おっさんずラブが好き!

ドラマ「おっさんずラブ」の細かすぎるレビューブログ。OLの深い沼にハマって当分正気に戻れません。ほぼおっさんずラブの話題しかないかもしれない。ネタはバレまくりなのでご注意を。

30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい 第10話感想①成長する安達と本気の黒沢

 もういいだろう、使ってみよう、と「『チェリまほ』第10話」とタイトルに書き込んでみたけど、ダメだった。

 なんだろなー、「チェリまほ」という略称がイヤというより、「私」に合わない。

 通りがいいし、皆これで馴染んでるし、別にいいやん……と自分に言い聞かせてみるも、しっくり来なさ加減を減らせない。

 使うと、なんか白いフリルとレースのついたワンピースを着せられてでもいるような違和感がある(死んでも着ないと思う服装No.1)。

 というわけで、今まで通り略さない方向で行きます。

 いいけど毎度この「チェリまほ」という略称についてのぐだぐだから始まるの…?とウンザリしている方もいるかもしれません。スミマセン。

 なんか、落語の枕みたいになってて、書こうとするとどうしてもここから出てくる(>_<)




 このドラマ、何度見返しても飽きない。延々繰り返して見ていられる。

 今回、(感想を書こう!)と思ったのと、私が元気で、気力も体力もあるのと、おまけに普段なかなか捻出出来ない時間が確保できるタイミングが重なった。

 これはもう、「好きなものを遠慮なしに語ると超絶長くなる」という病が発症するにきまっているので、もう最初からタイトルに番号つけときます。

 みっちりねっとりじっくりレビューになると思うので、それでOK!という方のみ、続きをどうぞ。

 あ、新しくカテゴリ作りました。全部読んでみたいという奇特な方はそちらから。




 自分に自信がなく、人生を消極的に生きていた地味メン・安達。

 魔法の力を手に入れ、同期の黒沢の思いを知ることになり、戸惑うばかりだったが、完璧なイケメンとだけ見えていた彼の心の内と、自分に対する想いに触れるうち、徐々に変わっていく。

 そう、このお話、BLなんだけど、BL的展開に無理がないのがいい。

 安達が黒沢の思いに気づくのは、「触れると人の心が読めてしまう」という魔法の力によるものだし、そのせいで黒沢に惹かれていくのも分かる。

 そして、この出会いによって安達が成長していく過程が見られるのも、支持されるポイントだと思う。

 成長神話を嫌う人もいるけど、「出会いが人を成長させていく」というのが全てのストーリーの基盤じゃないですかね。

 人として成長し、黒沢とも、周りの人たちとの絆も深めていく安達を、見ているうちに視聴者も好きになる。

 第10話でもさらに安達は変化を見せ、物語も動いていく。





 柘植と安達が電話で話している冒頭。

 湊との恋バナを安達にのろける柘植。

「毎日、おはようだのおやすみだの言う相手がいるというのは、実に、いいことだな…」

 一人暮らしの小説家だった柘植にとって、まずはそこから新鮮なんだろね。それはよく分かるし、そういうのって日々の潤いに大事だと思う。

「よかったな、柘植」

 微笑んで言う安達。

「ま、部屋に物が増えて少し窮屈になったというのは、間違いないがな」

 ベッドに並んだ白い枕が2つ。お揃いのカップに、歯ブラシ2本。

 つきあいたてあるあるですね。もう一緒に住んでいるのかな。

「でも、よかったな」

「今度は、自転車を買いに行こうと思ってな……実は湊がオレと一緒に出来る趣味が欲しいと言ってな」

 柘植先生、デレデレですね。ツンはいっこもないみたい。そして受けだったのか攻めだったのか知らんが、割と「好きな人の色に染まる」タイプっぽい。

「自転車なんて柄じゃないんだが、湊がどうしてもオレと一緒にやりたいって…カーワイイこと言うよなぁ!」

 湊くん、見た目は完全に今ドキダンス青年。もしかすると柘植のもっさり具合を(オレがなんとかしなきゃ…)と思っているのかも。なんとなく、

「オレ、彼氏がダサいとか耐えられないんで」

と言っていた牧とこのへん、同カテゴリな気がする。

 で、春田の服を一緒に買いに出かけてコーディネートしちゃう牧と、「一緒に自転車で出かけよう」と誘って、柘植から自主的に自転車周辺のアウターなんかを揃えるよう誘導する湊。

 2人の違いを想像してみるのも楽しい。

「うんうん。よかったよかった」

と、段々流し気味になってきていた安達の返事、柘植にバレちゃった。

「他にないか」

「え?」

「さっきから『よかった』しか言ってないぞ」

「あ、ごめん。今、ちょっとコンペのこと考えてて」

「コンペ?」

 そう、前話のラストで、安達は社内コンペに応募することを決意したのだった。それに向けて案を練っていたんですね。

「うん。ちょっと、やってみようって思って」

「そうか。新たな挑戦は人を大きくする。頑張れよ、安達」

 若干上からではあるけど、柘植のエールは温かい。

 優れたドラマは、メインキャラだけでなく、脇キャラに到るまできっちり描かれていて、視聴者を惹き込む。このドラマも、安達と黒沢だけじゃなく、柘植との友情が各エピソードで示されているのがいいと思う。

 第9話で、湊がゲイだから柘植が避けているのだと誤解した六角が柘植に掴みかかるシーン、

「柘植はそんなやつじゃない!」

と即止めに入っていた安達。黒沢も嫉妬を覚えるくらい、安達と柘植はお互いに理解しあっていて、絆は深いようだ。

 安達はコンペの準備で忙しいけど、そんなことは言わず、柘植の惚気話につきあってやる。柘植は柘植で、安達が生返事でも、事情を聞いて自分のことはいったん置いておき、「頑張れ」と心からの応援を送る。

