ところで、劇場版を見た民の皆さん、
「本筋とは関係ないけどここが気になった!」
という箇所、ありませんでしたか?
私は、表題の通り、「牧くんのグレープフルーツ」でした。
ドラマを見ていたときから気になっていた。
牧は、春田との食卓に必ずフルーツを出す。春田家に引越してきて最初に作った晩ごはんでも、唐揚げの横にグレープフルーツが添えられていたし、シャワーチューの後の気まずい朝でも朝食は手を抜かず、デザートはヨーグルトとぶどう。単色ではなく、レッドとグリーンでちゃんと「映える」彩り。
公式本によると、実家で牧のお母さんが必ずフルーツを出す人だったから、牧くんもそれを受け継いでいる、とのことでした。
私もフルーツが好きで、朝食と夕食の後は大体食べる。一番好きなのがグレープフルーツ、次いで食卓に上がる頻度が高いのが葡萄かな。今、種なしで皮ごと食べられる美味しい葡萄、たくさんありますよね。
自分と同じ人って、敏感にキャッチするじゃないですか。なので、
(あ、牧くんの献立の立て方、私と似てる!)
と、映った時間は短くても、記憶にはくっきりと刻まれていました。
劇場版で描かれる、牧と春田の最初の食事シーン。
酔っぱらって帰ってきて、
「まきまきまきー!」
と抱きつく春田を、牧が「飲んできたんですか…」とかなんとか言いながら押しやる、ちょっと気まずいシーンですよね。
ここで牧くんがちょっと鬱陶しそうなのも、私は分かる。
(まーたそんなになるまで飲んで…)
という牧の心の声が聞こえてきそうな表情だ。
ドラマ版で2人が見せていたような、ほのぼのした日常を期待していた民からは、
「せっかく劇場版で続きが見られたのにほっこりシーンじゃなかった」
「牧が冷たい」
という声もあがっていたようだけど、いやー、それはさ、牧くんだって
「春田さんが帰ってくる!」
と思ったからこそ、ああやってごはん作って待っていたわけで。
そこへ、断りなく外で食べてくる春田はどうなんですかね。だって、連絡なかったから牧くんは晩ごはん作ってたわけでしょ。
(あー、わんだほうで食べてきたな)
ってなるじゃないですか、牧の心情的に。作って待っていた方としてはガッカリよ。牧は言葉に出して責めないけど。
で多分、牧くん本人は、外飲みで泥酔はしないタイプだと思うし、ぐでんぐでんになってる酔っ払いに対して冷ややかな方じゃないかと思う。
酔っぱらって抱きつかれるのも、(酒くさ…)てなって、あんまり好きじゃないんじゃないかと、まあこれも完全に自分と重ねた憶測です。ハイ。
あ、「外飲みで泥酔しないタイプ」ってとこは、私は大きなことは言えませんけどね。
閑話休題。
酔っ払い春田が帰ってきたときの、牧くんの一人ごはん。これにも当然のようにグレープフルーツが添えられていたわけなんですが、このグレープフルーツがですね、「飾り切り」してあるんですよ。
(公式インスタより)
(牧凌太……自分の一人膳のためにフルーツを飾り切りする男…!!)
と、まず最初に刮目したのはそこでした、私。笑
いや、だって、します? 自分のためにフルーツのカット。
このグレープフルーツね、端が少し切り落としてあって、しかもそれだけじゃないの。皮と実を離しやすいように、ちゃんとナイフが入れてあるんですよ…! ホテル並みの気配りなんですよ!
私はしません。グレープフルーツは大好きですが、食べるときは豪快に手で皮を剥きます。みかんと同じ要領で、中央のヘタ部分にぐわしっと親指を立てて、後は指の力でぐいぐいと剥いていきます。みかんよりもグレープフルーツの皮は固くて剥きにくいですが、指で剥きます。なぜか。めんどくさいからです。いちいちナイフやら包丁やらを取り出すよりも、親指の筋力を鍛えた方がめんどくさくないからです!
そんで大概、1個をぺろりと食べちゃいます。1/8に切り分けて、しかも端っこを切り落として、食べやすく皮と実の間にナイフを入れて……なぞというお上品な真似、今まで生きてきて自分のためにしたことは一度もないと自信を持って言えます。
恐らく今後も一生することはないでしょう。
でも、考えてみて気づいた。
(あ、そうか、でも牧くんは春田と2人で食べるつもりだったんだよな)
と。
だからやっぱり、これは春田への気配りなんですね。
さすが、ちょっと怒ってた朝でもちゃーんと春田の分の朝食を用意した上、どん!と弁当箱を置いて
「これ、作り過ぎちゃったんで、よかったら」
とぶっきらぼうに言い放った男、牧凌太。
もー、キミ、どんだけ春田のこと好きなんだよ……!!
と、こういう風に牧目線で考えてみると、あの気まずい晩も、
・牧は春田の分もご飯を作って帰りを待っていた
・そこへわんだほうで気持ちよく酔っ払った春田帰宅
・「本社とかオレ聞いてねえし」と揉めそうなネタをいきなり投入
と、こうなるわけですよ。
しかもこれね、牧ごはんとしてはシンプルですよね。牧も仕事環境が変わったばかりで忙しく、疲れていたところ、でも頑張って作ったんだな。買い物に行く時間もなかったのかも。オニオンスープは玉ねぎがあれば出来る美味しいメニューだし、ラタトゥイユも野菜を切って鍋にぶちこめば出来る、簡単で栄養豊富な一品だ。(たんぱく質もつけなきゃ)と、目玉焼きを添えたのかもね。
これ作ってたのに、食べて帰ってこられるとなあ…がくっと来ちゃいますね。私なら。
うーむ、こうしてみると、
「これ、食べないですね!」
と春田の分のごはんをさっさと下げようとした牧の気持ちも分かる。大いに分かる。
あそこで、
「うん、いらねえわ。わんだほうで食べてきたし」
とか答えてたら、本格的な冬が春田家に到来したかもしれなかったところ、
「食べる、食べる」
と可愛くしがみついたのが、春田、GJであった。
春田は最初から、
「久しぶりだからわんだほうに寄るけど、晩ごはんはうちに帰って牧が作ったやつ食べる」
と決めてたかもしれないし。だから牧に連絡しなかったのかもしれん。
(そっか、食べるんだ)
と、牧くんも心の中ですこーし気持ちがおさまったに違いない。
劇場版ラストで牧がシンガポールへ行っちゃったので、次春田家で2人が食卓を囲むのはいつのことになるか分かりませんが、まあいずれ牧も帰国して、2人の生活が始まるでしょう。
そのときまでに春田が料理を練習して待っているかもしれないし、帰ってきた牧が春田を特訓するかもしれないし。
もし、春田が牧のために朝食を用意することがあれば、そのとき初めて、これまで牧がしてくれていた気配りに気づくかもしれない。気づかないかもしれないけど。笑
いずれにしても、「春田家の食卓に上がるフルーツ」は、私にとって、「牧から春田への愛情表現」のひとつの象徴と言えます。
そのことも、こうして書いてみて、新たに気づくことが出来ました。
やっぱり、書くのって大事ですね。