夕食後、コーヒーを飲んで、筋トレを始めよう、と服を着替えた。
(筋トレしなきゃな)と思っても、日によっては億劫で、なかなかスイッチが入らない。そういうときは、さっさと着替えちゃった方が早い。
スポーツブラをつけて、トレーニング用のスタイルになると、そのどう見てもやる気満々な服装でダラダラしてるのがバカみたいに感じてくるから、
(……やるか)
てなって、自分に強制力が働く。
で、16分間HIITで汗を流すところから始めたわけですね。
画面に集中していればいいものを、ふと、部屋の隅に視線が向いた。
(………?)
なんだろうあの茶色いカタマリは。天井に近い窓の上の方に、何かがある。カタマリには6本足があるように見える。
(もしやG……)
じーーっと見てみると、カメムシだった。
(なんだ、カメムシか)
緊急性はないな、と判断して、そのまま筋トレを続けました。
1時間みっちり運動する間にも、ヤツはずっとそこにいた。
窓のサッシの上んとこにへばりついて、微動だにしない。なんだってあんなところにいるんだろう……と、腹筋やりながら考える。
(あ、そうか。あったかいからだな)
夜はもう、結構冷え込むもんね。かと言って人んちでぬくぬくと居座られても困るのだ。
そのままずっとそこにいるか、そっと出て行ってくれるならいいんだけど、料理中にキッチンの壁にのこのこ現れるとか、カメガスを噴射するとかされると、大いに迷惑だ。
ゴキジェットでぷしゅっと一噴きすればイチコロだろうけど、この寒空の中頑張って生きているのに、それは可哀そうだし。
椅子に上って、サッシの上の窓を開けると、よじよじと動き始めた。割りばしでピッ!と飛ばすと、簡単に部屋の外に飛んでいった。
テラスの床に落ちたカメムシは、ビックリしたように活発に動き始めている。
「いやいや、ここにいられても困るんだわ」
ペットボトルの口を向けて、「さあお入り」と割りばしでお尻を押す。
「い、いやだ。そんなところに入りたくない」
とばかり、前脚を突っ張ってカメが頑張る。
「いーや、イヤでも入っていただきます」
ぐいぐい押して、入っていただきました。
部屋に出る昆虫対策にはペットボトルですよ(※ただしGを除く)。
一度入っちゃうと、つるつるした内部を登れないから、底に引っ繰り返ってジタバタすることになる。
そのまま部屋の外へ運んで、口を下にして振れば、虫が出てくるというわけだ。
闖入者は無事、お外へ帰っていきました。
やれやれ。
ちょっと前、暴風雨の夜に、うちの外にへばりついていたカメムシがいたんだよね。
嵐がすごかったから、風をよけてそこにいるのは分かったんだけど、
(この後うちの中に入って来られたらいやだな)
と思ったんですね。新聞受けのところから簡単に虫が浸入出来るから。うちのマンション。
で、申し訳ないけども強制退去願った、ということがあった。
なんか、色といい大きさといい、あのときのあいつに似ていた。
まさか、カメムシにお礼参りをするような知性はないだろうけれども。
カメムシもねえ。臭くさえなきゃ、別にちょっとくらい宿を貸してあげてもいいんだけど、あのニオイはホント、閉口するからな。
大量発生したカメムシが人家に侵入して越冬するという話、よく聞くし、実際うちの実家でもあった(箪笥の中にいた)から、これから注意せねばならぬ。
ちょっと迷惑だけど、虫だって生きてるから、しょうがないですね。