春田のナレーション。
―――それから数日後、牧凌太は我が家に引っ越してきた――
2人の同居生活の始まりだ。
ドラマでは、赤の他人同士のルームシェアが割と簡単にスタートするけど、現実でやろうとするなら、事前によく考えて話し合った方がいいと思う。
きっちりしているところ、緩いところ、人それぞれ皆違うわけで、それが同じだったり許容出来る範囲なら、一緒に住んでも大丈夫だろうけど、「どうしても見過ごせない」と感じるポイントも出てくる。意見が違ったときどうするかとか、ある程度ルールを決めておかないと、生活が破綻するばかりでなく、せっかく仲のよい友人同士だったのに、それがきっかけで疎遠になってしまったりもする。
牧はその点、他人との距離も春田よりかなり取りそうだし、この場面ではまだ明かされていないけどゲイだし、慎重派な気がするんだけど、よく春田との同居をOKしたな、と思う。
まあ、(この先輩となら同居生活も楽しいかも)と思えたのかもしれないし、あとはやっぱり、もうこの時点で潜在的には好きだったのかもね。
25歳という若さのなせるわざもあったかもしれない。
ともあれ牧は荷物持って春田家へ越してくる。
春田家の玄関先の虫取り網や虫かご、木彫りのクマがいいですね。このクマ見て、「あー昔はよくあったわ」と分かる人は多分、30代後半以降な気がする。
映るのは一瞬だけど、春田が子供のときからずーっと住んできた感がよく出てる。
一緒に住んで初めて分かった牧の一面とは、春田いわく、「『超』がつくほどマメなヤツということ」。
牧が越してきたとき、家の中は春田が散らかした服やスナックの袋で生活感に溢れているが、牧の手でみるみる綺麗にされていく。
掃除機をかける牧をソファに引っ繰り返って見守る春田。
いや、うん、ちょっとは手伝おうとかそういう気はないのかな。笑
ここから、2人の生活能力の差が浮き彫りになっていく。
洗濯ものを広げて渋い顔の牧。
「…マジティッシュ」
「……ごめん」
ないわー。ポケットにティッシュ入れたまま洗濯はないわー。こびりついて取れないんだよねー。洗濯もの全部埃っぽくなるし。
その前に自分の服は自分で洗濯しろって話だけどね!
スナックをこぼしまくりながら食べてて牧に注意される春田。
「お菓子こぼすとかガキじゃないんですから」
「あ、ゴメンゴメン」
と服についたスナックのかけらをそのまま払い落としちゃう。
「イヤイヤイヤおい!!」
と牧がツッコむのは当然で、「それ誰が掃除するんだ!」って話だからね。結局牧くんがまた掃除機かけたんだろうな…。
この場面、ここで既に牧くんが飲み物入れて、春田に持ってきてあげてるんだね。
春田の生活能力のなさも相当だけど、牧くんが元々きちんとした人なのと、母性が強いタイプなんでしょうね。
つい世話を焼いちゃうタイプ。
余談ですが、私自身、以前友達とルームシェアしてました。
関係性もなんか似てる。相手の子は天然で、春田みたいにぽわんとしてて、生活能力も大体春田くらい。
「一緒に住まない?」
と誘われて、私の場合は一度断り、ずいぶん考えた挙句に了承したのですが、「こういう場合はこうする」とざっくりルールを決めて、「まあやってみないと分からんな」と見切り発車。
私は、牧くんほど掃除洗濯なんでもマメではないけど、心身の健康のために日々食べるものはすごく大事だと考えていて、料理はマメな方だと思う。それと、「作ったものを人に食べてもらう」のも好きだったので、料理担当を引き受けていて、仕事が忙しい友達の分のお弁当も時々作っていた。
友達も色々やらかしてたなあ。洗濯は別だったけど、食器棚から生のトマトが出てきたり、作ったばっかの料理の鉢引っ繰り返したり、サザエさんみたいなドジっ子属性の女子でした。
「お茶飲もうよ」
と誘うと、
「うん!」
と二つ返事で自分の部屋から出てきてリビングにくるんだけど、椅子に座ってじーっと待ってる人だった。笑 結構はるたんみあったな、今考えてみると。
この辺の場面見てると、当時を思い出して懐かしくもなります。
同居を始めて、最初の牧くんごはんは唐揚げ。
