おっさんずラブが好き!

ドラマ「おっさんずラブ」の細かすぎるレビューブログ。OLの深い沼にハマって当分正気に戻れません。ほぼおっさんずラブの話題しかないかもしれない。ネタはバレまくりなのでご注意を。

おっさんずラブ第二話⑧ 屋上でキャットファイト!

 続いての屋上の場面。出だしのショットが最高に可笑しいですね!

 春田を危機から救おうと表れた牧の踏みしめた両脚の間に、春田と部長、という構図。

 男同士ベンチでくっついて、なんだか手を握り合っていたりして、見るからに不穏な様子なのに、黒澤は悪びれた表情でもないし、春田の方は自分のピンチが今いちぴんと来ていないように見える。牧くん、一瞬で腸が煮えくり返ったかもね!

 大股で2人へ近づいていく牧の顔、非常に険しいです。

 牧が2人の前に立ちはだかり、

「黒澤部長」

と話しかけたとき、部長は姿勢を元に戻し、しれっと「2人でランチミーティングしてたんだお」とでも言うべき距離を取っている。この辺さすが、年の功というか、老獪さを感じさせる。

「今は業務時間中ですよね。会社で公私混同はやめてもらえませんか」

「…どういうことだ?」

「春田さんがイヤがってるのが分かんないんですか?」

 うわー牧、もうキレかかってる。

 イヤがっているというか、正確に言うと「猛烈なアピールに困惑している」という感じだと思うけど、牧の眼から見たら

「会社の立場を利用して迫る悪辣な部長と、イヤでもNOと言えない春田さん」

でしかないのだろう。

 一方春田は、突然上司に向かって真っ向から歯向かうような態度の牧に仰天する。

「どうしたぁ牧!?」

 慌てて立ち上がってとりなそうとするも、カバンをぼんっと脇に放った牧、

「もういい!」

 ああ、キレちゃった…。



「これは、上司と部下の関係を抜きにして無礼を承知で言います」

 キレた牧、青空と都会のビル群をバックに、高らかに宣言する。

 いやいやいや、ここ会社。上司と部下の関係を抜きにしちゃいかんし、無礼を承知してるなら尚更、口にしていいことかどうかよーく考えようぜ……と、ツッコみたいところだけど、正論を拡声器でがなりたてたところで、この時の牧くんには聞こえなかったに違いない。

 

「春田さんから、手を引いてください」

 

 これね! 少女マンガではめちゃくちゃよく見る台詞だけど、リアルではまあ聞いたことないやつだね!

 ちなみにもちろん、言ったことも言われたこともないよ!



 そしてこのセリフをきっかけに、屋上バトルの幕が切って落とされたのであった。



「ちょっと言ってる意味が分からない!」

 さっきまでお仕事モードだったのに、急にやさぐれモードになってベンチにそっくり返る武蔵。

「手作り弁当なんて重いに決まってるじゃないですか」

 さすが牧くん、屋上に来たばっかだけど、状況を正確に読んでいる。

 つかキミ、一体どこから見てたんだ?笑

 おとぼけ武蔵はさらにすっとぼけを装い、

「え、春田、そうなの?」

と、牧ではなく春田に問う。

「え…いや、あの、そういうわけでは…」

と妙なステップを踏む春田、牧と武蔵に挟まれて、完全に三角関係の構図。

 それを見て、さらに牧のボルテージがあがる。

「直属の上司の前で本音なんか言えるわけないですよ」

 現に今君は本音ダダ洩れだけどね!

「牧、もういーから!」

とともかく黙らせようとする春田の方へ顔を向けて、

 

「部長に! 春田さんは! 守れません!!」



「ひょっとして君…」

立ち上がる武蔵。

「はい。オレは春田さんが好きです。たとえ相手が部長でも、絶対に渡しません!!」

と堂々と告げる牧。

 春田の腕をぐいっと取って、完全に臨戦態勢。

 

 睨み合う両者。

 見える。火花がバチバチッ…と飛び散ってるのが見えるぞ。

 2人には「カーン!!」と高らかに鳴り響くゴングも聞こえていたに違いない。



 なのに、へっぽこはるたん、事ここに至るも

(……!!)

 閃いた!みたいな顔したかと思うと、牧に取られていた腕を引っこ抜いて

「…うぉい!!」

とツッコミを入れる。

 違う、春田、そうじゃない状況を読めー!!

