おっさんずラブが好き!

ドラマ「おっさんずラブ」の細かすぎるレビューブログ。OLの深い沼にハマって当分正気に戻れません。ほぼおっさんずラブの話題しかないかもしれない。ネタはバレまくりなのでご注意を。

性別が、ない!

 この世には、男と女、二種類の存在がある。

 私がものごころついたとき、周りはすべて、その前提で出来ていた。

 実用品も、「男の子用」「女の子用」の二種類あって、しかも、どちらかを選ばなければならなかった。

 いや、違うな。女子は「女の子用」を選ぶしか選択肢がなかった。

「女の子用」とされた色を、男子が好むことはタブーだったし、逆もまたしかりだった。

 まして、「男でも女でもない」存在のことなど、誰も知らなかったし、「そんなものはあるはずがないッ!!」と、誰かに怒られでもするのではないかという勢いだった。




 ユニセックスという存在に、私が関心を抱いたのがいつからだったか、もう思い出せない。

 でも、「女子」の集団の中にいて、いまいち周りに同化できないというか、染まれない自分を感じて、ずっと居心地が悪かったことは憶えている。

 いちいち「女の子だから」とか「女の子なのに」とか、それ要る? 私が好きなものは、「私だから」好きなのであって、女の子だからとかじゃない。

 なのに、身体はどんどん「女の子」になっていく。周りからも「女の子らしい」振舞いを求められる。その息苦しさ。

 それを、私は悶々と悩むタイプじゃなくて、ともかくも「本を読もう!」と、書物に解答を求めるタイプだったので、性別関連の本はめちゃくちゃ読んだ。

 特に高校時代、歴史的な男色とか、異性装の文化とか、生物学的観点からの男女の違いとか、色々と読み耽った。

 腐的な目覚めもそのころだったかな。



 で、異性と同性のどちらを愛するかという性的嗜好とか、性自認と身体の性が異なっている人とか、そもそも身体がきっぱりとひとつの性を示していないとか、全部ひっくるめて「LGBT」という世界があるのだと知ったのが、うーん、大学時代だったか。多分その言葉の出始めだな。

 今では「LGBT」という言葉を見たことも聞いたこともない、という人の数は減ったと思うけれども、

「なんとなく知っていて、興味もあるけど、ちゃんと理解できているかどうかは自信がない」

という人も多そうだ。

 そういう方へのおススメとしては、まずこの本を挙げますね。



「性別が、ない!」 新井祥著 ぶんか社



 漫画です。「本当にあった笑える話」という雑誌に連載されているコミックエッセイ。ギャグ漫画テイストで描かれているので、とっつきは非常によい。ただし、中身はなかなかハードな話だ。

 著者は、「長く女性として生きてきたけどある日半陰陽ということが分かった」というスゴイ人で、いやこれも読んだ当時は割と衝撃的だったんだけど、今だと「スゴイ」というほどでもないのか。

 はっきりと「女性」ではなくて、性器も未分化なんですね。でも、自分についてるものが他の人と違うかどうかなんて、絶対分かりっこないよね。比べる機会もないんだから。

半陰陽」は、現在では「インターセックス=IS」というらしいですね。アルファベットの羅列は、手垢がついてない分変なイメージづけがなくて便利だ。

 女性として生きてきて、男性と結婚もしていて、でも段々と違和感が増してきたので受診したところ、染色体の検査でISと判明したのだそうな。

 その辺の事情をかなり赤裸々に描いてあるので、免疫のない人には受け止めにくい話かもしれないけど、面白いといえばこれほど面白いものもない。

 私にとっては、めちゃくちゃ楽しめる本でした。



 インターセックスの子が数千人に1人の割合で生まれてくるって、結構な確率ですやん。

 この作品を発表後、著者の元にも、「実は自分も…」と悩みを打ち明けるメールや手紙が相次いで来たらしい。だから、割といるみたい。予想以上に。

 もうひとつ、(えー、そうなんだ…!)と目から鱗がポロリだったのが、この新井祥さん、日によって「男性度」「女性度」が違ったんだって。

 男性ホルモンが多いと、大雑把な性格になり、本能に忠実になり、若い女の子がキラキラして見える。

 女性ホルモンが多いと、繊細になり、ギラギラした男が狼みたいに見える。



(えー、男と女の区別って、そんな曖昧なものやったんや……)



