おっさんずラブが好き!

ドラマ「おっさんずラブ」の細かすぎるレビューブログ。OLの深い沼にハマって当分正気に戻れません。ほぼおっさんずラブの話題しかないかもしれない。ネタはバレまくりなのでご注意を。

巨大子宮筋腫全摘手術&入院レポ⑤入院当日

 さて、やってきた入院の日。

「あっという間だった」

 と書いたけど、(本当にそうだったかな?)と記憶のおさらいをしてみたら、そうでもなかったと思う。

 多分、お腹の痛みが悪化していって、(早く手術して取ってしまいたい)と、しまいには手術の日が来るのを指折り数えて待っていたくらいだから、

「ようやく来た」

というのが実感として正しい。




 朝、入院のための備品を詰めたスーツケースを持って、母親と一緒に自宅を出発。時間通り病院に到着した。

 私だけ別室に通され、PCR検査を受ける。付き添いの母親はこの検査は不要。

「入退院受付」という窓口に行き、今日の入院予定であることを告げる。ここで、提出する書類をチェックしてもらい、看護師と薬剤師のチェック(本日の体調や普段飲んでいる薬等)を受ける。

 そこから外来へ行って、主治医の話を聞くんだけど、名前を呼ばれて診察室へ入るとき、母が

「私は外で待ってる」

と言い出したので、

「遠いところを遥々何しに来たんや」

と全力でツッコんでしまった。この、「手術の説明」を一緒に聞いてもらう必要があるから呼んだのだよ。

 事前に聞いてはいたけど、ここでもう一度、詳しい説明をしてもらう。術式、考えうる合併症など。書類にすべて目を通し、1枚1枚署名していく。

 そこから病棟へ上がった。今度は、麻酔科ドクターによる麻酔の説明。まだ若いドクターだったが、話が分かりやすくてよかった。

 全身麻酔と、硬膜外麻酔というのをすること、硬膜外麻酔は、背骨の間から針を通して髄膜にどうのこうの、

「針はこのボールペンのペン先くらいな太さで…」

と、素人にも分かるように、丁寧に教えてくれる。

 想像すると痛そうだが、そんなに痛くないとのこと。

 ここでも、稀に起こる神経麻痺などリスクについて説明される。気胸、アレルギー、肺血栓塞栓症、等々。「2万人~7万人に1人程度と極めて稀な確率ですが…」と書いてある。

 極めて稀な確率のロシアンルーレットになるわけだが、極めて稀なのと「確率」の問題なので、事前にくよくよしてもしゃーない、と開き直るしかない。それでも、その極めて稀な確率に当たってしまった人たちが、今までにいたからこのように注意書きがあるわけで。

 膨大な数の犠牲の上に今日の医療の発展があるのだなあ……と、ちょっと遠くに想いを馳せてしまった。

 このリスクの説明で、唯一(それは当たったらいやだなあ)と思ったのは、輸血の際のクロイツフェルト・ヤコブ病。絶対になりたくない病気のひとつだが、幸いにも輸血はなかったです。



 ここでも同意書にサイン。

「理解しましたので、納得の上、その実施を受けることに同意します」

 という項目にチェックを入れるんだけど、

「理解しましたが、実施には同意できません」

 という項目もある。こっちにチェックを入れる人はどれくらいいるんだろうか、入れたらどうなるんだろうか…と好奇心が沸いたが、仕事熱心なドクターをわずらわせたくないので、黙っていた。




 麻酔の説明が終わると、翌日の手術の日程を確認する。始まる時間の15分ほど前に、母に病院に来てもらって、病院内で待機してもらうことになる。

 ここで、私は病棟へ移動して、しばらくお世話になる病室へ入る。

 母とはここで別れる。




 病室に着いたのがお昼前だった。3人部屋だが、他に人がおらず、私1人。

 ベッドの横に、クローゼット付きの戸棚があるんだけど、これがまあとっても機能的で感心した。収納がたくさんあって、持ってきたものはすべて納まった上に、余裕があった。

「入院必須アイテム」とされていた道具の一つがS字フックで、これは確かに持って行ってよかったけど、なくても足りたかもしれない。

 病室は南向きで、陽が差し込んで明るく、温かかった。

 暗くじめっとした部屋じゃなくてよかった、快適に過ごせそう、と安心した。




 10分ほどして、看護師さんが来た。造影剤を入れるのに、点滴の針を刺さないといけないんだけど、血管を探すのに苦労していた。

 そう、術前検査のときも、健康診断の採血のときも、皆さん私の腕のどこに差したらいいか、結構悩んでいて申し訳なかった。血管が細いらしい。

 左腕をこすったりもんだりして、

「……右見てみますね」

「ハイ」

 今度は右腕の肘の内側を指で押さえて、探って、こすって、

「………もう一回左見てみますね」

「ハイ」

 私はベッドの上に横たわり、なされるがまま。

 結局、15分ほどかかって、

「……やっぱり左でいきます」

 と宣言して、看護師さん、えいっと針を刺す。

「痛いですか」

「痛いです」

 痛くたってしゃーないやないか。と、無の境地で寝転がって待ってたんだけど、なんか血がどばっと出ちゃって、ベッドの下のシーツまで血がついてしまったらしく、ベッドチェンジになった。

