さて、春田が運びこまれた病院。「巌流総合病院」って、ちょっと面白いですね。なんでその名前にしたんや。笑
病院のロビーで春田の状況を報告する牧。
「…いえ、まだ治療中です。状況が分かり次第、また報告します」
電話の向こうは武川主任でしょうか。深刻そうな様子からして、春田はあのまま、意識を回復せずに運ばれたんでしょうね。
診察室の前の待合では、
「なんてこった…」
と頭を抱える黒澤部長の姿が。
「俺のせいで……はるたんが……」
ぶつぶつつぶやいたり、突発的に
「なんてこった!」
と立ち上がったりする部長の頭は多分春田のことで一杯で、そばで牧が見ていることはまったく意識していない様子。
確かに、部長をかばって倒れたわけだから、心配するのは当然としてもだ、ここまで動揺を露わにするのはどうなんだ……と、部長を見つめる牧の表情にもやや疑念が生じているような。
診察室の扉が開いて、看護師が2人現れる。
「まだ若いのにね…」
「大変だね…」
なーんてため息交じりの会話を聞かされたらそら、どんな重体に!?てなりますわな。(笑)
おまけに、続いて出てきた医師が、部長に「春田はどうなんですか」と詰め寄られて、
「出来ることは、やりましたが…」
なんて答えるもんだから、部長も牧も完全に(何かとんでもないことになった!!)と誤解してしまう。
実際「医師として出来ることはなかった」=「治療するほどのことではなかった」のなら、お医者さんはこんな言い方絶対にしないと思うYO!
ま、でも、コメディとしてはこの程度のフェイクはアリだと思います。
ドラマにおいては得てして「誤解」が物語を動かしていく重要な要素ですから。
こうして、医療関係者の(というか徳尾さんの)フェイクにまんまとひっかかった牧、血相を変えて春田がいる診察室へ飛び込む。
ハイスピードカメラによる3カットがいいですね。牧の内心の動揺が、手に取るように伝わる。
扉が開いた後は、牧の眼に飛び込んできた春田の姿を、視聴者も一緒に見るようなカットになっている。
牧の眼に映ったのは、意識を失って蒼白で横たわる春田の姿……ではなく、診察台の上に座り込んで、看護師の女性と何やら楽し気に話しているのどかな様子の春田だった。
「え……」
と言葉を失う牧。
おう、と片手を上げてみせ、
「なんかね、無傷だって」
ノンキに報告する春田。
「はっ?」
とにわかには事態を呑み込めない様子の牧も、
「今日はもう、帰っていただいて結構ですよ」
にこやかに告げて部屋を去っていく看護師さんの様子を見れば、重大な事態でないことは分かっただろう。
それにしても、
「俺、脳年齢85歳だったんだよ。んなわけねーだろっつの」
と笑いながらタブレットを牧に見せる春田の方は、状況をまったく分かってない。
「…え、なに、若いのにってこれのこと…?」
とこの辺でようやく事情を察した牧が、
「…んだよもうッ…!」
と膝から崩折れそうになる気持ち、よく分かる。
部長を突き飛ばして、自分が身代わりにあの大きな看板の下敷きになるところも、意識を失っているところも、目の当たりにしている牧だ。
頭を打ったことで起こる様々な病状を想像して、内心気が気でなかっただろう。
こういうとき、心配させた当の相手がまるっきりなんともなかったとしたら、安心すると同時に腹が立ってくるの、あるあるですよね。
牧も、髪をくしゃっとかきむしっただけでは気持ちがおさまらず、
「もう…ッ!」
と春田を突き飛ばしてしまう。
「なんだよ!?」
一瞬抗議する春田も、
「もう…オレ、どうしようかと思ったんですよ!」
泣きそうになりながら怒鳴る牧の剣幕に驚いて、
「ごめんごめん。……心配かけました」
と素直に謝る。
いつもの牧だったら、この辺でぷんすか怒りながらも、「ホントに春田さんはもう!!」と「友達」モードに戻せていたのかもしれない。
でも、思いがけない春田の事故と、看護師&ドクターの仕掛けたナイスフェイクで、もう「友達」じゃない領域に踏み込んでいることに、ここで気づいてしまったのかもしれない。
春田が謝ったあとも、気持ちが顔に出てしまうのを抑えられない牧。
ここの林遣都がホントもうマジチワワ。「林遣都=チワワ」説が座長の口から飛び出すのは2話の副音声だけど、でももう既にチワワ。
でっかい目を涙で潤ませて、こんな顔されたら、そりゃもう好きになっちゃうよね!
まあでも、天然でなおかつ超絶鈍感ボーイのはるたんなので、この場面ではせいぜい、(なんか知らんけどオレのことをすげー心配してくれたっぽい)程度の認識だったのかもしれない。
にしても、
「…牧もそんな顔すんだね」
という春田の言葉が、この先2人の間に展開していく恋を予感させて、視聴者にとっても大変美味しい場面になっています。
というわけで、私は個人的に、春田が牧を好きになったのはどこだったのか?と言えば、「大体このへん」なんじゃないかなあ、と推察しております。
普段冷静でめったに取り乱さない牧が、自分を心配して、これだけ動揺したというところと、やっぱ泣きそうになってる顔ってね。落ちちゃうと思うなあ。
でもそれは多分人それぞれ。見た人の分だけ、「春田は牧にここで落ちた」ポイントがあるんじゃないでしょうか。
座長が春田の中の人として「最初から好きだった」と発言したとしても、それは決まりきった「正解」というわけじゃない。
ドラマは見ている人のものなので、それぞれ自由に「自分の中の見解」で楽しむことが出来る。
まあでも、愛は時間をかけて育まれるものですからね。
「ここからスタート」と明確な線引きがされているわけじゃない。
ただ、ここまでは普通に、会社の同僚&同居している友達として好きだったのが、春田の中でほんの少し、友情じゃない方向に進んだんじゃないかなー、と感じるわけです。
春田と牧の間で何かが芽生えたというか、進んだというか、その意味で重要なこの場面。ドラマとしてはほんのさわりの部分だけど、私はこの場面がとても好きで、何度見返しても楽しめる。
これだけでも十分恋愛ドラマとして成立しているのに、ここへ部長を持ってくるのが徳尾脚本の面白さ。
「はるたん!!」
と叫んで闖入…いや失礼、飛び込んでくる部長、もう最初から笑えるからね!笑
「春田……」
名前を呼ぶなり、何も言えなくなって大型犬みたいにハァハァいってる様子を見て、初見では(ややこしいのが来たぞ~…)とwktkしていたものですが、さて春田の内心はどうなのか。
さすがに察して、春田にしては早めに
「席を外してくれるか」
と牧に頼む。
若干腑に落ちない表情で、それでも出ていく牧。
そしてやはり春田しか視界に入っていない部長。
ここからは部長のターン。
さらに続く!