おっさんずラブが好き!

ドラマ「おっさんずラブ」の細かすぎるレビューブログ。OLの深い沼にハマって当分正気に戻れません。ほぼおっさんずラブの話題しかないかもしれない。ネタはバレまくりなのでご注意を。

天使か悪魔か

 昔よく読んでいた作家の一人に、新井素子がいた。

 この人が出てきたとき、いわゆる「小説」を取り巻く界隈……うーん、何と言ったらいいんだろう。「文壇」とまで言うと大げさなんだけど、ともかく、

「なんかこれまでにいなかったタイプが出てきた!」

と、ちょっとした衝撃が走ったと記憶している。

 一人称が「あたし」で、主人公の語りで進む形式。文体といい、台詞といい、マンガをそのまま文章にしました、みたいな感じで、今で言うライトノベルの走りだったと思う。

 だけど、その後雨後の筍のようにわらわら沸いたライトノベルの書き手と新井素子とは、全然レベルが違っていた。

 ライトなのは文体だけで、発想といい構成力といい、群を抜いていた。

 だからどの話も、誰と誰が出てきて、何があって、こういうラストで……とくっきり思い出せる。

 新井さんと、もう一人当時の少女小説世界を席捲していたのが氷室冴子で、この二人の著作のお陰で、非常に楽しい中高生時代を送れた、と実感しています。




 まあそれはともかく。

 新井素子の掌編に、この世がチェス盤のようになっていて、天使と悪魔がゲームをしているのだ、という内容のものがあった。どの本に入ってたか忘れてしまったけど。

 その本を読んで以来、時々、

(今は悪魔側が次の手を打ってきたな)

とか、

(こういう事件が起こると、地球の裏側でまた違う事故が起こったりするんだな)

とか、今のこの状況がゲームのどういう局面なのか、妄想してみたりするようになった。




 悪魔は何とかして人類の数を減らそうとあの手この手を尽くす。

「よーし、天然痘だ! ペストだ! 今度はインフルエンザだ!」

 天使は何とかして人類を守ろうと、武器を授ける。

「何、人間には知性がある。ウィルスの発見と予防法、薬の開発で病気は克服できる!」

 確か、新井素子の小説では、敵が繰り出したワザそのものを封じ込めてはいけないんじゃなかったかな。だから、ウィルスをなくすことは出来ないけど、その代わりに人類に対抗手段を見つけさせる…的な。

 と考えると、本当に、この世は天上で誰かがゲームしているかのように思えてくる。

 これまでも度々、疫病やら幾度となく繰り返される戦争やらで、壊滅的な打撃をこうむりつつも、その度に不死鳥のごとく蘇って、また繁栄をしてきたのが我々人類、ということになる。




 なので、去年の2月頃、また悪魔の囁きを聞いたような気がしていたのだ。




(ここらでまた新しい疫病を流行らせよう……今度のウィルスにはどんどん変異していくようプログラムを仕込んでおこう)

「コロナウィルスの変異種投入!」

 対する天使側、最初は余裕だったかもしれぬ。

「何、ウィルスは人を介さないと増えないんだ。しばらくは接触しないよう控えていれば、それほど拡がりはせんよ」

「ふっふっふ、さーて、それほど人間諸君が賢く立ち回るかね? 君たちが思っているより人間はバカだぞ」

「一人の人間の知恵は知れているとしても、結集すれば何倍にもなるのが人間の知力だよ。『三人寄れば文殊の知恵』と言ってね。仲間がいない孤独な悪魔には分からないかもしれないが」

