pixivでフォローしてマンガは読んでいたので、ドラマ化と知ったときには驚いた。
(え、pixivで?)というのと、(この題材を?)というのと、二重の驚き。
で、この秋放送ということも知っていた。
ところがこないだ、ある方とメッセージのやり取りをしているときに
「あ、今『チェリまほ』見てるので…w」
と言われて
(? チェリまほ? ………ハッ、アレか!!)
見逃したぁぁぁ……!!!
ということで、数日待って、見逃し無料配信で無事視聴できました。
Tverありがとうッ…!!!
さて、感想。
面白かったです!
知らない方のために若干の説明を加えると、この物語は
『30歳まで童貞を守ってきた地味男子・安達が、30歳の誕生日を迎えると同時に、本当に「身体に触れると他人の心の声が聞こえてしまう」という魔法が使えるようになってしまった!
会社のスーパーイケメン・黒澤が、なんと自分を好きだということが判明してしまい…』
というお話。
そう、まごう事なきBLです。
うーん、言っちゃなんだけどこのお話自体が地味と言えば地味で、取り立てて変わったところはないんですよね。
なにしろBL界では、
・ある日突然アラブのどこかの王子様が留学してきて見染められる
なんてのはごくフツーで、
・自分の局部が他人のソレと入れ替わった上に会話する
とか、
・興奮すると獣に変身してしまう(犬とか猫とか熊とか)
とか、
・忍びの子孫の若様(ゴリムチマッチョ)がおつきの者(ハイパーマッチョ)と同棲しながらめちゃくちゃ愛されまくる日々
とか、その程度のファンタジーはごろごろしているからだ。
「手を触れたら相手の考えが分かってしまう」なんて、BL界ではそれほどインパクトのある設定ではない。
というかまあ、割とよくあるタイプの世界観と言ってしまってもいいだろう。
原作はえらくヒットしたらしいが、腐界に長く巣食っている私からすると、
(確かに面白く読めるけどドラマ化するほどかな…?)
という感じだった。
ところがこのドラマ、予想外によく出来ていた。
まず、主役の安達を演じる赤楚衛二という俳優のビジュアルがいい。「真面目が取り柄の地味男子、優しくて誠実で控え目で目立たない、仕事もきっちりやるけど要領が悪く若干どんくさい」という安達のキャラがまんま、再現されている。
BL作品の映像化にあたって最も重要なのが「主役2人のビジュアル」だ。と、これはもちろん私の独断と偏見だけれども、そう的外れではないと思う。
リアルに「男」を感じさせる外見ではいけない。「男」の記号である、ヒゲとか胸毛とか脛毛等の体毛はない方が望ましいし、筋肉もほどほどでなければならない。ヒョロガリでも困るが、スーツを着ていてもむちっと盛り上がった胸板を想起させるほどの筋肉ではいかん。
かと言って、例えば「受け」に当たる方が、「男のリアル」からあまりに遠くてもいけない。今や男性も美容に励む風潮が許容されつつあって、ツヤ肌にピンクのリップできゅるんと可愛いビジュアルを持つ男性アイドルなんかもいるけど、BLドラマの受けとしてはふさわしくない。それはそれでリアリティがなく、「わざとらしい」「あざとい」と受け取られかねないからだ。
この微妙なバランスを、メインの2人が難なくクリアしている。
前述の赤楚衛二くん、「地味だけどよく見ると可愛い」という、マンガにありがちな外見要素をよく満たしている。普通っぽいけど仔犬顔。垢抜けてはないけど、モッサリまでいかない適度な清潔感。素晴らしい。
相手役が町田啓太と分かって、ほほう、このクラスの俳優さんを配するとは、テキは本気だな……と思ったら、「きのう何食べた?」を制作したテレ東だった。さっすがー、テレ東さん、分かってらっしゃる。
いやーもうキラキラしてますなあ! 町田啓太くん。非の打ちどころがない爽やかイケメンなんだけど、ギリ「会社にいそう」な普通感もある。
そんで、これがまた「黒沢」なんだよね。どうでもいいけどさ、ドラマに出てくる「黒沢」姓、多くないか? 「珍しいとまでは言えないが新鮮味のあるイケメンの名前」として使い勝手がいいんだろうか。
まあそれはさておき、360℃どこから見ても100%スーパーイケメンである黒沢を、地味で平凡という自覚がある安達が、若干のやっかみや嫉妬も覚えつつ、自分とは無縁の存在として遠くに感じているのも、特に説明されずとも伝わってくる。
内容もとてもよい。私はストーリーを知っているけど、新鮮に楽しめた。脚本と演出の妙。勘どころを外さない演者。
安達くんは、真面目に生きてるんだけど、派手なこと、目新しいこと、いつもと違うことを極力避ける傾向があって、バイタリティを感じさせる若者ではない。自分の小さな世界から出るのを嫌うタイプ。臆病でもある。
だから、職場の華である黒沢から好意を向けられてると知って、完全にキャパオーバーに陥る。
(こんな奴がオレなんか好きになるはずがない)
(こいつ、頭おかしいんじゃね?)