 いい友達だ。



 

「忙しいみたいだから、そろそろ本題に入るな」

「本題じゃなかったの?」

 キャットタワーで一人遊びする猫のうどんと戯れたり、書棚に向かったりしていた柘植、ソファに座り直し、改まった口調で告げる。

「安達。俺は、『脱・魔法使い』したぞ」

「マジで!?」

 驚いた安達、思わず立ちあがる。

「ああ。あの都市伝説に、間違いはなかった」

「あー……やっぱりそうなんだ…」

 

 そうなんだ。

 

「あの都市伝説」の内容、「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」というタイトルまんまで、その他のオプションは示されていないが、

「お前もいずれ脱・魔法使いするから安心しろ」

と柘植が安達に断言しているところを見ると、

童貞=性的未経験者

という解釈でこの世界では語られているようですね。

 ちゅーことは、初体験を済ませたら、魔法使いは卒業、とな。

 へえー。



「脱・魔法使い」=「脱・童貞」なので、この2人にとってはそれがもっともあらまほしい形なわけだね。

 魔法の力を失ったことを、柘植が惜しむ様子はない。

「まあ、先輩のオレから言わせてもらうなら……」

 とこの辺から若干調子に乗り始める柘植。なんだよ、湊に「俺も好きですよ」って言われて引っ繰り返ってたクセに。先輩風吹かせるにはまだ早いぞ!

「な、なに」

「喪失なんて言葉を使われたりするが、何も失われない。大丈夫。そんなに恐れることはな」

ブツッ

 上からの講釈に、これ以上つきあう必要なしと見た安達、躊躇なく電話を切る。



(そんなこと言われてもな…)

 

 天井の方を仰いで、モヤモヤが晴れない様子の安達の顔。



 しかし柘植の言葉、小説家だけあって、さすがに鋭いというか、含蓄がある。

 そうね、確かに、「童貞」「処女」って、「喪失する」とか「失う」ものと捉えられていますよね。

 この辺の社会の感覚というか、時代の変遷というか、そんなものについて考えてみるのも面白いと思う。

 ここではいったん置いておく。





 喫茶店で向かい合う安達と黒沢。

 コンペの参加申込書を出したことを黒沢に報告する安達。

「今日から本気で頑張んないと」

「じゃあ、しばらくデートはお預けだな」

 さらっとそんなことを言う黒沢。「安達の邪魔はしたくない」ですって。

「あ、え、でも…」

 

「言ったろ。俺、楽しみは後にとっておきたいタイプなんだ」

 

 言ってたね。

 

 安達の告白の後、

「これからどうする?」

と聞かれて、

「それって、安達の家に行っていいってこと?」

とマジで迫ったかと思いきや、焦る安達を見て

「ゴメン! 意地悪しすぎた。今日は帰るよ」

と鉄の自制心を見せたし、バスの中のポエマー黒沢のシーンでも、デートのはずが柘植のお供になったことを謝る安達に、

「楽しみは後にとっておこうよ。俺たち、これからずっと一緒なんだから」

と、余裕のメッセージを送っていた。

 黒沢は安達と違って心を読める魔法使いではないけれど、王様ゲームでキスする羽目になったとき、安達が怯えていたことも気づいていたし、同性の自分が好意を寄せてもきっと実らないだろうと諦めているときには、

(好きになってごめん)

と心の中で謝っていた優しい男だ。

 おつきあいをスタートさせても、恋愛ビギナーの安達を気遣って、距離を詰めるスピードを慎重にはかりながら近づいているように見える。

 7話で両想いになったのに、10話になってもまだ安達くんが魔法使いのままというのは、つまりそういうことなわけで、

(うわー……大事にされてんなあ安達……)

と、ちょっと感動的ですらある。



 がしかし、じゃあ黒沢が淡泊なタイプだとか、このままプラトニックラブでも全然構わないかと言えば、そんなことはないのだった。

 デートはお預けと言われて、

「じゃあ、オレも楽しみに頑張る」

 可愛く返した安達を、黒沢は微笑んで見つめる。

「…なんだよ。……なんだよ?」

 安達が戸惑っていると、顔を近づけてきて、

「お預けされた分、ご褒美期待しちゃおうかな…(笑顔°˖✧)」

「ご褒美…?」

 この場合の「ご褒美」が何を指しているかは、童貞歴30年の陰キャである安達にも分かってしまうのだった。




 まあそりゃそうだよね、「うなじのホクロがエロすぎ」とか爆萌えしている心の声も聞かれちゃってるし、こないだだって、ホテルの部屋で安達を抱えてベッドへ……みたいな妄想も読まれちゃってるしね!



(って、やっぱそういうことだよな…)

(まだ心の準備が…)

(いや、黒沢となら別に……)

(って、何一人でモジモジしてるんだ俺は!今はコンペに集中!)

(あーでもなぁ~……)

(ハッダメダメ! 頑張らないと)

(とは言ってもな……)



 恋人との進展具合と、会社のコンペという正念場との間で板挟みになり、煩悶する安達の姿がカワイイ。超絶カワイイ。

 しかし一方で、表向き爽やかなスーパーイケメンでありながら、中身は歳相応のスケベ大魔王であることが分かってしまっている黒沢が、とっておいた楽しみをいざ味わう局面が訪れたなら、安達は一体どうなっちゃうんだろうなあ……と、画面のこちら側で余計な期待いや心配を勝手にしてしまうのでした。

 

 

 で、ここでオープニングなんだけど、このオープニングがまたいいよね!

 これについても是非語りたいと思っていた。

 続く!