 けど、まったく春田に反応しない2人を見て、(…! ツッコミがあまかったのか??)と、わざわざ後じさって、

「うぉぉいぃぃ!!」

とツッコミなおす。

「――って、ツッコめって言ったじゃん!! 何コレ!?」

 そう、もちろん春田は以前牧に言われたことを忠実に守っただけなんだけど、当の牧、

「うるッさいなッ!!」

と一蹴。笑

 このときの牧くん、超絶鈍感ボーイ春田に構っていられる余裕はないのであった。



 牧のあまりの剣幕にビビってしまった春田を尻目に、男二人の舌戦がスタート



 先攻牧凌太、

「毎日飯作って、春田さんの胃袋支えてるの俺です」

と、「一番傍にいるのは自分」アピール。

「ええ!?」

と武蔵、分かりやすく動揺。

「俺たち今一緒に住んでますから」

「ええっ、はるたん同棲っ!?」

「いえルームシェアで…」

と打ち消そうとする春田に牧が

「ハイ!!」

とかぶせる。

 いいけど牧くん、キスをなかったことにして「冗談ですよ」とおふざけにまぎらしたのって多分つい昨夜のことだと思うんだけど、頭からすっ飛んでるネ!

 いいよいいよー。若いってそういうことさ。情熱のまま突っ走るがいい!(←誰)



 後攻黒澤武蔵、

「オレはよぉ!」

とこちらも頭に血がのぼって、相手は部下で自分は部長という立場を忘れている。

「春田と十年一緒に働いてンだよ!」

と「長く一緒にいるのは自分」アピール。

「だから!? 大事なのは長さより深さだと思うんですよね」

「今のはるたん作ったのはオレなんだよぉ!!」

 さあ両者、一歩も譲りません。

「ちょ、ちょっと、やめましょうよ2人とも…」

と仲裁に入ろうとした春田をアッサリ退けて、2人とももう相手しか目に入ってない。



「じゃあお前、はるたんのイイところ10個言えんのかよ!?」

「じゃあ春田さんの悪いところ10個言えますか!?」

 あーもう牧くん、部長に正面から指さしちゃってるよ…

 そしてすぐ相手のペースに乗せられる武蔵。

 

「えーと、えー、可愛すぎるー、存在が罪ぃー、ピュアー、…可愛すぎるー」

 

 って、とっさに思いつくはるたんの悪いところそれか。悪いところじゃないし。

 勝機ありと見たか牧くん、ついには人差し指を天に向かって立て、

 

「優柔不断、朝不機嫌、服ぬぎっぱなし、好き嫌い多い、靴揃えない、皿洗いしない、ちょっとそれ一口頂戴って言う、改札で引っかかる、方向音痴、うつぶせで寝るー!!

 早口言葉のようにまくしたてて、最後は渾身のドヤ顔。

 こっちも途中で「それ、悪いとこ?」とツッコミたくなるものが混じってるけど、そこはそれ、「いいところも悪いところも知り尽くしているのは自分」アピールであって、完璧なマウンティングなわけだから、これでいいのだ。

 横で聞いてた春田が

「…そんなにか?」

とちょっと傷ついちゃってるけど。笑



「はるたんそんなんじゃねーよ!!」

と頭に来た武蔵、ついに牧につかみかかる。

 牧も負けじと

「なんだおっさん!!」

「おっさんとか関係ねーから!!」

「春田さんが迷惑してんの分かんないんですかー!!」

とここはもう、男二人、本気で揉み合ってる。

 でもなんか、多分本当に掴み合いしちゃってるんだと思うけど、2人とも可愛くて、ネコがネコパンチで「きー!!!」と腕をぐるぐる振り回し合いっこしてるみたいな、どこか抜けた感じが可笑しい。



 2人を引きはがそうとして、一度は振り払われ、ころりんと転がったはるたん、見事なプリケツを披露するも、めげずに起き上がって、二度目は何とか掴み合いを止めることに成功する。

 

「オレのためにケンカすんのやめてくださぁぁーーい!!」

 

 腹の底から力を振り絞って叫ぶ春田。



 ケンカの真っ最中のネコさながら、ふーっ、ふーっと荒い息を吐いて睨み合っていた武蔵と牧だったが、キーンコーンカーンコーン……と昼休みの終了を告げるチャイムが鳴ると、

「13時だ。仕事に戻るぞ!」

「そうですね!(ヤケクソ)」

と、アッサリファイトを終了させるのであった。



 この場面、時間にしてたった3分ほどでありながら、

 

・「〇〇さんから手を引いてください」

・「あなたに〇〇さんは守れません」

・「(自分)のためにケンカするのやめてください」

 

という、フィクションでしかお目にかかれないセリフがふんだんに盛り込まれ、おっさんがおっさんを取り合う華麗なキャットファイトも鑑賞でき、2人の間で翻弄されておろおろするはるたんも見られて、大変に見ごたえのある場面となっているのでございます。

 いやー、「おっさんずラブ」って、本当に素晴らしいですね!(淀長風)