公園のベンチに座る牧を見つけた春田。
少し躊躇った後、ゆっくりと近づいていく。
気づいた牧、少し驚いた顔を見せるが、何も言わない。
牧の前まで来ると、春田は足を止めて、
「さっきは……ごめん」
きちんと頭を下げて、お詫びの言葉を口にする。
春田というキャラクターは、二話のここまで見てきても、色々だらしなくてルーズだし、ポンコツだけれど、こういうところ、ちゃんとしているなあ、と思う。
後輩くんが奥さんと一緒に天空不動産にやって来たときも
「結婚おめでとうございます!」
と、きちんとした言葉で祝福してあげていた。
走り回って、頭も冷えて、わんだほうでの自分の言葉が暴言だったと、春田にも分かったのだろうと思う。
自分が悪かったと思っても、正面から「ごめん」と言えない人は意外と多い。
ポンコツだけど春田が周りから愛される理由は、ここら辺にもあると思う。
基本的に、人に対して誠実だ。
そしてこの場面、シナリオでは謝罪の台詞がないんですね。
ということは、撮っているときに春田を演じる田中圭の中から出てきた言葉なんだろう。
副音声で座長が
「ここ、謝れてよかった」
と言っていたのは、「アドリブだったけど使ってくれてよかった」という意味だったのかもしれない。
いや、ここ、この「ごめん」があるとないとじゃ、視聴者が受ける春田の印象は全く違ったものになる。
座長、GJ……!!
春田の方を向いて、何か言いかけた牧、
「……てか臭っ」
「うるせえよ!」
ああ、ゴミの山に頭から突っ込んでたからね。異臭を放っていたんだろうね、きっと。
背中をやや丸めて座る牧の後ろ姿がせつない。
ここの場面の牧が何を考えているか、想像するしかないけど、多分後悔していたんじゃないかと思う。
(ノンケに惚れたってろくなことにならないのは分かってたはずなのに)
(しかもよりにもよってあの春田さんを好きになるなんて)
やめとけ、好きになるな、それ以上深入りするな、と牧は何度も自分に言い聞かせたと思うんだよね。春田と暮らしていて。
もしかすると、うっかりルームシェアの話に乗ったこと自体、(やめときゃよかった…)と思ったかもしれない。
でも、春田との生活は牧にとっても楽しくて、気がついたらもうやめられなくなっていたんじゃなかろうか。
いつか舞香さんにぽろっと
「止められない自分がイヤになる…」
とこぼしていた牧くん。止めるどころか、恋心はますます加速していったんだな。
想いを抑えるはずが、こんな形で告白してしまったことも、苦い後悔の種になっただろう。
(あーあ、バカだな、俺…)
と、自嘲の思いで一杯だったのではないかと推察します。
「つか、何してんだよ、こんなとこで」
「……天体観測です」
精一杯強がる牧。でも、「天体観測」と言いながら、牧の顔はうつむいている。
この場面、もう何度も何度も何度も見てるけど、牧くんの心情を思うと、(うわぁーーせつねえーー超複雑だっただろうなあ!!)と髪の毛かきむしりたくなる。
春田が自分を追ってきてくれて嬉しい気持ちと、男として弱みを見せたくない気持ち。
しかし、自分の気持ちをてんで分かってない春田に対する苛立ちもあるわけで。
超絶鈍感ボーイの春田、アッサリと
「見えねえし、なんにも」
とツッコんじゃうんだよなあ……。
いや、そうだよ。確かにその公園、天体観測には不向きだけれども、、そうじゃなくてさあッ……!
だから牧はため息をつくしかない。
「春田さんて……なぁんにも見えてないですよね」
そうなんですよね。牧のその指摘は正しい。
部長の恋心にも気づかなかったし、一緒に住む牧の本当の気持ちにも気づかない。
キスの後、「冗談ですよ」と誤魔化したのを春田が真に受けたのも、ホッとしながらも内心複雑だったはず。
そこら辺は自覚があるのか、ぐっと黙り込む春田。
「じゃあ俺…これから友達に呼ばれてるんで」
その場を立ち去ろうとする牧の二の腕を掴んで、春田が止める。
「…放してください」
「牧、俺、、」
言いかける春田にかぶせるように、
「可能性がないなら、優しくしないでください」
強い口調で告げる牧。
この春田の止め方がね……ここ、掴むのが「二の腕」というところに、私は個人的にぐっと来てしまうんだけど、私だけかな。
牧の腕の細さが分かるのも萌えポイントではあるんだけど(←)、二の腕って、手首や肩よりも心臓に近くて、かなり無防備な部分だ。ここを掴まれるのって、まあまあな距離感ですよ。
そこを掴まれて引き止められるの、牧もきっとドキッとして、でも(俺のこと好きなわけじゃないくせに)と泣きたくなったんじゃないかな……
「ルームシェアなんかするんじゃなかった」
と後悔の言葉を口にする牧。
「聞けよ」
と言う春田の言葉も聞かず、
「出て行きますから!」
とほとんど叫ぶように言う。
「…全部忘れてください」
とこの時の牧は、本気で言っていたのだと思う。
キスしてしまったことも、自分が好きだと言ったことも、春田に想いをぶつけて混乱させてしまったことも、何もかも「なかったこと」にして、リセットしたかった。
そんなことは出来はしないんだけども、牧も牧でいっぱいいっぱいで、これは心からの叫びだったと思う。
ところがそれを、
「それはやだ」
と春田は一蹴する。
春田も春田で本気だ。
さあ、いつものことながら長くなりました。
いったん切って、項を改めます。