 まだ若い看護師さんで、この後先輩看護師さんになんか指導されていた。




 で、点滴をぶらさげたまま、ガラガラを押して(点滴スタンドというんですね)歩いてレントゲン室へ移動。

 ここが結構長かったなあ。冷たい金属の台の上に、自分でのぼって仰向けに寝ると、私の身体や、台の位置を技師さんが細かく調整した後、モニターを見ながら指示をする。

「ハーイ、息を深く吸いまーす。そして吐きまーす。ハイ、そこで息止めてください!」

 バシャッと音がする。で、私の乗った台の下の何か板みたいなやつを出し入れして交換する。見えないから想像。それをやりながら、右腕は血圧を計られ、親指にはパルスオキシメーターがつけられ、左腕は相変わらず点滴。なんか忙しい。私はじっと寝ているだけだけど。

「緊張してますか?」

等、時々付き添いの看護師さんが声をかけて、和ませてくれる。緊張は特にしてなかった。途中、うとうとしちゃって

「息止めてくださーい!」

を聞き逃し、フツーに撮影されてしまって、(ああ、しまった)と思ったが、もうそれで終わりだった。

 台からは自分で降りるんだけど(結構高さがあって降りにくい)、そこからは何故か車椅子だった。

「何で車椅子ですか?」

と聞いてみたらば、

「造影剤の投与で気分が悪くなる人がたまにいらっしゃるんですよ」

とのこと。

 幸い、私はピンピンしていた。車椅子を押す看護師さんが、エレベーターとか病室で割と車椅子をガン!とぶつけていて、(不器用だな…)と思ってちょっと面白かった。



 病室に戻ると、遅い昼食が運ばれてきた。白いご飯、チンゲン菜ときのこのおひたし、肉豆腐とサツマイモの煮たの。全部冷たくて驚いたが、そらそうか、決まった時間に作って供するのだから、診察の都合で遅くなってもチンなんかせんわな、と納得。ここは病院で、レストランじゃない。

 ごはんは薄味で美味しかった。自分以外の誰かが、栄養バランスを考えて、適正カロリーで美味しいごはんを作ってくれて、後片付けもしなくていいなんて、めちゃくちゃありがたい。腹8分目の量もちょうどいい。

 レストランじゃないと言えば、箸がなかったのがビックリだった。「そういう病院もある」とYouTubeで見て、念のためマイ箸セットを持参していたのが、早速役に立った。YouTubeで予習しといてよかった!

 

 

 その後、主治医のドクターの内診。明日手術だからもう内診はないかと思っていたので、ちょっとビビる。

 朝もだけど、若い男性ドクターが内診に立ち会っていた。股を大きく広げながら普通に会話もしているので、妙な感じだけど、向こうは医者、私は患者。ドクターにとっては単なる日常の一コマに過ぎない、と言い聞かせる。

 そんでそのまま、

「じゃあテイモウしますねー!」

と看護師さんが明るく声をかける。

「ハーイ、大きな音しますよー」

 ちゅいーんバリバリバリバリ。もうどうにでもしてくれ、の心境。

 ここでもつい、好奇心が刺激されてしまって、

(今脱毛してる人も多いんだろうな……)(つるつるの人ってどれくらいいるのかな……)

と疑問に思ったんだけど、黙っていた。



 その後、シャワーを浴びる。これでしばらくは身体を洗えないので、念を入れて洗っておく。

 左手に刺された点滴の針と管はそのままなので、痛いのと、手が使い辛くてちょっと苦労した。この点滴は、術後4日目くらいまでは刺しっぱなしになる。多分、いちいちまた血管を探して刺し直すのが面倒なのと、患者にも苦痛なので、「刺しっぱなし」になるんだろうけど、これはこれで厄介だな…と不便に思う。

 シャワーの後、髪を乾かして身支度を整えると、また看護師さんが病室に来た。

 今度は、「入院診療計画書」と「入院のしおり」というのを貰い、看護計画について説明を受ける。

(『看護計画』と言えば、『イタズラなkiss』で琴子が苦労してたやつ…)

と思うと、ちょっと可笑しくなった。




 18:00に夕食を食べた後、21:00から絶食。22:00に下剤を貰って飲む。

 

 この間、何をしていたかというと、ノートに日記を書いていた。

 私は大体、何かあると記録をつける。旅行には必ず日記とスケッチブックを持っていく。

 初日から細々したことを記録していたので、そのノートを見て、今この文章を書いているわけです。



 この後はもう寝るだけ。邪魔な腫物とおさらばできるかと思うと、

「あー明日の今頃は~♫」

と鼻歌歌いたい気分だった。

 手術に対する恐怖は特になかった。私はすやすや寝ている間に全部終わるはず。怖いのは、麻酔が覚めてしまう「術中覚醒」だけだ。(これこそ、ごく稀に起こるらしいのと、実例をインスタの漫画で読んだので)