普通だけど、いかにも家庭料理、て感じですね。毎日食べるにはこういうごはんがいいよね。奇を衒ってなくて、普通で、飽きのこない料理。
これ、春田が唐揚げが好きだから、「これからよろしく」の意味でふるまったんじゃないかなあ。
食べてくれる相手がいると、彩りも考えて、レタスやレモンを添えたりしますね。
公式本によると、この日の献立はベーコンのポテトサラダ、しめじと油揚げと小松菜の煮びたし、わかめと長ネギの味噌汁、グレープフルーツ。一汁三菜で果物もついて、全体のバランスがとてもよい。
料理って作る人の性格が出ると私は思っているんだけど、食べる人のことを考えたこの牧ごはん、牧凌太という人の性格がよく出ていると思います。
にしても、25歳でこの献立考えてささっと作れる男子って、只者じゃないわ。牧凌太。
「すっげー!!」と手放しで喜ぶ春田。
「いただきます!」
とまず好物の唐揚げを口に運び、
「何コレうめー!!」
と、喜び方がまるで子供だ。
いや、でもね、作った方からすると、このくらい喜んで食べてくれると、あー作ってよかった…としみじみ嬉しく思うよね。
牧くんもこの笑顔だ。
2人がこうして食卓を囲むシーン、これから先何度も登場するけど、なんとも言えずほのぼのしてて、あったかくて、見ているだけで心が和む。
食卓って、家庭生活の象徴ですよね。一緒にごはんを食べるのって、生活していく上で大事な習慣だ。
ここから先、「春田の家」が「春田と牧の家」になっていく。
ルームシェア時代、うちでも時間が合うときは出来るだけ一緒に晩ごはんを食べるようにしていた。
食後1時間か2時間してからのコーヒーブレイクも大事にしてたな。
私が声かけて、コーヒー淹れて、一緒にテレビ見て、他愛ない雑談したり。
友達は、人の名前が全然覚えられない人で、テレビ見てても俳優さんの名前が出てこない。
友「ねえねえ、こないだ見たドラマの、ホラ、あの人が出てるやつなんだっけ」
私「あー、竹野内豊が出てた〇〇ね」
友「あーそう! すごいねー、なんで分かるの?」
私「だってめっちゃ好きって言ってたじゃん」
友「…そうだっけ? よく覚えてるね~(ニコニコ)」
みたいな会話、しょっちゅうあって、楽しい時間でした。
他人同士が仲良く生活していくためには、お互いに努力と工夫が必要だと思う。うん。
春田と牧の同居生活も、順調なスタートを切ったんですね。
牧が既に遠慮ない物言いしてるのも、ふわふわしてて先輩面しない春田のキャラのおかげかな。
会社でも仲良くお昼を一緒に食べてる。
「半分ずつ出し合ってVR買わない?」
「いいですけど、ゲームとか好きでしたっけ」
この辺、もうすっかり気を許し合った友達同士の会話ですよね。
「VRってエロもすごいらしいよ」
「そっちかい目的は。いらない!」
と牧がバッサリ切って捨てる言い方も遠慮がなくていい。牧はゲイだから女体には興味がないとかそういうことではなく、こういうくだらない会話と、ちょいちょい混じるタメ口が、お互い垣根のない関係性を示しているようで、2人の距離が近づいていることがよく分かる。
特にやっぱ、牧くんだな。牧はこうやって誰とでも仲良くなれるタイプじゃない気がする。春田だから、短期間でここまで仲良くなれたんだと思う。
しかしまあ、会社でこうして仲睦まじくしていると、当然あの人が見ているわけで。
部長室からの視線にふと気づいてしまい、気まずく視線を逸らす春田。
じっとりした部長の眼、なんか色々な思惑が透けて見えて、イイですね!笑
(オレのはるたんに近づく妙な虫……)
と、気が気じゃなかっただろう。
この後、部長の恋がいよいよ加速していくわけだが、
①春田に思いがけずパソコンのはるたんフォルダを見られた
ことに加えて、
②新しくやってきた若いイケメンがはるたんに急接近
という事実も部長のギアがトップになっちゃう重要なポイントだったと思うな。
しかしまあ、こうやってみっちりねっとりレビュー書いてみて思うけど、本当に一話から無駄なコマが一つもないドラマですね!
レビューの書き甲斐があってめっちゃ楽しいです。
8回を費やしてまだ一話の半分くらいまでしか来てないので、年内に終わるかどうか危ぶまれますが。。。笑