あのー……大変です。色々と。
一寸先は闇。人間万事塞翁が馬。
コロナでも大概思ったけど、「まさかそんなことが起きるとは」系のアクシデントに見舞われまして、マジで大変な思いをしております。
自分ちのリビングにいても隕石が落ちてくることもあるし、コンビニの本を立ち読みしていただけなのにアクセルとブレーキ踏み間違えた高齢ドライバーの車が突っ込んでくることもある。
どっしぇーですわホンマ。
私が怪我したとか、そういうことではないんですけどね。
口を開けばため息が漏れそうな、そんなときでも、チェリまほ関係の情報を摂取すると、首の後ろにずしっとのしかかっていた重たい疲労がぱぁぁ……と雲散霧消する気がする。
原作者の豊田悠さんのインタビュー記事を読んだ。読みごたえがあるいい記事だった。
30歳まで童貞だったから魔法使いになったという男性を主人公にしながら、「30歳まで童貞だった」ことに対する揶揄が一切ないのは、豊田さんから制作サイドに申し入れていたことだそうな。
このドラマ、これまでのドラマ作りと違って、色んな立場の人がちらっとでも誤解したり、自分が弾かれていると感じたり、そういう台詞や演出を極力排している、と思っていたけど、やはり細心の注意を払って作られていると分かって、感慨深かった。
黒沢の描かれ方も、一歩間違えばストーカーまがいというか、めっちゃグイグイいく人と取られかねないけど、そうはなっていない。
安達も黒沢も、めちゃくちゃキュートで、見た目ももちろん可愛いんだけど、お互いを好きになる過程が手抜きなくじっくりと描かれていて、それぞれの人間臭さに共感してしまうから、視聴者が二人を好きになり、応援したくなる仕掛けになっている。
このドラマ、何度見ても飽きない、飽きないと言ってるじゃないですか。
今も見てるんですけどね。第6話。
超今更なんだけど、赤楚くんも町田くんも、演技めっちゃうまくない? いや、ホラ、若手俳優って、基礎的な演技力があっても、所々でぎこちなさとか、その人の素顔を想像させる瞬間とか、あるじゃないですか。
でも、なくない? この2人。
安達はめっちゃ安達だし、黒沢も、どの一瞬も黒沢すぎる。黒沢でない瞬間がない。
第6話、心の声が聞こえていない場面で黒沢の表情がクローズアップされているところが結構ある。
「どうしたの? 髪ボッサボサ」
と笑いながら安達の髪を直す藤崎さんを見る顔。
安達の家に六角がやってくることになり、夢に描いたスイートライフを阻止されてなんとも言えない表情でモヤッている顔。
たこパで「あーん♪」する六角を見る目も面白かったですね。
どんどん安達に対する気持ちが大きくなっていくのに、それを表に出すことが出来ない。気持ちのままにグイグイ行動しているようで、実は躊躇って、逡巡して、気持ちを抑えようとして、でも抑えられず滲み出て……という黒沢の葛藤が、実に丁寧に描かれている第6話。
寝ている安達の布団を直してやりながら、つい手が出て、安達の頬に触れそうになる。安達が寝返りを打ち、慌てて離れて、(何やってんだ俺……)と苦悩する黒沢がリアルで切ない。
切ないと言えば第6話のラスト、
「これ以上一緒にいるのしんどいんだよ」
と吐き出す場面も、胸を抉られる名シーンでした。
安達と一緒にいる時間が増えて、嬉しいのに、幸せなはずなのに、つのる気持ちがどんどん育って、苦しくなる。
恋という感情は、大きくなると、コントロール出来なくなって、主を振り回す。
黒沢のせつなみの極み、町田くん、お見事でした。
赤楚くんが安達役に決まったとき、そのあまりにシュッとしたイケメンぶりに、(ホントに安達になるのか…?)と原作者の豊田先生も訝ったそうですが、これ以上安達らしい安達はないくらい肉薄してくれたことは、既に周知の通り。
重ための、もさっとした髪型もそうなんだけど、話し方と表情で、「人と接し慣れていない地味系男子」を表現している。
たこパで、六角の心を読んで「いいじゃん」と肯定してあげる台詞を言うとき、安達はさかんにまばたきをして、視線は下を向きがちだ。それだけで、自己肯定力の低さ、自信のなさ、口下手だけど頑張って言ってる感がめっちゃ出ている。
うーむ、これ以上安達な安達を表現できる役者はいないかもしれん、とマジで思う。
そんでね、第6話の冒頭、あるじゃないですか。黒沢がベッドに安達を押し倒す形になって、顔がめっちゃ近くて、ドッキドキ…!みたいなやつね。
あれもまあ、ラブコメにはよくある場面ではあるけれども、実写BLでもよくあるんだけど、下手な役者がやると、浮くんですよ。歯が。見ている人の歯が浮く。
なんかもう、とってつけた感というか、見ていていたたまれなくなって、こっちが赤面してしまうことも多かった。
それが全然ないもんね…! これさあ、結構凄いことだと思うの。
役者の素なんてまったく思い至ることなく、黒沢と安達のトキメキエピソードとして楽しむことが出来る。
そう言えば黒沢くん、弟なんですね。なんかお兄さんぽいけど。
美人でワガママで弟を振り回す姉、リアルにいそうで笑った。お姉さん、自分の都合なんだけど、結果的に黒沢と安達の距離を縮める役割を果たしてくれる。
チェリまほの世界の登場人物なら、安達とつきあっていることを知っても、
「あーそう。へえー」
くらいな感じで受け入れてくれそう。
なんなら、
「え、ちょっと、あのときのアタシ、ナイスアシストだったんじゃん?」
てなって、
「安達くんとうまくいったの、アタシのお陰でしょー。奢りなさいよ」
と高い酒奢らされてそう。黒沢が。
個性はあれど、イヤな人がいない世界観、いいですよね。今こんな状況だからこそ、チェリまほの優しい世界、癒される。
私が度々言及する、「これまでの実写BL(ダメな方)」がどういうものか知りたい方には、その名もズバリ「BOYS LOVE」を見てみることをお勧めします。
ブレイク前の、若かりし頃の斎藤工くんが出ていて、一部ではとても有名な作品です。
斎藤くんにとっては、大切な作品のようで、黒歴史として隠しているわけでもないところが好感度高いのですが、私からするとダメな実写BLの殿堂入り作品です。
でも、ここから始まって、令和の今「チェリまほ」が出来たと思えば、意味がある出発点だったのかもしれない。
初めてあの作品に肯定的な感想を抱けたのも「チェリまほ」のお陰。