修羅場に荒れる黒澤家をよそに、ノンキな飲み会が続いている居酒屋「わんだほう」。
「ハーイ、お待たせしました~」
料理を運んでくるちずと、ビールを持ってくる春田。春田は空いた瓶を回収して、なんだか甲斐甲斐しく働いている。
そこへ追い打ちをかけるちず。
「あーホラ春田、空いたグラス早く…」
「人使い荒くねぇか。オレ客だぞ!」
春田、当然文句タラタラだけど、まあこれはじゃれ合いで、真剣なものじゃないというのは見ていて分かる。
幼馴染の店でよく飲む春田、完全に「身内」な感じですよね。ちずとも気心が知れているのがよく伝わる。
「2人は、おつきあいしてんの?」
マイマイのにやー…という表情がイイですね。まあね、年下の異性の幼馴染というだけでも甘酸っぱいのに、これだけ息の合った様子を見れば、マイマイでなくともそう思うだろう。若い2人のプライベートな事情に躊躇なくツッコんで聞くのが、この年ごろのおばちゃんならではのなせるワザではあるけれども。
「いやいやいや……コイツ、幼馴染だから」
と即座に否定する春田。
「えー!?」
と聞いたマイマイは声をあげ、
「からの~?」
とマロはその先を促す。
それに対しての、春田の否定が割と強め。
「ないない。オレもっとロリで、巨乳ちゃんが好きだから!」
手ぶりがやらしーわ。おっさんみがすげぇわ、春田。
ドラマのタイトルは確かに「おっさんずラブ」だけど、そのおっさんみはあかーん。
最初に書いた、第三話が私にとって「はるたんクズ回」でもあるという理由は、実にこの辺にあって、座長・田中圭が演じる「春田創一」という男、ポンコツでお人好しというだけでなく、ちょいちょいこうしてクズみを見せる。
いかに幼馴染と言え、異性に向かって、「タイプじゃない」と恋愛の対象外であることと、その理由が「ロリ的な外見と大きな胸を持っていない」と外見の特徴にあることを告げるって、アウト案件じゃないでしょうか。
まあでもここが微妙なところで、こういうセクハラギリギリの発言て、今までは許容されてきていたんですよね。ていうか多分、以前はセクハラでもなんでもなかったんですよね。男性が女性に向かって身体的なポイントを指摘するのって。
いやでもさ、逆に考えると、アウトじゃないですか?
女性が男性に向かって
「背が低くて巨根でもない」
ことを理由に「つきあえない」と言うのって、アリですかね。
ナシよりのナシじゃね?
ただ、「ハラスメント」問題の微妙さは、何がハラスメントになるかは関係性による、というところであって、今この段階では、幼馴染同士のじゃれあい、でおさまっている。
言われた方のちずは(あーハイハイ)と笑って流していて、意に介した様子もない。春田もちずだから安心して言ってるんでしょうね。
なので、春田がこう言ったからと言って、ただちに
「セクハラだ! レッドカード! ピピー!!」
とホイッスルを鳴らすつもりは毛頭ないんだけど、春田というキャラは、(もしかしてセクハラかも…)といったん立ち止まって考える思慮深さは持ち合わせがなくて、ノリと勢いで言っちゃうタイプだということは印象づけられるわけだ。
見ているお茶の間でも、もしかすると(あれ、今の言い方なんかやだ…)と引っかかる人もいるかもしれない。役者の言い方ひとつで。
それを、愛嬌をまぶして(春田なら言いそうなセリフ…)程度のアクに収めたのは、座長の演技の技量だと思う。
あともうひとつ、ここで春田はまだ牧がいないことに気づいていないんだけど、ということはだ、牧がいたとしてもこの台詞を言っていたということですよね。多分、なんの他意もなく。
たまたま牧はいなかったけど、聞いていたら、ざっくり傷つくことは間違いない。
(真剣な告白をしたばかりの俺の前で、そんなこと言わなくてもいいじゃないか…)
てなって、
「春田さん……俺、やっぱり出て行きます」
てなって、「おっさんずラブ」が第三話で終わっていた……とそんなことにはもちろんならないだろうけれども(笑)、徳尾さんがどこまで計算していたかは知らないが、春田の悪気ないこの台詞、牧くんが聞いてなくてよかったです。
「そんなこと言って、こういうのは結局幼馴染とくっつくんだから」
断定するマイマイが可笑しいですね。
確かに、
「単なる幼馴染でしかなかったのに、いつの間にか……」
みたいなやつ、いっぱい見たことあるよ。少女マンガで。割と王道ですわな。
しかし春田同様、ちずも
「絶対、ないです」
キッパリと否定する。
この先どうなるかを知って見ていても、このときはちずフラグ立ってるよな…と私は思うのですが、皆さんはどうでしょうか。
マイマイの言うように、「幼馴染」って結構強いカードだと思うので、牧が現れなければ、春田はいずれちずと結婚していたかもしれんな、と思う。
この話はまたいずれ。
で、この後、マロがちずに連絡先交換を申し出る場面。
春田と牧の物語としてはほんの脇道なんだけど、何気にこの場面、私は好きです。
「じゃあマジでオレ、狙っていいですか」
「…えっ?」
「スミマセン。顔がドストライクです!」
ストレートにちずに告げて、両手を差し出すマロ。
この言い方、見たときから(うわー、可愛い子いる! マジで好み)と思ってたんでしょうね。
だから、「ただの幼馴染」と聞いた後も、何度も
「からの~?」
と探りを入れて、春田とちずが恋愛関係じゃないことを確認してたんだ。
空気を読まない発言で周りをピリッとさせたり、牧をイライラさせたりしていたマロだけど、こういうところはちゃんとしてるんだね、とマロを見直す気持ちになった。
あと、自分の気持ちを表に出すマロの性格は、恋愛においては強みであることもこの場面で分かる。こんなに素直に「好きです」と言われて、嬉しくない女子はいないもんね。
「ありがとう~」
と手を伸べて握手するちずも嬉しそう。
面白いなーと思って見ていたドラマでも、脇キャラの造形がテキトーで、あまりにもお約束の台詞を言うので醒めてしまって、視聴をやめてしまうこともある。
「おっさんずラブ」にはそれがない。どのキャラにもユニークな個性があり、マロならマロが、ちずならちずが言いそうな台詞しか言わない。
だから、本当に天空不動産も「わんだほう」もこの世に存在していて、登場人物みんな実在するようなリアリティを持って話の筋を追うことが出来た。
第三話のこの辺りから、さらに物語がどんどん動いていって、ますます目が離せなくなっていく。
続きます。