 ただ、時々カミシモちょんまげ姿の侍が脳内に現れて

「お腹(ハラ)を召される覚悟は出来ましたかな?」

 と仰々しく囁くのが謎だった。

 いや、お腹を召されるわけじゃないんだけど。なんだこの妄想は。

 とか考えながら、23:00すぎに寝た。

さよなら〇〇〇

 去年、ある別れがあった。

 これまでとても濃密なつきあいがあったある男と、関係を断つことになった。



 思えば、出逢いは最悪だった。

(うわ、何こいつ……)

 というのが、第一印象だった。

 周りで、とても評判がいいのは知っていた。「業界No.1」という呼び声も高かった。初見では、そのよさがサッパリ分からなかった。

(私とは合わないな…)

 と思っていた。



 ところが、いつの頃からだろう。

(彼じゃないとダメ)と思うようになっていた。

 慣れてくると、その円熟味とか、スッキリ加減が、唯一無二だと感じた。

「ピュア」というところも、ポイントが高かった。



 彼とのおつきあいは、楽しかった。

 楽しく、美味しく、芳醇な時間をたくさん過ごせた。

 正直お金はかかるけど、コスパは悪くない、と思っていた。

 会った次の日は、どんよりとして体調も思わしくなかったけれど、それは自分が悪いのだ、彼に原因があるのではない、と思っていた。

 いや、思い込んでいた。

 

 

「思い出してみてください。最初、イイと思わなかったでしょ?」

と言われたとき、結構衝撃的だった。

 そうなのだ。最初は、全然よさが分からなかった。

「イイと思えるようになった自分、大人やと思ってるでしょ?」

 そう。まったくその通り。価値が分かる自分は、大人になったのだ、と思っていた。

「でもそれ、思い込みですから」

 えっ…………

「試しに、やめてみてください。マズイ、と感じるようになるはずですよ」

 言われた通りだった。




 私が、美味しいと思い、(味が分かるのは大人の証)とまで感じていたのは、単なる思い込みだった。

 

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 人生で最初に飲むアルコールって、ビールじゃないですか?

 私の場合、大学在籍中のコンパの席だった。ヱビス推しの先輩がいて、その人に言われるがまま、飲むようになった。

「ホップ100%が美味しいねん」

と言われれば、(ほぉ~、そうなんや)と思えた。

 ビールの味を覚えてからは、色んな種類のビールを飲んだ。確かに、米やコーンスターチが配合されているものより、麦100%の方が、雑味もなく、美味しいと感じた。

 なので、モルツや、ハイネケンも飲んだ。だけど、一番はなんといってもヱビスだった。

 ヱビスと言えば、白のシルク、グリーンのホップ、黒のブラック、等々、季節に応じて出される種類を全部飲んできた。

 グッズも可愛かったので、揃えました。グラスはもちろん、小皿やコースター、キーホルダー、メニュー立てなんかもある。

 ヱビスフリークと言ってもいいだろう。

 

 

 そんな私が、ビールをやめた。

「……そう言えば、最初はまずかった…」

と気づいてからは早かった。

 なんとなくお酒が欲しくなって、コンビニやスーパーのお酒コーナーを見ても、ビールを選ばなくなった。

 あれだけ、ヱビスヱビスと言っていたのに、関心がなくなってしまった。

 

というわけで、ヱビスビールと完全にサヨナラしました。

 ヱビスだけでなく、そもそもビールを全く飲まなくなりました。




 これに関しては、「美味しいという思い込みから醒めた」としか言いようがないです。

 まあ、今まで市民プールを並々満たすくらいは飲んできたし、そろそろサッポロから感謝状が届いてもいいとまで思っていたので、

「一生分飲んだ」

と思えば納得。

 テレビでCM見ても、スーパーやコンビニで現物を見ても、欲しいと思わなくなった。

 なんか、催眠術から醒めたような感覚。



 この勢いで、酒そのものと縁を切りたいのですが、まだそれには至っていません。

 断酒の努力中ですので、またご報告します。

巨大子宮筋腫全摘手術&入院レポ④入院前の準備

 こうして、人生初の入院と手術に臨むことになったわけですが、手術日が決定した段階で、入院まで1カ月以上あった。

 となると、それなりに色々準備する猶予が与えられているということになる。

 そうなった場合、みんなやることは多分一つ。

「知りたいことをグーグル先生に聞く」

 これです。

 

 私も、

・開腹手術からいつまで痛いのか

・普通に動けるようになるのはいつか

・腹筋したり走ったりしても大丈夫になるのはいつか

・入院生活ってどんな感じ?