「さてね。『烏合の衆』という言葉もあるがね。愚か者をいくら寄せ集めたとしてもわあわあ騒ぐだけで対して有効な手立ては考えつかないと思うがね」




 さあ、今笑っているのはどっちだろう。

 私には、陰険な顔した悪魔が頬杖ついてブランデーかなんかくるくるしている姿が目に浮かぶようなんですけど。




 一向に勢いが衰えないコロナウィルスの拡大。

 社会が分断されつつあるように感じているのは、私だけではないと思う。

 毎日のように芸能人の罹患のニュースが飛び込んでくる。最初、1週間に数人だった。それが今や、一日に数人に増えている。

 野々村真さんのコロナ罹患のニュースには心を痛めた。「世界ふしぎ発見!」をずっと見ていた視聴者にとっては、彼はいつまでも「若手のオトボケキャラまことくん」であって、身内とまではいかないまでも、「またいとこ」くらいな身近さで親しみを感じてきた芸能人だったからだ。

 なかなか病院に入れず、自力でトイレに行くのも困難になっていた、というのを最後に、オリンピックだったこともあって、しばらく情報がなかった。ハラハラしながら待っていたから、退院のニュースを聞いて心底ほっとした。

 治ってよかったですね。




 綾瀬はるかがコロナ罹患というニュースを聞いたときも、(あーまた一人……それにしても綾瀬はるかのような国民的女優が…)と胸が潰れる思いだった。

 ところが、綾瀬はるかさんのときは、SNSで見かけるコメントがかなり違っていた。

「すぐ入院出来るなんて、有名人は得ですね」

だの、

「なんで野々村真は待たされたのに綾瀬はるかは即入院出来るの? 上級国民だから? そんなの差別じゃない?」

だの、怖い感染症に罹った人に対してかける言葉とは到底思えないものばかりだった。

(え……だって、そのとき近くの病院に空きがあるかどうかなんて、それぞれの自治体で全然違うだろうし、タイミングだってあるじゃん。何言ってんの??)

とこれは、自分が実際罹ったことがあって、少しでも事情が察せられたせいもあるかもしれない。

 ヤフコメって、一つの記事に対して、めちゃくちゃ偏った意見ばかりが寄せられるイメージなんだけど、アレ、なんなんですかね??

 怖いわ。




 でも、コロナという病気の持つ怖さはこれなんだ。

「罹患した」と聞くと、(気の毒に…)と思うけれども、一方で、

・ちゃんと感染対策はしていたのか? 不要不急の外出は避け、大勢と集まることもせず、マスク・うがい・手洗いは実行していたか?

 ということは気になる。

 気になるだけならいいが、疑わしい事実があると、

「だから感染したのだ。自己責任だ!」

となりかねない。

 で、今現在、都市部では前々から言われていた医療崩壊が現実のものとなっている。入院が必要なのに、自宅待機を余儀なくされている患者が大勢いる。その中で、こうして「罹患したけどすぐ入院できた」という有名人が現れると、

「出来ない人がたくさんいるのに! 差別だ!」

などと、罹患した人を非難するような風潮が生まれてしまう。

 芸能人なんだから、入院した後に公表したのであって、一般人とそれほどかけ離れた治療過程ではないはずなんだけど、煽情的なコメントがあると、次々とそれに煽られた人たちが書きこんでしまう。

 結果、コロナ罹患者がまるで罪人のような扱いを受ける羽目に陥る。




「くっくっく……順調に拡がっているな。ホラ言っただろう。人間は馬鹿なんだよ」

「調子に乗るな! 全世代ワクチン接種すれば、コロナの収束もすぐだ」

「一体いつ終わるかね。大体、これだけ全世界でコロナが拡がっているのに、オリンピックを強行するなんて愚の骨頂だろう。だが実行してしまった。……こんな連中に、コロナの根絶なんて到底無理だろうよ」

 うぐぐぐぐ……と、人間の味方である天使が唇噛みしめて血が出てないといいけど。




 で、今んとこ「コロナに感染する確率を減らせる」手段がワクチン接種しかないので、私もワクチン予約しました。

 なんか、副反応とか色々怖い噂も聞きますけどね。

 それについてはまた今度。




 皆さまもどうかご無事で。

 心身ともに健康でいらっしゃることを祈ります。