景をしばしば目にして、寂しい思いをしていた。

 カマキリ先生が力強く言う通り、アリ1匹も一つの命なんですよね。

 この番組を通じて、周りにあまり昆虫を見ない環境の都会っ子たちも、「昆虫、なんかいいかも」とちょっとでも感じてくれると嬉しい。

 

 虫たちは大量に生まれて大量に死んでいく。死ぬのも簡単だ。人間が指先で一ひねりしたらあっけなく命が終わる。

 そしておそらく、「何で生まれたんだろう」とか「オレ何してんだろ…」とか思い悩むことなく(そもそもそんな悠長に構えている時間がない)、産まれたからには一生懸命生きて、生をまっとうしていく。

 虫を見ていると、そんなことぐだぐだ考えるのなんて人間だけだわ、つーか贅沢だな…と思うようになった。

 

 とこのように、虫にはしゃいでいる無邪気なおじさんのエンターテインメントとしても楽しめるし、虫を通して人間の生き方を見直してみたりも出来る。

 NHKらしい、よい番組だと思います。

 

 ちなみに、家の中でうっかり甘いものを床に落としてアリに嗅ぎつけられ、行列を作られたら結構困ったことになる。行列が既に出来ているということは、アリの道が出来てしまっているということだから、しばらくはアリを退治しても床を拭いてもアリが来て困る…という経験をされた方も少なくないだろうと思います。

 そんなときは、洗剤が効きます。特にオレンジ系の臭いがするやつ。

 アレを薄めた洗剤液を作り、入って欲しくない箇所にまんべんなく塗ると、てきめんに来なくなる。

 お試しあれ。

 

 

 にしても香川さん、ドラマも出て、中車として歌舞伎の舞台にも出て、大忙しだと思うんだけど、よくこうやって昆虫を一日中ロケしたりするヒマがあるなあ…と感心する。

 いやもうホント、マジですげーわ。

 いっそのこと、

 

香川照之すごいぜ!」

 

でいいと思う。

 

 NHKの制作スタッフの皆さん、さぞかし大変だとお察し申し上げますが、是非今後もカマキリ先生について行ってあげていただきたい。