・これがないと困る!というものはあるのか

 等々、片っ端から打ち込んで検索しまくりました。



 今の時代、知りたい情報は大概YouTubeにあるのだ。

 ドクター、ナース、患者本人、色んな人が自分の立場から動画を作って投稿してくれている。

 ありがたい時代です。



 というわけで、時代の恩恵を存分に享受することにしまして、以下のような動画で入院・手術の予習をしました。

 

www.youtube.com

 

 

 

www.youtube.com

 

 

 知識をつけつつ、イメトレをするのにYouTubeには非常にお世話になりました。

 実際に何を準備して、何が役に立ったか、詳しいことはまた後ほど。

 

 

 後は、前の記事でも書いたけど、

・術後の筋力低下に備えて身体を作っておく

 これだ。

 傷が早く治るためには、バランスよく栄養を摂って、細胞が再生しやすい身体にしておかなければならない。

 友達が、

「ヤクルトはすごくいいよ!」

 と教えてくれた。

「手術の前後1か月はヤクルトを飲ませる、とあるお医者さんが言っていた」

 そうな。

 ほほう、そんなことが……と感心を抱き、検索してみると、こういう記事がヒットした。

 

institute.yakult.co.jp

 

「手術の前後にヤクルトを飲め」とは書いてないけど、ヤクルトの研究所が載せている記事なんだから、まあそういう解釈で間違いなかろう。

 効かなかったとしても特に害はないので、採用させていただくことにして、その日から早速ヤクルトを飲むことにした。

 入院してみたら、病院内の自販機の半分くらいがヤクルトだったから、やっぱり効果はあるんじゃないのかなあ。知らんけど。

 ちなみに、これは今も続けています。

 

 

 あとはいつもの筋トレ。しばらく出来なくなるので、HIITとハンドクラップをやるようにしていた。

 段々お腹の痛みが増して、思うような筋トレ(特に腹筋)が出来なくなっていったけど、極力やっていた。

 

 

 そんなこんなで、バタバタしているうちに12月が来て、あっという間に入院の日がやってきた。

 

巨大子宮筋腫全摘手術&入院レポ③入院前の手続き

 大人になってよかったことはたくさんあるけど、その一つは間違いなく

「もう定期試験を受けなくていい」

 ということだ。

 これは本当に嬉しい。「体育の授業で無理矢理長距離走をやらされなくていい」とか、「席替えで不本意な席順にならなくていい」とか、色々あるな。ああ、大人になってよかった。

 が、子どもの頃から嫌いで、苦手だったもの、「事務手続き」というやつは、大人になってもついて回る。

 人生のあらゆる局面で必ず現れますね。

 今回の入院にあたっても、この事務手続きをしこたまこなすことになった。

 嫌いだが、仕方がない。




 手術をすることが決定すると、まず第一に決めなければならないのが、

〇手術の日程

 だ。

 つまり、何月何日が手術日かを決めて、そこからすべてがスタートする。

 ドクターが空いている日と、こちらの都合とを擦り合わせて決めるんだけど、この二者だけではなく、家族の都合も考慮に入れなければならない。

 私の場合、母に田舎から出てきてもらうことになったので、いったん持ち帰り、両方と何度か電話のやり取りを交わして、12月某日に決定。



 決まると、今度は「ハイ!」と書類を渡される。

「婦人科で手術を受けられる方へのご案内」という紙が一番上にあって、手術までの流れを説明してくれてある。

 

①術前検査:手術の4週間前

②検査結果を聞きに来院:検査の数日後

③入院申込の手続:②と同日

④入院:手術の前日



 私はこれに加えて、前回のMRIから時間が経ったので、もう一度撮り直しということになった。

 なので、本来入院の前に3回は来院する必要があったのだけれど、平日そんなに休みが取れない、ということで都合をつけてもらって、コンパクトに詰めてもらった。



MRI再撮影】

 朝一で病院へ行く。当日は朝から絶食。お水は飲んでよかった。

 撮影の「同意書」というのを示され、一読してサイン。あと、問診票もあった。

 前回撮影したとき(別の施設)、造影剤を投与されての撮影で、お腹に重し?みたいなのを乗せられて、そのまま30分くらいじっとしてなきゃいけなかったんだけど、痛みがある部分をぎゅっと圧迫されてものごっつい痛かった。脂汗で「痛いです」と訴えても、「あと少しですから!今やめちゃうと撮り直しになっちゃうので!」と激励されて、(それもそうやな…)と歯をくいしばって(比喩でなく)耐え忍んだ、という経緯があった。

 なので、それを言うと、

「今回は造影剤はないので、大丈夫ですよ」

と言われた。

 前の人が終わるのを待っている間、時間があったので、壁に貼ってあるポスターを熟読していた。

 

「人間の身体はほぼ水分で出来ているので、沢山の水素原子核がある。MRIの強力な磁場の中に入ると、その原子核が一斉に同じ方向を向く。磁力を切ると、それぞれの核がエネルギーを放出する。その信号を受信し、画像処理する。各臓器の形、病変がよくわかる」

 

 云々、読んでいるときは、ほうほう、なるほど…と分かっているつもりだったけど、うーむ、こうして改めて書いてみると、何のこっちゃサッパリ分からんな。笑



 そうこうするうち、

 

「湖谷朔さーん!」

と呼ばれ、中へ入った。台に横たわり、なんか色々指示されたけど、細かいことは忘れた。

 ただ、白い筒の中へと進んでいくのが(『挿入』という表現がぴったりだな…)と思ったことは覚えている。

 耳元で、工事現場みたいな音がずっとしていたけど、10分もすると慣れてしまって、しまいにはウトウトしていたらしい。右手に持ったナースコールのブザーがころんと転がる感覚ではっと目が覚めた。