 というのが、私にとっては驚きの発見であった。




 多くの生き物が、有性生殖を選択して、それにより雌雄が存在するわけだが、「オス」と「メス」ってそれほどきっぱり分かれてないってことですよね。

 まあでも考えてみれば、動物の発生って、受精卵が着床して恐ろしい勢いで細胞分裂を繰り返していって、一個の「動物」に成っていくのであって、途中でどこかにミスが生じても全然おかしくないわけで。

 それがたまたま、性別に関する器官あるいは脳の一部分だったと、そういう事情なんですね。




 動物や鳥類には、同性同士で交尾のような行為に及ぶ個体が必ず1割以上いるそうな。

 いつだか、ニューヨークの動物園のペンギンが話題になっていましたね。オス同士でくっついて、遺棄された卵を温めてヒナが孵って、絵本になったという。

 シャチやイルカなど、高等な知能を持つとされる生物でも見られる現象だそうな。

 それがつまり、有性生殖によってもたらされた「多様性」の一つであって、何らかの意味がある現象なんだと私は考える。




 と、これらのことを考え合わせると、ですよ。

 

「男だから〇〇」「女だから△△」という区別って、

 

 超絶意味なくね…??

 

 そんでさあ、

カップルとは異性同士でのみ成立する。同性同士などもってのほか」

 なーんて意見も、まったくもって的外れというか、

 

 自然界の事象を無視した意見



 では……??




 先に紹介した「ミステリと言う勿れ」で、主人公の久能くんが人の名前について語る場面がある。

 今普通とされている名前と、親の世代によくある名前とで、かなり世代の差がある。祖父母の代になると相当違うし、さらにその先となると、まったく違ってしまう。「この国は名前の変遷が著しい。だから今『キラキラネーム』とされる名前だって、少し後にはスタンダードになっているかもしれない」という意見。

 恋愛や結婚観、男女の在り方についても、今と昭和の時代とでは随分変化が感じられる。これまでこうだったからとか、前例が少ないからどうだとかじゃなく、新しい価値観を馬鹿にしたり、敵視したりするのではなく、もっと柔軟に受け入れてもいいんじゃないかな、と思う。




 性について、恋愛について、「男性として生きる」「女性として生きる」とはどういうことなのかについて、等々、

「ええッそうなの!?」

とか、

「そうきたか、うーむ」

とか、考えさせられたり唸ったり、本著を読んでいると忙しい。

 いやでも、祥さんが割と思いもつかない行動に出るので、驚いた挙句笑っちゃうことが多いかな。

「せっかく中性なんだから中性としての生き方を極めよう!」

と決意してエクステつけて美容に励んでみたり。

 アメリカにフェイク〇んこがあると聞いてはるばる買いに出かけたり。

 タイで手術してきた友人の身体の一部をみんなでチゲ鍋にして食べちゃう、とかね。笑

 

 すべてを笑いに昇華して作品にしてあるけど、余人の想像が及ばない悩みはあったであろうと察せられる。

 でも、今与えられた状況を受け止めて、かつ楽しもう!とする意欲とガッツがすごくて、その点、本当に尊敬する。

 ていうかさ、男と女のどっちも経験したことがあるって、なかなか稀少価値ですよ。こうして表現して発表してくれる人でよかった。

 お蔭で、自分の中の固定概念とか偏見とか、色々なものに気づくきっかけにもなった。




 とまあ、そちら方面に関心のある方には、読んで損のない一冊かと思います。

 あの世界も色々な価値観があって、今では「LGBTQ」が正しいとか、アセクシャル(無性愛)も含めるべきだとか、当事者同士でも意見が異なるらしいですね。

 ともあれ入門編として、肩の凝らない本だと思います。難しいことは、知ってからそれぞれ考えればいい。

 私はこの本を読んで、人生観がかなり変わりました。

 



 4巻で止まってるから、続きを電子書籍で買って読もうかな。