こういうタイトルのドラマが始まることは、深夜の宣伝番組で知っていた。
「おじさんはカワイイものがお好き」というタイトルでもう視聴決定!だったけど、主演がまっしーとあればこれはもう、「見ない」という選択肢はない。
見ました。
面白かったです!
この、「カワイイものが大好きでたまらん」という性癖をもつ中年男性に、眞島秀和という役者をキャスティングした人がエライと思う。
眞島さんて、かなり強面じゃないですか。シュッとしてるけど、顔面の圧が強いというか、いわゆる「面魂」があるお顔だと思うんですよ。
「おっさんずラブ」で潔癖症の生真面目メガネ上司を演じていたけど、多分「仁義なき戦い」の面々と並んでも違和感がない。大河ドラマで戦国武将をやってもその時代の人であるかのごとくに馴染む。戦時中とか、飛鳥時代に飛んで大化の改新周辺のドラマとか、どれでもすんなりと溶け込める容貌。何だろうな、原日本人のDNAを感じさせるお顔立ちというのか。ないとは思うけど「業界騒然! ドラマ史上初の縄文ドラマ」なんてものが出来たとしても、まっしーならいける。全く違和感ない。
その眞島さん、ぴしっとスーツに身を包み、部下からの信望も厚く、ダンディなイケオジという今回の設定、まったくもってナイスキャスティング!なのですが、その風貌で黄色くてまあるいパグ太郎のぬいぐるみにぎゅーっと抱きつくわ、パグ太郎の着ぐるみを通販で買っちゃうわ、ベッドにももちろんパグ太郎がいて、毎日一緒に寝てるんでしょうね。「眞島秀和」と「パグ太郎」の、見た目の距離感が凄すぎて、刮目してしまう。
カレーと味噌汁というか、おにぎりにタラのムニエルというか、絶妙に掛け違っている感ね。
で、そこの「似合わなさ」がこのドラマの肝なので、まっしーが出ただけでもう「勝ち」な感じはあるよね。
しかしこの、眞島さん演じる小路(おじ)さんのパグ太郎推し、念が入っている。玄関にはパグ太郎の額入りイラスト、マグカップは当然パグ太郎柄だし、浴室の石鹸ケースもパグ太郎、リビングにも寝室にもパグ太郎がいすぎて、甥っ子の真純が突然やってくることになって慌てて隠すことになった小路さん、
(意外といる。意外といるぞパグ太郎…!)
と大汗かきながらパグ太郎グッズの回収をすることになる。
(ごめんよパグ太郎…!)と心の中で謝りながらクローゼットにぎゅっと押し込めて、真純の来訪を受け入れるものの、玄関でひとつ見落としていたパグ太郎の本に気づいて
「真純、風呂に入りなさい」
と唐突に命令する。
「え、お風呂は夜に入るよ?」
「日本古来の風習だ。長旅の疲れは湯で癒す」
「え、そうなの?」
これで素直に納得してお風呂へと向かう真純くん、アメリカ育ちなんですね。
なんとか誤魔化して一息つくも、狭い場所に押し込めたパグ太郎が可哀そうで、戸棚からはみ出したのを救助して
「痛い思いさせてごめんよ」
からの、おでこコツンだもんな。
もうこの辺になってくると、「カワイイパグ太郎を愛でる小路さんがカワイイ」状態になって、小路さんがパグ太郎と絡むたびに(ほわーカワエエ……)とほんわかしてしまう。
にしても、見ていて思ったのは、
(カワイイものを愛でるカワイイ趣味があって羨ましい!)
ということだ。
いいなー。私もカワイイぬいぐるみをぎゅーっと抱っこしてモフモフするような感性が欲しかった。
いや、カワイイものは好きなんですよ。それなりに。ムーミンシリーズは、今みたいな日本オリジナルキャラが出て世間に広く浸透する前から好きだったし、リラックマも好き。
で、たまにぬいぐるみ的なやつも買う(ぎゅーできるほど大きくはない)んだけど、家に置いても、割と存在を忘れちゃうというか、見向きもしないんですよね。。
人をダメにするクッションの、枕サイズのやつをひとつ持っているけど、これも抱いて楽しむということは全然せず、脚に挟んで腹筋の道具にしてたりするから、うーむ、こういう点の女子力は私にはまったくないみたいだ。
ムーミンもリラックマも、食器としてはグッズを持ってるけど、実用じゃない単なる鑑賞用のグッズってほとんど持ってない。
唯一、リラックマのお腹にキイロイトリがついてて、びーっと引っ張るとぶぶぶぶ……と震えながら紐が縮んでいってくっつく、という、THE☆無駄みたいなグッズがあるんだけど、これは確か、仕事でめちゃくちゃ疲れてストレスMAXのときに、職場の近くでたまたまリラックマフェアやってて、魔が差して買ったんだったと思う。
今でも持ってるけど、引っ張って遊ぶことはしてません。笑
小路さん、好きなものは好きって言えばいいのに、と思うんだけど、まあそうはいかないんでしょうね。
女性も色んなものに抑圧されてるけど、男性だって、目に見えないルールで押さえつけられているには違いない。
昔は今よりもっと酷くて、男の子が赤とかピンクのものを身につけようものなら
「やーい、オンナオトコー」
と囃し立てられたものだし、少女漫画なんかもちろん「オトコがそんなもの見るか!」と歯牙にもかけない態度を取らないといけないような風潮もあったし、コーヒーを飲むときに小指を立てる…みたいな極端な動作でなくても、少しでも優し気なふるまいをすれば「あの人、おネエっぽいよね」と陰口を叩かれた。
今は、そういうステレオタイプなラベリングはダサいという価値観も広まりつつあるし、ジェンダー観も変化していっているけれども、カワイイもの=女コドモの愛でるもの、という暗黙の了解はまだあって、多分私たちが自覚している以上に、我々を縛っているのだと思う。
同志がいたら楽しいのにな…とは思いつつも、昔失敗したときのように、カワイイもの好きを誰かに見つかって「え、そういうの好きなんだ?」とちょっと引いた目で見られたり、笑われたりするかもしれないストレスのことを考えると、波風を立てず、ただただ心静かにパグ太郎を愛でることが出来ればそれでいい、とする小路さんのスタンス、種類は違うけど別の方向に振り切ったヲタである私にはよーく分かります。
推せるものがある生活は楽しい。推しのことを考えるだけで世界はバラ色、唇には自然と笑みが浮かび、幸せホルモンがどばーっと分泌されて、憂き世の憂さを忘れさせてくれる。
何が好きかは人それぞれ、自分だって人に言えないことのひとつやふたつや三つや四つあるわけだから、人さまの趣味にとやかく言ってはいけない。
……が、とかく他人の言動に興味を持って、ああだこうだと自説をぶちかますのが好きな人がごまんといるから、めんどくさくてややこしい。
で、この「めんどくささ」「ややこしさ」とどう向き合うか、隠し通すのか、受け流すのか、がっぷり四つで闘うか。
単なる「好き」でおさまらない「推し」が出来ると、その辺の覚悟も必要になってきますわね。
イケオジ小路さんの選択や如何に。
そう言えば、小路さんを勝手にライバル視してシャー!と威嚇する鳴戸さんといい、甥くんといい、どこがどうというのではないんだけど、そこはかとなくBL臭がするな…と思っていたら、原作者は普段BLものを書いている作家さんでした。
やっぱりねー。
女性キャラの完全なるモブ感。いいんだけど、富田望生ちゃんの個性をもうちょっと出してあげて欲しいな。