 クリアな画像を撮影するため、動くの厳禁なので、再撮影にならないよう、じっと「静」を保つ。呼吸も出来るだけ静かに。

 前回、痛かったやつは40分くらいかかったけど、今回は15分程度で済んだ。



【術前検査】

 

 MRIの画像撮影の後、もう一度診察室へ行き、今度は術前検査のついての説明を受ける。これもすべて同意書にサインしていく。

 レントゲン、心電図、呼吸機能検査、血液検査、尿検査。

 MRIと合わせて、全部で3時間くらいかかった。



【入院申込手続】

 

 入退院の手続専用窓口というのがあって、そこへ行って手続をした。

 ここで、改めて入院までの流れの説明を受ける。

 入院の際は必ず家族についてきてもらうこと、今はコロナ禍なので当日PCR検査を受けなければならないこと、面会は禁止であること、云々。

 入院前、3週間くらいは毎日体温を計って記録すること。

 1週間前から薬もサプリも飲まないこと。

「年齢的に、心配はないと思いますが…」

という前置きつきで、一応せん妄についての説明もされた。




 この日はこれでおしまい。

 この病院、タッチ式の自動精算の機械がなくて(今どき?)と驚いたんだけど、コロナのために撤去したのだそうな。

 銀行のATMもすべて、この春になくしたんだって。

 徹底しとるのう~。



 MRI撮影もあって、検査もたくさんしたので、一体いくら請求されるのか震えながら待っていたが、1万円弱くらいで済んでホッとした。



 帰り、売店と食堂を覗いてみた。売店はセブンだったかな。何でもある。

 お腹が空いたので、豚カツ定食食べて帰りました。

ドラマ「ミステリと言う勿れ」が予想以上に「ミステリと言う勿れ」だった。

 このドラマ、放送が始まるのをずっと待っていた。

 原作のエッセンスを取り込んで作ってくれるのなら、きっと面白いに違いない。

 だけどもしかして「コレジャナイ」感に悶えることになるかもしれない。今まで、実写化で(えええーーちょっとそれ違うんじゃない??)と裏切られたことは何度も何度もある。

 どうかそうじゃありませんように。

 …と、ちょこっとドキドキしながら、祈るような気持ち。




 いやー……予想以上に、原作のまんまでしたね…!



 あの第一話、ドラマにするには、というか、ドラマの尺におさめるには、ちょっと難しいんじゃないかと思っていた。ややこしいから。

 ややこしい上に難しいのが、探偵役である主人公が、ほとんど動かないんですよね。取調室に座って、ただ喋るだけだ。

 でも、見事に実写化ドラマになっていた。

 超面白い漫画が、面白さはそのままで、テレビの画面の中にあった。

 漫画のキャラが、立体化して動いている。

 脳内からなんか、ぶわっと出るのを感じました(語彙力…)。




 第一話の面白さは、主人公久能が「安楽椅子探偵」として謎解きをするところにある。

 それがしかも、本人が容疑者として引っ張られて、取調室に座っている、という状況。

 コワモテの刑事を相手に一歩も引かず、ささいな矛盾を見逃さず、切りつけられた刃を見事に打ち返す。

 ミステリ好きのハートはここでがっちりと鷲掴みだろう。



 