とまで思うんだな。
原作コミックでも、最初は終始黒沢に対して腰が引けがちで、相手がどう出てくるのかはかりかねて、ビクビクしている場面が多かった。
一方で黒沢くんの方は、もう安達くんに対して恋に落ちているから、表面こそクールに取り繕っているけど、内心では好きが溢れて仕方ない状態。
エレベーターが満員で、はからずもぎゅうっと身体が密着してしまったとたん、
(うわ、朝から会えるなんてラッキー♡)
(今日も寝癖ついてる……可愛い…)
(ヤバ、めっちゃ近い! 心臓の音聴こえてないかな……)
テンション爆上がりの黒沢くんの心の声が安達くんに悟られてしまう場面、いやー、笑った!
この場面は映像の方が断然強いね!
エレベーターを降りた後、
「え……………オレ!?」
てなって、呆然となる安達くんが、聞こえる声が幻聴でも妄想でもなく現実なのだと悟るまでに、しばらくかかるんだけど、物語の中で起こる事件と、登場人物の心情とのリンクが、無理なく進んでいって、ドラマに引き込まれる過程がとても自然だ。
深夜、2人で残業していて、ふと触れた瞬間、隣のイケメンが自分に爆萌えしているのが分かってしまう場面も爆笑でした。
(うなじのホクロエロすぎ)
って言われてもなあ。笑
でね、この、「イケメン黒沢が地味メン安達に惹かれる理由」が、なんの説明もなくとも視聴者に分かるんだな。
確かに可愛いんですよ。彼は真面目に、一生懸命やってるんだけど、打算とか計算がない分要領が悪くて、割を食う羽目に陥りやすい。
(あーまたあいつ押しつけられた仕事やってる…)
とか、見ているうちに手を差し伸べたくなってしまうタイプ。
そう、この手のドラマで時々、主役のビジュアルを間違えたがために
「なんでコイツが好かれるんだ?」
というそもそもの基本がなってないのがあるけど、そうなると見ている方は辛い。
その点、ビジュアルとお芝居で第一話の中盤までに視聴者を惹きつけた本作、スタートとしては大成功だと思います。
遅くまで作業して、2人して会社のビルを出た後、終電を逃したことに気づく。
この、「指摘されるまで終電を逃したことに気づかない」あたり、(だからカワイイんだっつーの)と、もう視点が完全に黒沢目線になっていた。
寒さにぶるっと身を震わせたのを見逃さず、マフラーを貸してくれるイケメン黒沢。
マフラーを巻く手から、普段の自分を見て、仕事ぶりも人間性も評価してくれ、その上で好意を持っていることが分かる。
ここ、胸キュンポイントでしたね…!
(頭おかしいなんて言ってゴメン……)
(あ、ヤバい、泣きそう…)
ちゃんと見ていてくれたと分かって、ぐっときちゃう安達くんの気持ち、超分かる。これはうるっとくるわ。うん。
で、まずは初回だし、この辺でバイバイして、一人で頭の中を整理したかっただろうけれども、そうは問屋が卸さない。
「……泊まっていけば?」
「え?」
「ウチ、泊まっていけよ。その方がオレも安心だし」
(えええーー!!)
と、息つく間もなく次のイベントが発生したところで、第一話終了!
主演の赤楚くん、私は初めて見るお顔だったので、即ググった。
おっとー、座長と同事務所! なるほどー、だから鈴之助くんが出てるのね。
これを機に覚えます。
次回も楽しみ!
「おっさんずラブ」が好きな人なら、大概楽しめるんじゃないかと思うので、ちょっと興味あるけど見逃したという方、おススメですよ!
※10/25追記
公式さんがYouTubeに第一話をアップしてくれていました。期間限定で見られるようです。