第5話冒頭で登場する橋本社長、「チェリまほ」の優しい世界に出てくる「クソな大人」の1人めだ。
仏頂面して何聞かれてもフンスフンス鼻息荒くするだけって、社会人としてどうなんだ。「普段優しい人なのに…」という第4話の六角の台詞が完全に浮いてしまっている。
種明かしされた後も、(モンブラン食いたいなら自分で持ってこいや)と、こっちがイライラしてしまう。
……が、まあ、こういう不条理に直面するのが仕事というもので、この程度の理不尽な人、残念ながら幾らでもいるんだよな。
というわけで、「社会の不条理の暗喩的存在」として脳内処理すると、不愉快な気持ちもちょっと軽くなる。
このヒットしたドラマで憎まれ役を務めた役者さんも、お疲れ様でした。
この「不条理」に、安達が自ら立ち向かうというのが、第5話の肝であって。
今までの安達だったら絶対、近づいてないんじゃないかな。でも今回は、動かざるを得なかった。何故なら黒沢が困っていたから。
黒沢が何度も自分を助けてくれたことも、その都度本当に心から自分を思っていてくれたことも、知ってしまっている安達としては、見過ごしに出来ない。
だから、近づいて、じろっと睨まれてビビりながらも、(俺に黒沢を助けるなんて無理なんだ……)と竦みつつも、(ビビるな!)と自分を奮い立たせて、この困難に立ち向かった。
見事問題を解決し、(よっしゃ!)とガッツポーズ。
コピー機に顔をつっこんで、藤崎さんに若干不審がられているのが可笑しい。
仕事に対するスタンスも人それぞれで、中にはプライベートが最優先、仕事のストレスは絶対にプライベートに持ち込まない!という人もいるだろうけど、周りに認められる仕事をしようと思うなら、やはりある程度はエネルギーを傾け、多少のストレスに耐えて「頑張る」メンタリティが必要となる。
変化を嫌い、人との接触を最小限に生きてきた安達は、もしかすると、仕事に対しても、真面目で丁寧な作業はするけれども、ここぞというときに、自分の力以上に踏ん張る機会はあまりなかったのかもしれない。
「後からどうなるか…」と思いわずらう時間もなく、とりあえずいちかばちかやってみなければならない、という判断を迫られるときは、必ずある。
そういう経験を通して、人は社会で揉まれて大人になっていくのだ。
今まで自分がいた場所から勇気を出して一歩踏み出して、結果を出すことが出来た。
魔法の力頼みとは言え、自分の力で黒沢の窮地を救うことが出来たわけだ。
黒沢に感謝され、六角にも尊敬されて、「他人から認められる」ことがどんな気持ちか、初めて味わった安達。
それは、自己肯定力が低かった安達にとって、(自分でもやれば出来る)という手応えを得た瞬間でもあった。
自分の手を見降ろして微笑む安達の表情が清々しい。
30歳まで童貞だった安達は、やはりある意味、大人じゃなかったんだと思う。
第5話で一気に一皮剥けた感じがする。
あ、下ネタじゃないですからね。念のため。
黒沢が好きになってくれたことも、魔法の力を得たことも、肯定的に捉えることが出来るようになった安達。
しかしこれはラブコメなので、そして12話完結の第5話なので、恋愛面では早くも次なる変革を迫られることになる。
恋愛は楽しい。しかし、お花畑のようにフワフワといいことばかりじゃない。
相手の行動ひとつで不安になったり、怒りを御せなかったりと、しんどい部分も多いのが恋愛だ。
何より、自分で自分の気持ちが分からない。自分としては、理性的に判断しているつもりが、恋の熱に浮かされていると、全然理性的じゃなかったりする。
安達くん、第5話では、感情が上がったり下がったりと、恋の熱に振り回され始めている。
以前は、「単なる同期」というのは、黒沢と自分との間に一線を設けるための言葉だったのに、この回では、「単なる同期」という言葉でしか言い表せない関係性に、明らかにもどかしさを感じている安達。
(黒沢と俺は、単なる同期)
と自分に言い聞かせる意味が、完全に違ったものになっているのに、このときの安達はまだ気づいていない。
女性と一緒にいる黒沢を見て動揺した安達が、雨に打たれて、実際も熱を出しているという設定がうまいですね。体調が悪いと、人間どうしてもネガティブな方向に思考が向くものだ。
そして一目で安達の体調の悪さを見抜く黒沢と、
「怒ってなんかない!」
と怒鳴って、初めて感情を害している自分を自覚する安達。
うーん、お約束ー!!
でもこれはいいお約束。(そう、そこそこ~!)と押して欲しいツボ。
視聴者を気持ちよく物語に乗せてくれる「予定調和」は全然OK。
むしろ、第5話まで見てきた我々はもう、もちろん2人がうまくいくことを応援する気持ちにさせられてしまっているので、こういうイベントは大歓迎なわけだ。
で、当の彼女がタクシーに乗り込んできて、ますます目が離せない……と思いながら幕を閉じた第5話。
ま、でも、こういう感じで登場する歳の近い美女って、大概姉か妹かいとこなんですけどね。笑
どの回でも、黒沢が脳内で思い描くところの「妄想安達」が楽しめる「チェリまほ」だけど、この回は珍しく、安達の想像する「妄想黒沢」が出てくる。
黒沢も、リアルとは若干性格が異なる人相なのが面白いですね。
「童貞が考えるところのモテオブモテ男の華麗な夜」妄想、発想が貧困なのが可笑しいです。
なんでガウンやねん。笑