 あとは多分、久能くんの台詞が、(そうそう、それな…!)とツボを押してくれるところだ。

 例えば、お調子者の池本刑事が奥さんとケンカ中であることを鋭く見抜いた後、

「ごみ捨てって、どこからやってますか?」

とツッコむ。

「ごみ捨てって、まず家中のごみを集めるところから始まるんですよ」

「それもしないで、ただ出来たやつをごみ捨て場に持って行くだけで感謝しろって言われても、奥さん身体がしんどいんじゃないですか」

 ここで、

「そう、それー!! うちのにも言ってやって!!!」

 と溜飲を下げた人、多かったはずだ。

 本当に面倒な部分は全部やってもらってるのに、表層的なところだけちょこちょこっと手伝って、

「オレは家事をやってる!」

とドヤってる夫の話、本当によく聞くもん。

 理路整然と、よどみなく、忖度なくズバッと言ってくれる久能くんの物言いは、溜飲が下がるんだよね。




 自信がない風呂光さんにかける言葉もそう。

「おじさんたちって、徒党を組んで悪事を働くんですよ」

 ってさ、「僕は偏見に満ちていて、だいぶ無茶も言いますけど」と断ってはいるけど、事の本質を突いているよね。

「徒党を組んだおじさんたちが働いた悪事」って、枚挙にいとまがないですやん。

 悪事をはたらいた女ももちろんいるけど、「徒党を組んで」というところが、ちょっと違う。

「あなたは違う生き物なので、違う生き物のままでいてください」

という言葉を聞いて、風呂光さんの瞳に光が宿る様、伊藤沙莉ちゃん、お見事でした。




 話は違うんですが、北新地のビルでガソリンまいて放火した事件があったじゃないですか。

 あれを聞いた私の友人が、

「またおっさんなん? ……なんでおっさんてそういうことするんやろな」

とボソッと言っていた。

 そう、大体そういうのやらかすのはおっさんだ。全部とは言わんけど99%おっさんだ。

 こういうおっさんの凶行を撲滅するにはどうすればいいのか、ずーっと考えてる。




 閑話休題

 池本刑事はキャスティングちょっと違うんじゃないかと危ぶんでいたけど、ちゃんと池本刑事でした。エンケンさんの藪さんもいい。

 菅田くん、やはり達者な役者さんですね。公式サイトでインタビューを読んだら、

「久能が滔々としゃべると、教祖様みたいになってしまう。そうじゃなくて、発展途上の未熟な人間というキャラにしないと、単なる説教になってしまうので、そこは気をつけている」

とのことだった。

 そうそう、よく気がつくし、頭も回るけど、空気が読めなくて、めんどくさいこだわりが強い、未成熟な「久能整」という人物像がよく出ていたと思う。

 そして、このややこしい話をちゃんとドラマとして成立させているのは、脚本の力が大きいだろう。

 相沢友子さん、好きな脚本家の1人だが、さすがの手腕。




 さて第二話、さらにややこしい複雑な事件なので、どうするのかと思っていたら、順番はそのまんまドラマにしたのね。

 この話こそ、(ドラマの尺におさまるのか…?)と思ってしまうが、もうこのチームなら大丈夫でしょう。

 期待して視聴します。

 

 

 あ、改めてほしいところがひとつ。

 久能くんの長広舌の場面、クラシックの名曲がBGMに流れるんだけど、これがなかなかうるさい。気をとられて、久能くんの台詞を聞きもらしたりする。

 これ、要る?? 私は要らないと思う。

 余計なBGMはつけないでほしいな。それか、もう少し音量を控え目で。

幸福度を120%満たしてくれる「チェリまほ」に描かれるどう見ても幸福度の低い人々についてじっくり考えてみた件。

「チェリまほ」再放送始まりましたね。

 深夜の放送、もちろん録画しました。

 今まで死ぬほど見てるのに、録画をもう10回くらい見てる。(見過ぎ)



 

 何度も見ていると言っても、さすがに毎回画面にかじりついて食い入るように見ているわけではない。お気に入りの番組や映画を、BGM的にかけっぱなしにして作業することはよくある。

 だからなのか、改めて見て、今まで気にならなかったことがふと、

(ん…?)

 と引っかかった。

 それがつまり、表題の件だ。



 童貞のまま30歳の誕生日を迎えた安達は、突如として周りの人の心の声が聞こえるようになってしまう。

 出勤途中、安達と触れ合う人々の、心の声。

(だる……)

(会社行きたくな~い……)

(アイツ、クビになんねぇかな…) 

 信号を待つ老若男女の顔は、天を仰いだりうつむいたりと向きこそ様々だけれど、皆一様に疲れている。眉間に皺が寄っている。

 足を踏みつけてきたサラリーマンは、安達が思わず振り返ると、

(何だよ)

 メンチ切りながら、内心ですごんでいる。

 動揺した安達がよろけてぶつかると、

(邪魔…!)

と迷惑そうな声が耳に飛び込む。

 しゃがみこんでしまった安達に声をかける警察官も、

「大丈夫ですか?」

とは上っ面だけで、心の中では

(朝から酔っ払いか? 勘弁してくれよ…)

と不満で一杯。




 いやーこの場面、どうですか。ぎすぎすしてて、攻撃的で、幸福そうな人が1人もいない。

 ここだけ見たら、(なんて不幸そうな国なんだ…)と思われそう。外国人に。

 でも、今まで、散々見てきたこの第一話、ここで引っかかったことはなかった。

「サラリーマンが大量に出勤する朝のラッシュ時」の光景として、ごく普通のシーンと捉えていた。

 電車通勤の自分自身、似たような景色を毎朝見ていたからだ。

 別に毎朝不機嫌とか、(仕事行きたくない…)と思っていたわけじゃないけど、急に電車が停まってイライラしたりとか、でかいバッグぶつけられて、振り向きもせずに相手が行ってしまって、(ちょっとー!!)とやり場のない怒りを感じたりとか、そういうことは日常だった。




 でも、それが当たり前って、(……ちょっと異常じゃない…?)と、初めて思ったんですよね。

 皆が疲れて、仏頂面で、イライラしていて、それが毎朝の光景って、幸福度低すぎん……??




