いやー、第四話、書いても書いてもレビューが終わらない。
まだまだ先があると言うのは、私にとって至福の状態ではあるんだけど、
「いつ何があるか分からない」
ことを思うと、健康で、状況が許すうちに「了」の字に辿り着かねば、という思いもある。
書き始めて3年(!)経つというのに、まったく衰えない私のOL愛よ。
前項の続き、居酒屋わんだほうでの場面。
春田家の食卓に次いで、わんだほうでの場面も多いけど、第四話のこの場面は特に、「おっさんずラブ」全体を通して「分岐点」となるエピソードなんじゃないかと思う。
そんなに長いシーンじゃないんだけど、ともかく情報量が多いんだ。
①ちずが春田の彼女のフリをする
牧と部長だけでも持て余してるのに、さらに武川さんまでが自分を巡る恋のバトルに参戦してきたと思い込んだ春田が、ちずにお願いしたあの作戦ね。
しかし、春田が考えた「周りにちずが彼女だと思わせるためにやること」リストの内容がヒドイ。笑
・「あーん」
・口についた食べ物を拭いてくれる
・火傷した指をフーフーしてくれる
・「酔っちゃった」と俺にもたれかかる
・「ねぇねぇ」からの「呼んでみただけ~」
・俺のこと何でも知ってるアピール
「あたし、人前でこういうことやる女大嫌いなんだけど!」
と嫌悪感を露わにするちず。うん、私もキライ。みんないる前でこんなことやるカップルいたらどつきたくなりそう。
「彼女らしいことあんまり思いつかなかったんだよ…」
とぼやく春田。例えば「彼女 人前 仕草」とかのワードでネット検索して、イキってみせるとか、そういう、自分をよく見せようと妙にカッコつけたりしないのは、春田のいいところだ。この素直さ、大変好もしい。
にしても、恋愛偏差値の低さが丸分かりで恥ずかしいけれども。笑
「焼肉奢ってもらわないと割に合わない。特上タン塩!」
というちずの要求はもっともだと思う。
春田に言われた通り恋人らしい演技につきあってあげるちず。
鉄板焼きを持ってきて、火傷したフリで
「あちぃぃぃ!!」
大げさな声をあげた春田に、やっぱり大げさに
「大丈夫~!?」
と声をかけて、両手の指を掴んで「ふー、ふー、」と息を吹きかけてあげる。
ちずにアプローチ中のマロには効果てきめんで、間髪を入れず
「ちょっとちょっとォ!!」
と抗議のツッコミが入るんだけど、気の毒なのは、真正面から被弾した牧だ。
ここで、牧は何も言わない。表情もほとんど変わらない。
ただ、まばたきをして、すっと視線をそらしただけだ。
「なんすかソレ。腹立つなぁ~!」
と大きな声で言うマロと対称的に、牧は内心の動揺を表に出さない。
だけども、あの大きな瞳が伏せられ、下を向くと、画面のこちら側で我々視聴者は牧の心を読み取ってしまう。
(ちずさんとあんなに仲良かったんだ)
(やっぱりな)
(そりゃ、俺なんかに好かれたってしょうがないよな)
(春田さんだって、ちずさんの方がお似合いだ)
と、このコンマ何秒でこれくらいのことを思っていそう。
牧の表情や仕草には、そこまで我々に感じさせる余韻が漂っている。
②春田、黒澤部長に面談を申し込む
ここまで、恋に生きると決めた黒澤部長からの押せ押せ攻撃を一方的に食らい続けていた春田、第四話中盤に来てようやく、自ら一歩踏み出す。
「妻に、何か言われてない?」
「ちゃんと、話するから」
と部長の方は相変わらず、「妻との話し合いがきちんとしたら、はるたんとのおつきあいスタート♡」という路線で話をしているんだけど、ここでの春田は、武蔵の勢いに押されるばかりじゃない。
取られた手を外し、自分から手の平をかぶせて、武蔵の手をテーブルに置く。
そして、
「僕からも、部長にお伝えしたいことがあります」
と、まっすぐ目を見て告げるのだ。
「…分かった」
と答えた武蔵、はるたんから視線を外してしまう。
この先のなりゆきを薄々察しつつあるのが、せつないと言えばせつないのだが…
にしても、生クリームレバー丼、ホントに旨かったんか武蔵?
③春田×ちずのフラグが立つ
「春田!」
不意にちずが呼びかけてきて、黒澤部長の目がすがめられる。
ちずはちずで、この日の自分の「任務」をちゃんとやろうと思ったのだね。エライ。律儀だ、ちずちゃん。
そんで、春田のメモにあった
・口についた食べ物を拭いてくれる
を実行しようとやってきたんだな。
「あ! 口のまわり、いっぱいついてるよ」
春田、察して
「え……え、ホント?」
と調子を合わせる。
だけど、そこからがまずかった。ちずはサッパリしてて気立てがいいけど、割と雑なところがある。テキトーに春田の口周りを拭いたもんだから、乱暴に扱われた春田、
「もっと優しく!」
と抗議する。
「はぁ!? もーやだ、1人でやって!」
怒ったちずが向こうへ行こうとするのを、春田が引き留めようと手を引っ張り、そのまま二人が抱き合う形になって、トゥンク……という、少女漫画の王道みたいな展開。笑
そう、ここまで、気のいい幼馴染で、よき相談相手でもあり、完全な「友達」ポジションだったちずが、春田の相手としての可能性が急浮上するのだった。
この場面での春田は、「男にばっか言い寄られて困ってるけど元々はどストレートの巨乳好き」。少なくとも本人の自己認識は完全にノンケ。
だから、常に傍にいて、仲良くしているちずのことは、もちろん嫌いじゃないし、「憎からず思っている」程度の好意はあるのだ。
ちずもちずで、マイマイに
「二人はつきあってるの~?」
と聞かれたときには、「絶対、ナイです」と春田との交際を強い口調で否定していたけど、ここでは気まずくもドキドキしてしまって、春田と目を合わせられなくなっている。
目の前で見せつけられてしまった武蔵。
去っていくちずを横目で見て睨んだあと、ふと我に返ったように、顔が曇る。
(でも、そりゃそうか……はるたんにはああいう、年下の若い女の子の方がお似合いか……)と、やるせなく感じたりしているのだろうか。
「ビール二つ!」
というマロの声にも、あからさまな苛立ちがあるから、近くにいた牧も見ていたかもしれない。
……いや、見てるだろうな。絶対。春田と部長が近づいてやり取りしている辺りから、牧も気になって見ていたはずだ。画面では描かれていないけど。
だからこの作戦、春田の目論見通り奏功しているんだけど、多分誰よりもダメージが大きかったのは牧くんだと思われる。
牧くん。。。(´;ω;`)
第四話のこの場面、登場人物たちの関係が目まぐるしく動き、それにつれて心も揺れ、この先に繋がっていく。
「おっさんずラブ」の面白さがぎゅっと詰まった場面だと思います。