おっさんずラブが好き!

ドラマ「おっさんずラブ」の細かすぎるレビューブログ。OLの深い沼にハマって当分正気に戻れません。ほぼおっさんずラブの話題しかないかもしれない。ネタはバレまくりなのでご注意を。

おっさんずラブ第一話⑩ 始まる恋

 わんだほうでしこたま飲んだ春田、ちずに抱えられてご帰宅。

 酔っぱらい方が毎度豪快だ。遣都くんが「圭くんの酔っぱらい方が面白くて…」と会見で言っていたけど、確かにかなり独特でユーモラス。

 時代が昭和なら、三角帽子かぶってお寿司のお土産ぶらさげて帰ってくるお父さんだな。

 

「まーきーま~きぃ~」

と牧を呼ぶ声がもう、甘える子供だね。

 春田を受け取って抱える牧ももう慣れてる感じ。

 初めましての挨拶のあと、ちずの説明がいい。

「好きでもない人に迫られて困ってるみたい」

 「職場の上司に迫られて」でも、「同性のしかもおっさんに迫られて」でもなく、「こちらは好きじゃない相手から好意を告げられて」困ってる、と。

 おっさんずラブの優しい世界は、こういうさりげない台詞ひとつひとつが積み重なって構成されている。



 ここからは、牧が春田に惹かれていく気持ちが丁寧に描かれている。

 ここを振り返ると、特にこれといったセリフがないんだ。あのラストのパワーワードが出るまでは。

 それぞれの場面、牧の表情の微妙な変化で、どんどん春田に気持ちを持っていかれる様子が手に取るように分かる。



 大トラの春田をソファまでなんとか運ぶ牧。

 べろんべろんに酔っ払いながらも、

「まーきー、カバン取って~…」

 と頼む春田。

 言われた通りカバンを取ってあげるのはもちろん、牧くん、春田の世話を甲斐甲斐しく焼いてるんだよね。「酔うと靴下の片方を脱いじゃう」設定の春田だけど、「もう片方牧が取ってくれてきゅんとした」とケイタナカ氏が語っていたのは、この場面かな。

 

「カバンの~中には~何が~…コレ!」

 

じゃじゃーん!とばかり牧に手渡したのは、レジュメを綴じたクリアファイル。

「何ですか、これ」

「プレゼントォー!!!」

 酔っ払い特有の大声で怒鳴って、春田はごろんとあっちを向いてしまった。

 

 

 それが「春田流営業虎の巻」。

  担当エリアの場所と特徴、それぞれの顧客の詳細な情報、ポスティングのコツなどが記されたレポート。

 新しく来たばかりで、一般顧客相手の営業にもまだ不慣れな牧のために、春田が急遽こしらえたものであろう。

 これがもし牧だったら、もっとスマートなレポートを作るのかもしれない。

 春田のレポートは、隙間が多くて、書き込みの字も(ついで表紙の妙な動物も)お世辞にも上手とは言えない。

 けど、牧への思いやりが一杯に詰まっている。

 行間から、「これ読んで頑張れ!」という春田のエールが滲み出ている。

 牧のためだけに作られた、世界でただ一冊の営業虎の巻ノート。

 

「春田さん、これ…」

 聞こうとしても、肝心の春田はもうスコーと寝息を立てて眠っている。このとき、ちょっとだけ覗いている背中がちょいセクシーですよね。

 

 

 

(これを、俺のために?)

と思ったら、そりゃ、嬉しいですよね。

 じんわり胸が温かくなってるの、見ていて分かる。この表情。

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 酔っぱらってへべれけなのに、これを手渡すのを忘れずにいてくれたことも嬉しいはず。

 これ、あかんやつや。ギャップ萌えで落ちちゃうやつですわ。



 次の日の朝、出社して早々、仕事上の大きなミスが発覚する春田。

 姿を現した春田にそのことを一番に告げるのも牧だ。

「キャンペーンのチラシとポスターの地図が間違っていたらしいです…」

 この日やる予定のオープンハウスのチラシとポスター。地図が間違っていたら、お客さんが現地へたどりつけない。

「確認ミスです。すみません!」

ただちに自分のミスを認めて謝る春田。ミスをしたのはもう仕方ない。あとは言い訳せず、どうやってリカバリーするか考える他ない。

 チラシとポスターを修正するにしても、現地販売会は13:00から。そちらの設営準備もしなければならぬ。

「手が足りないですね…」

と漏らした牧の言葉を受けて、

「うーわ」

と感嘆したのはモンスター新入社員のマロだ。

「春田さんのせいで詰んだって感じですね。大変だこりゃ」

 他人事の上無責任極まりない発言だなマロ。その上思いやりもない。

 地図を間違えたのが春田だったとしても、チェックしてOKを出した他の人もいるわけで、こういうミスって誰か一人のせいってことはないんですよ。(自分も気づかなかった)と責任を感じるか、ミスしてしまった仲間のために自分が出来ることはないか考えてみるとか、大人のビジネスマンならそういう方向で考えなければならない。

 ま、マロだからね。マロ、第一話ではいいとこないな。笑



 このマロの言葉を聞いた牧が、春田の横で思わず何かを言いそうになる。

「そんな言い方はないだろう、仮にも先輩に向かって」

とか、

「ついこないだ春田さんにクレーム処理をしてもらったばかりじゃないか」

とか、牧の内心の声はそんなところだろう。

 結局言わずに呑み込むんだけど、見ている人に大体伝わる。



 第一話のこの場面あたりから、春田の横が牧の定位置になってくる。

 そしてその距離が徐々に近づいていく。

 

 

 ところでこの「春田流営業虎の巻」、下手カワなトラ(ですよね?)がキーホルダーになって、ネコの牧メモと並んでOL民の護符となってますけれども。

 多分、牧にとっても宝物になったんじゃないかなあ。

 結婚した後も大事に保管してるような気がします。