 年末年始、まあ、去年を振り返ったりするじゃないですか。

 ふと(私の幸福度はどうだったかな?)と思ったんですね。

 大変だったけど、不幸ではなかった。仕事も忙しかったけど、それなりに一生懸命やってきた。楽しいこともたくさんあった。

 ただ、全体として、「幸福度はいかほど?」と問われると、正直、それほど高くはなかった、と思ってしまった。

 



(……もう少し幸せを感じる暮らしがしたいなあ……)

と、心の底からふつふつとそんな願望が沸いてきたんですね。

 なので、今年の目標はそれにします。「自分を幸せにする」。

 

 

 まあそれはさておき。

 このドラマの一場面、私が今まで何も感じずスルーしていたように、この国の平均的な風景に過ぎないと思う。

 幸福度の感じ方については、国民性もあるだろう。日本人は、各個人がやらなければならない義務については割ときっちりしているし、公共の場を乱すようなこともせず、真面目で控え目な人が多いが、一方で、「どうしたらよりハッピーになれるか?」ということを追究するマインドの持ち主は少ないように思われる。いや、そりゃみんな幸せになりたい欲求はあるんだけど、そこにあまり我を押し通すマインドじゃないというか。

 去年の幸福度ランキング、日本は56位だったようです。先進国としては低いんじゃないかな。

 このドラマの主人公、安達にしてからが、全然幸福度高くないもんね。この出だし。

 平凡で、これといったとりえもなく(と自己認識していて)、恋愛的なイベントとも無縁で、「凪」の人生を生きていくんだろうな…と半ば諦めの境地で迎えた30歳の誕生日だった。

(誰かに心の底から好きだって思ってもらえてることが分かったら…)

 と一瞬夢想し、(アホらし)と自分で打ち消した、まさにその夢がかなうことで、安達清の幸福度は100%までぐぐっと上昇するわけだけど、じゃあ、魔法使いにならず、黒沢の思いに気づくこともなければ、きっと安達は幸福度が低いまま30代を過ごしていったんじゃないか。




 あ、今更「チェリまほ」批判ではありませんので、念のため。

 これまでの恋愛ドラマは、「相手がいてこそ幸せ」という固定概念で描かれていることが多かったけど、チェリまほはそうじゃない。藤崎さんというキャラクターで、ちゃんとそこも掬い上げている。

 そうではなく、「チェリまほ」みたいな幸福度100%のドラマであっても、そこに幸福度ランキング56位の日本の現実が意図せず映り込んでいた、という話。

 

※「幸福度ランキング」の出し方には色々な数値が絡んでいて、ランク付け自体に意味がないと仰る向きもありそうですが、私は妥当な数字じゃないかと思うので、そこに特に異論はないです。

 興味のある方は検索してみてください。





 生きていくのは大変だ。働いているからにはしんどいのが当たり前。

 と思っていたけど、そうじゃない生き方もあるんじゃないのかなあと、最近そんなことを考えております。

 少なくとも、もっと幸福度を上げることは出来るはず。それには多分、自分で自分に無自覚に嵌め込んでいる「枷」を外す必要があるのだ。思い込みとか、これまでの常識とか、社会通念とか。「かくあるべし」という理想像とか。色んなものが、自分を縛って、幸福から遠ざけているかもしれない。

 といって、人間何十年と生きてきて、そうすぐに行動が変わったりはしないんだけど、何かを決めるときに(その選択は明日の自分の幸福度を上げるか?)と考えてみるのはアリだと思う。

 そう、今年の目標はこれでいきます。

 

「自分の幸福度を上げる」。


 まずは、自分を幸せに。そして、周りの人も幸せに。

 そんなwin-winの状態が実現したら、最高じゃないかと。

 

 

「チェリまほ」を久しぶりに見たら、今年の目標が決まりました。

 今年の大晦日に、(ああ、幸せな1年だったなあ…)と振り返ることが出来ますように。

とあるOL民の感慨

 こんばんは。今宵も閲覧いただきありがとうございます。

 今日は七草ですね。うちは正月のご馳走もなかったし、お粥は作らんけれども。

 もうすっかりお正月気分も抜けきった頃でしょうか。



 さて、2018年の「おっさんずラブ」放映から4年が経とうとしている。

おっさんずラブ」が好き!なぞという非常にマニアックなタイトルをつけてこのブログを始めてから、同じだけの時間が経ったということでもある。

「5年経っても感想書いてるかもしれない」と自ら予言した通り、なんといまだに4話のレビューすら終わっていないという体たらくであるが、まあそんなことはどうでもいい。




 私が登録しているサブスクは二つあって、TELASAとAmazonプライムだ。

 TELASAは、登録した当時はauビデオパスだった。「おっさんずラブ」の動画を見られるのがそこだけだったので、一も二もなく登録した。出勤中、スマホでも見られて非常に便利であった。いつでもどこでも「おっさんずラブ」が見られて月600円くらいだったら全然惜しくない、と思った。

 ある日気がついたら、TELASAと名前が変わっていた。名前は変わっても、サービスの内容自体は同じだったので、特に異存はなかった。そのまま今に至る。いっときハマったタイBLもここで見た。

 Amazonプライムは、動画のためだけではなかったけど、結果的にプライムビデオをめちゃくちゃ利用している。サブスクの中ではコスパは最高にいいんじゃないかと思う。

 で、今やその両方で「おっさんずラブ」を鑑賞出来る。

 いつ見ても、変わらず、OLの世界は優しく、楽しく、せつなく、面白い。




 しかし、アレだ。

 「おっさんずラブ」放映当時と今とでは、随分変わった、と私は感じる。




 何かが世間で受けるとき、そこには必ず「ギャップの魅力」がある。

「めちゃくちゃいかついのに中身は乙女」(参考:デトロイトメタルシティ

「美少女なのに中身はおっさんorおっさんなのに中身は少女」(参考:パパと娘の7日間)

