さて一話も残り1/3ほどだ。ここからが本番というか、物語はラストに向けてボルテージをぐぐっと上げていく。
視聴者の心を一気に掴んだのもこの部分という気がする。
ここからは、部長の見せ場が続く。
大きな失敗をした春田を、黒澤部長は皆の前で責めたりしない。
「おいおい、下向いててどうするんだよ」
それぞれに今やるべきことを的確に指示して、
「やれることからやっていこう!」
と檄を飛ばす。
颯爽とした部長の登場で、どんよりした空気が一変し、皆が各々の持ち場へ散っていく。
もちろん、好きな人をかばいたいという気持ちはあるだろうけど、これは黒澤部長の仕事におけるいつものスタンスなんでしょうね。
頼れるリーダー像。うちの職場にもいて欲しいです。黒澤部長のような上司。
そのすぐ後のアレですよ。
懸命に修正シールを貼る作業をしつつも、部長と2人きりであることに気づいた春田の脳裏によぎる疑念。
(もしかして、二人っきりになるための策略…?)
「修正シール、取ってくれ」
と言われて差し出した春田の手と部長の手が触れあって、
「わぁっ」
と思わず手を振り払ってしまう春田。振り払うというよりは、もう身体ごと引いてる。春田が部長に対して明確な拒否を示す唯一の場面。
その後の黒澤部長の傷ついた表情と言ったら……シナリオブックに「子犬のような」と書かれていたけど、ホントに子犬だ。笑 なんつーか、たまらなくキュート。
「部長、」
と話しかけられて、すがるように春田を見る顔も、
「あと、1人でやりますから」
とハッキリ拒絶されて、視線を泳がせた挙句悲しそうに眼を伏せるところも、せつな可愛くて仕方ない。
部長からすると酷なこの場面も、(策略…?)と目をすがめた後に(いやいや、俺のためにやってくれてんだ!仕事だ仕事!)と春田が頭をぽかぽかやるコミカルな仕草が挿入されていたり、
「1人でやりますから」
「……」
の後に悲しいBGMが入る絶妙のタイミングとか(昼メロかよ!)、演出のせいで思わず笑ってしまう。
ここ、名優2人の顔芸合戦が実に面白い。お芝居でがっぷり四つに組んでいる感じ。
演じていて楽しかっただろうな、と見ていて分かる。
寂しく部屋を去る部長の姿が印象的なこの場面。しかし、春田の拒絶がひどすぎるかと言うと、そんなことはなくて、むしろ彼の気持ちもよく分かる。
尊敬する上司であった同性の黒澤部長に迫られて、どうしていいか分からない春田の困惑が、
「ああっ!」
とやけくそで声を上げて天井を仰ぐ仕草から見てとれる。
次の場面はまた、カッコいい部長の見せ場だ。
現地販売会に駆け付け、慌てて着ぐるみを着込む春田。のぼりだけでなく、キャラクターの着ぐるみを用意してるなんて、さすが天空不動産は大手っぽいな。そして着ぐるみを着るの、来たばかりの牧やぺーぺーのマロじゃなく、割とベテランの域であるはずの春田なんだね。イイと思います。恋愛における性別や年齢だけでなく、職場の上下関係も型にはまってないOL世界。なんなら武川主任や部長でも着ぐるみ平気で着そうだもんね。部長は2016年度版ではトナカイ着てたし。
ここでもまだ春田の失敗について文句を言ってるマロ。君、態度がでかいだけでなくしつこいね! 舞香さん、「まあまあまあ」となだめてるだけだけど、あれが私なら、
「黙らっしゃい!」
と怒鳴りつけてるな。
とここで部長登場。ぎゃあぎゃあ言ってるマロに向かって、上司らしく諭すんだけども、モンスターのマロ相手でも、部長は怒鳴ったりしないんだな。
「逆だったらどうだ。ミスを犯したのがお前だったら、春田はお前を責めると思うか?」
「……責めないと思います…」
「だろ?」
とこうですよ。
上から押さえつけるのではなく、穏やかに言うだけで、モンスターマロを一発で黙らせちゃった。春田の優しさをよく分かっている部長だからこそ出来る説得でもあり、さりげないけどこの場面、黒澤部長の人柄がよく出ていて、好きな場面です。
見ていた春田がまた、「ぶちょ、ぶちょ…」と「部長」が発音できなくなってるけど(笑)、これはかばってもらって申し訳ないやら、ありがたいやら、複雑な感情が渦巻いて処理しかねている…といったところだろうか。
ありがとうございます、と言いたかったけど、なんと声をかけていいのか分からなかったのかもしれない。
「俺たちも行きましょう」
と牧に促され、
「うん……」
と着ぐるみを被った春田。
とそこへ、部長の傍らにある金属製の看板がぐらついているのが目に入った。
気づかず立っている部長。
看板を支えているワイヤーが外れた!
部長の上に倒れ掛かる看板。
考える前に身体が動いて、着ぐるみのまま猛ダッシュする春田。
「部長ーー!!」
どん!と部長にアタックをかまして、見事看板から部長を守ったものの、自ら看板の下敷きになってしまう。
意識を失っている春田の傍らに着ぐるみの頭がころころっと転がるのがいいですね。
なかなかベタな場面ですが、徳尾さんが少女漫画の愛読者と知って納得しました。
うん、ここ、少女漫画的にドラマチックな盛り上がりで、いいと思うよ!
「春田さん!!」
と叫んで駆け寄る牧。
「春田ーー!!」
絶叫する部長。
さてこの後がさらにクライマックス!
続く!