やっと見ましたー。
にしても、今やパソコン1台あれば、家で色々映画観れちゃうから、凄い時代ですよね。
と昭和世代の感慨はさておき。
現代人のスマホへの依存度という点では、鋭い作品だった。
「スマホ中毒」という言葉がもうそぐわないほど、スマホは私たちの生活に欠かせないアイテムになっている。
うかつに落とすとエライことになる…という点では、得られる教訓が多く、啓蒙的な作品にもなっていると思う。
そんで、私はミステリやサスペンスが好きなので、この展開は結構好みだったんですけどね。だから割と楽しみながら見てたんですけどね。
途中から「あれー??」とか「うーん……」てなっちゃう点が色々目について、惜しい作品でもありました。
主演の北川景子の彼氏=富田くん(田中圭)がある日タクシーにスマホを置き忘れるところから物語が始まる。
その日から起こり始める奇妙な出来事。ひとつひとつはなんてことないんだけど、奇妙さは徐々に奇怪さへと変化していく。
もしや犯人か?と思わせるキャラが数人提示されるんだけど、どれも怪しくて、前半はミステリとしても楽しめた。
ミステリには「お約束」がつきものなのと、いわゆる「様式美」というものもあるので、ある程度水準を満たしてくれれば、その他のアラは片目をつぶって見逃すくらいな余裕、見る側にも必要なんですけどね。
スマホで次々と不可解な出来事が起こるんだけど、ことは深刻度を増していくのに、主人公の麻美も富田も、スマホに電話がかかってくると出ちゃうし、なんなら片時も傍から離さない。
最初の20分くらいなら分かるよ。でも、映画の中盤に差し掛かっても、スマホを遠隔操作されているとかまったく疑わず、今まで通りにスマホを使おうとするところに、徐々に違和感を感じ始めた。
妙な画像が送られてきて、お互い疑心暗鬼になってケンカするあたりになると、
(いやいやケンカしてないでそろそろ警察行こうぜ…)
と内心ツッコミながら見ていた。
そんで、麻美が出されたカクテルを飲んじゃう場面ね。
(ええっ、知り合って間もない男に出された酒、そうやすやすと飲んじゃう!?)
てマジでビックリした。
まあ百歩譲って北川景子のビジュアルの麻美が、自分は妙齢の美人という自覚がなかったとしてもだ(あまり考えにくいけど)。よく知りもしない人と夜会うだけでもアレなのに、差し出されたカクテルを何の疑いもなく飲むってアウトでしょう。
案の定の展開になるわけですが、
(うーん、そりゃーそうなるよね……)
と、ここは同情できなかった。
その後はなかなか息をつかせぬ展開で、ドラマチックに盛り上がって、よかったんですけどね。
前半、うっかりポンコツ男っぷりを披露していた富田くんが男を上げる。
疾走する場面、
「エライ、富田! よくやった!!」
と全力で声援を送るくらいにはカッコよかった。
2人して危機を脱したかと思いきやそこへ犯人が戻ってきて…というのも、お約束中のお約束だが、まあそれはいい。
さあこの狂気に満ちた犯人とどう対峙するのか……と固唾を飲む場面。
麻美の過去を富田にバラそうとする卑劣な犯人。
漢を上げた富田くんだったが、狂った犯人に鉄パイプ(?)様の棒で打たれて足を負傷し、動けない。
さらに襲い掛かろうとする犯人の前で、彼の身体に覆いかぶさって睨みつける麻美の目力が凄くて、おおっ、華奢ながら華麗なアクションで反撃するのか?と一瞬期待が膨らんだが、
「言わないで! ……私が自分で言う」
と、犯人じゃなく彼氏の富田くんの方を向いちゃったから、
「ええっ、今!? 今このタイミングでカミングアウトなのッ…!?」
て椅子から転げ落ちそうになったよね。
いや、だってさ、キミ自分の状況分かってる?
薬盛られて拉致られてさ、殺されそうになったやん? でその犯人が今目の前にいて、ただし今少なくとも拘束はされてないから、逃げることが出来るやん?
何なら犯人が振り回した凶器がすぐそばにあるやん?
今するべきことって、恋人に過去の秘密を打ち明けることじゃなくない……???
と呆然とする私を置き去りにして、画面の中では麻美の自分語りが進んでいく。
しかもこれがなかなかヘビーな内容。家庭に事情を抱えているらしいのは前半で既に提示されていたけど、これちょっとヘビー級すぎない? このネタ、「相棒」で1本使ってやってたよ??
必死で彼女を探して、犯罪の被害者になりかけていたところを助けて、犯人に襲われた挙句、そんな告白を聞かされた富田くんに思わず同情してしまった。
で、まあ、この犯人を追っていた泰三と千葉雄大のコンビが間に合ってなんやかんややった挙句犯人は捕まるんですけどね。
途中、千葉くんも「犯人なのか?」と思わせるミスリードがあって、どうも犯人と同じような過去を持つらしいところまでは示されたけれども、
泰三「お前、なんでここが分かった?」
千葉「……勘です」
ええええーーー!! 勘で済ませたーー!?
( ゚Д゚)
いやいやいや、この後実は犯人と兄弟でしたとか、千葉くんは犯人の過去を資料で知ってシンクロしていたとか、そういう解決が提示されるに違いない、まさかぜーんぶ「勘」で済ませるとか、そんな雑なことはしないだろう、と踏んでラストまで見たんだけど、結局そのまま「勘」で押し通しちゃった。
うーん、これ、色々と案はあったものの、時間が間に合わなくて伏線が回収できなかったような気がするんだけど、どうなんだろう。
で、ラストですよ。
麻美の過去を知って、連絡をせずにいた富田くん。麻美のスマホの画像フォルダに保存された自分の画像を見て、麻美の自分への深い愛情を改めて知る。
麻美のすべてを受け入れようと決意する、まあいわゆる「イイ場面」なんですが、うーん。
恋人だけど、いいんですかね、麻美のスマホ勝手に覗いて。。。そんでそれを警察の人(雄大)が勧めちゃうのもいいのかな。。。この辺の法律とかよく分かんないけど。
そしてプラネタリウムで再びのプロポーズ。まあそれはいいですよ。ちょっとクサイけど一応恋愛ものでもあるわけだし。
でも
「新しい戸籍でやり直そう!」
って……
(マジか…( ゚Д゚))
てなったよ。だってその人、「麻美」って人じゃないのに?
過去は全部捨てるってこと?? ていうか出来るの、そんなこと?
そこはさ、正直に警察に言って、元の身分に戻って再出発した方が絶対よかったと思うのは、「相棒」や「科捜研の女」の見過ぎなのかしら。
顔は変えることが出来ても、自分の過去を変えることなんて出来やせんで、人間。
…と、大事なところで見過ごしに出来ないアラが色々と目についてしまった作品でもありました。
あ、でも、スマホがいかに生活必需品になっているかとか、いざ悪意の誰かの手に渡ると、どれだけ生活の内部から食い荒らされてしまうかとか、そういう脆さ・怖さがよく分かるという点では高く評価できる。
なので、この作品を観た後の感想を一言でまとめると、
「スマホ、落とさない、絶対」
ですね。