 この、「〇〇なのに△△」は、物語を作る上での鉄板セオリーでもあって、広く人口に膾炙した作品ではよく使われている手法だ。

 それで言うと、「おっさんずラブ」は「男同士なのに」とか「BLなのに」とかがついた上で、

「ドラマとして質が高い」「面白い!」「笑えて泣ける最高のラブコメ!」

と、その意外性が評価され、あの爆発的な人気を呼んだのだと思う。




 だけど、「男同士」を始めとする、LGBTその他性的マイノリティに対する風向きって、随分変わったと思いません?

 まず何より、「おっさんずラブ」以降、同性カップルを扱った作品が増えた。

 元々あったんだけど、OL以前より明らかに、「日の当たる場所」に出てきたと思う。

 そんで、その作品を「好き」と公言出来る雰囲気が出来てきた。

おっさんずラブ」のときはまだ、「『おっさんずラブ』が好きって周りに言えない…」という人も少なくなかったと思うの。

 けど今は多分、かなり減ったと思う。少なくとも、公言しても

「ええー、あれ男同士でしょ?」

とあからさまに揶揄するような向きは、結構少数派になりつつあるのではなかろうか。




 すべて「思う」とか「感じる」とか、私の主観のみで述べていて申し訳ない。詳しく統計を取ったわけでもデータがあるわけでもないので、事実とズレている可能性は大いにある。

 ただ、BLという言葉すらまだ知られていない、完全に日陰の身分だった時代から腐界に棲息している人間の、嗅覚と触覚と肌感覚で捉えた「時代の空気」である。

 この4年で、変わった、と思う。

 変えたのは、「おっさんずラブ」という一つのドラマのヒットである。

 …と断言するのは言い過ぎかもしれないが、一助となったのは間違いない。




 実を言うと、私自身の中にも偏見はあった。

 いや、当時は「ない」と思っていたんだ。男性同士の恋愛に対して、自分は特に偏見を持っていない、と自認していた。

 だけど多分、春田と牧とか、シロさんとケンジみたいに、

「外見はイケてる」

人同士じゃないと……という感覚はあったと思う。深掘りすると。

 あと、女性同士がつきあうことについて、(反対はせんけど、感覚的に分からんな)と思っていた。よくよく考えてみても、女性である自分が、同じ性に対して恋愛感情を抱く可能性はない、と思っていたので。

(もし同性の友達が、好きだと告白してきたら、どう感じるだろう)

と、「おっさんずラブ」を見ながら想像してみたことが何度もある。

 でも、実際に体験したことがないから、なかなか想像しづらかった。

(もしかすると、やっぱりちょっと嫌悪感とか覚えるのかな……そうでない、と言い切る自信はないな…)

と、その時は答えが出なかった。



 まあこの辺は、自分自身のセクシャリティの他に、趣味嗜好もあるし、多分ルッキズムの問題とかもあるんだろうし、一概に「LGBTへの偏見」と括れない気もするんだけれども。

 ともかく、自分で考えてみて、(答えが出ない)(正解が分からない)ということが、結構あったんです。




 ただ、当時「回答不能」と出た、こうした色々な問題は、その後ずっと頭の片隅にあり続けた。

 何かにつけ引っ張りだして、ああでもないこうでもないと、頭の中でこねくり回して考えることをやめなかった。

 そのうち、それらの問題に対する自分の感じ方も変わってきた。

 クマさん系の中年ゲイカップルを見ても、特に何とも思わない…というか、微笑ましく応援する気持になったし、女の子同士でつきあっていることをカミングアウトしているカップルも(色々大変だろうけど負けるな、頑張れー)と、親しみを感じるようになった。

 ある日ふと、

(……前はこうじゃなかったよな?)

と気づいた。

 時間をかけて考えているうちに、ゆっくりと私自身が変わっていったんだと思う。




 セクシャリティについても、ですね。

 生まれ持ったものは変わらん、と思ってましたね。ハイ。

 だから、春田は牧を好きになったということは、潜在的にゲイかバイだったのだ、と思っていた。

 だけど、今や180℃違う意見になってしまった。

 ストレートであろうと、同性に恋することはある。人の恋愛って、それほど単純じゃない。

 私だって、女性を好きになる可能性はあるぞ、と思うほどに、変わってしまった。




おっさんずラブ」から4年経った現在、目に映る景色はかなり違ったものになった。

 そしてそれは間違いなく、「おっさんずラブ」が変えたものなのだ。

 このドラマが我々の社会にもたらしたインパクトは、やはりただならぬものだったなあ、と思う。




 ところで、「チェリまほ」は再放送が決定して嬉しいんですけど、「おっさんずラブ」もぼちぼちしてくれませんかね? もちろん2018年のですよ。春田と牧のやつ。天空不動産編ね。(くどい)

 一挙放送でも、深夜に週1でもいいから、やってくれないかな。