劇場版おっさんずラブ感想 ツッコミその③ まとめて羅列
さてと、ここまで触れてないツッコミポイント、ざっくり書いていきます。
割と容赦なく辛口です。
閲覧注意。
1.ちずの描かれ方が雑
私にとっては、一番物申したいのはこれかな。
ちずちゃん、ドラマ版では物語を動かす重要な立ち位置だった。だーりおの演じるちず、私は好きでした。「とても好き」と言っていいと思う。サッパリしていて、言いたいことはきちんと言葉にして相手に伝えることが出来る。でも空気を読んで気遣いも出来る。
牧とのあれこれについては、ドラマ版のレビューで書くのにとっておくとして、あれだけ活躍したのにこの扱いかあ…と、ちょこっと不満を覚えたのは確か。
だーりおのスケジュールが合わなかったんですかね? わんだほうでのシーンしかないところを見ると。
それはそれでいい。前半、春田と牧のさし飲みに割って入る形になったのが、ちずが邪魔というよりは、プチ浦島状態の春田が置いてけぼりくらっていたあたりなんか、ちゃんとスパイスが効いていたと思う。
でも、劇場版の終盤、鳳凰山リゾートの幹部が逮捕されたニュース映像を、鉄平兄とマイマイと3人で見るシーン、あそこの台詞はちょっといただけない。
「春田たちが乗り込まなかったら、ベイエリアが麻薬の温床になってたってことでしょ?」
「春田のくせに日本救ったじゃん!」
ここ、「?」てなったの、私だけ?
え、それ、ローカルニュースじゃないの? 「東京救った」「首都圏救った」なら分かるけど、なんで「日本」?
そんな大層な話??
これはもしかすると、地方在住民あるあるかもしれないけど、やっぱりメディアって視点が東京なんですよね。大概は東京中心であって、それは事実なんだけど、台風だって首都圏を過ぎるととたんに報道の温度が変わるじゃないですか。
政治や経済・流通の諸問題と違って、台風の進路なんて、東京だって一地方に過ぎないのに、「東京過ぎたらまあ…」みたいな驕りというか思い上がりを感じることは度々ある。
それと同じニオイがして、私は最初からこの場面のちずの台詞は引っかかった。
で、その次もですよ。
「ちずはもう結婚は諦めて、仕事に生きるんだろ?」
「いやいや勝手に決めないで! 私は仕事も家庭も両方手に入れるし、どっちも天下取るから!」
「仕事も家庭も両方手に入れる」はいいとして、「天下取る」の意味が分かんない。
家庭で天下を取るとは一体……? と、脇キャラのささいな台詞としてスルー出来ずに、なんとなくずーっともやもや考えてしまった。
(家庭と天下って一番遠い要素だと思うんだけどな……)
けど、ここで重要なのは「家庭で天下取る」のが合ってるかどうかじゃなく、ちずがこういう台詞を言いそうなキャラかどうか、だ。
だから、
「マイマイ意味分かる?」
「分かんない」
と、2人がアドリブでフォローしてくれていても、モヤモヤが解消しないのだ。
「執事みたいなイケメン彼氏を手に入れる」と宣言して、有言実行してしまったのが痛快だったドラマ版のちず。
それと同列の台詞には、私には思えなかったんだな。
なんか、劇場版のちずがこんな大口叩くことによって、ドラマ版のちずの台詞までが
(えー、そんな浅はかなビッグマウスだったの…?)
とやや違った意味を帯びて感じられるくらい、私にとっては残念なキャラ変だった。
徳尾さんの脚本て、こういう細かい部分で「あれ?」と思う台詞が結構ある。
以前に触れた「一度壊れたとしても再生できる」の主語が「街」である点もしかり。
だから、だーりおのスケジュールの都合かなんか知らんが、ちずの出番がちょっとしかなかったのが原因なんじゃなくて、その場面の台詞の粗さが問題、という話。
その台詞いかんによっては、ちずがドラマ版どおりの印象を残すことも出来ただろうに…と思うと、勿体ない。
2.天空不動産本社がテキトーすぎる
これはもう、いろーんな人がツッコんでましたね!
レビューでは触れなかったけど、ジーニアス7てそもそもなんなん。天空不動産の社長はどこに行ったんだ。ジーニアス7、他社と組むのに壇上で狸穴さんが握手するのは自社の部下である牧。なんでや。
「オールフォージーニアス! ジーニアスフォーオール!」って、そのコール相当練習せんと揃わないよね。新興宗教?
本社が前触れなしに支社に乗り込んでくるとか、地検特捜部のガサ入れじゃないんだからさ……黒澤部長が何も聞いてないとか、あるわけないじゃん。部長は「なんてこったー!」と叫ぶだけ、主任はクイックル〇イパーを手に右往左往。カオスすぎる。
あまりにも短期間での無茶な地上げと言い、普通に会社勤めした経験のある人なら、片頬にうっすら笑いを浮かべてしまう描写が多かったと思う。
お空編でも思ったけど、徳尾さんてもしかして、会社勤めの経験ないのかしらん?
つーか、貴島さんは現役会社員でしょうに。。。
そして監修の某不動産会社の担当者、よくアレでOK出しましたね…
3.残りをまとめて羅列
・ガタガタ道を疾走してもバイクの荷物から落ちない指輪の箱:特殊な磁場が発生していたと考えると理解できなくも………いや無理か笑
・「家宝を守ってくれてありがとう!」とわざわざ日本まで御礼を言いにくる割に、箱に入れもせず剥き出しで自転車のカゴ(!)に入れて運ばれていた壺
・香港ではそれなりに現地語を話していたのに、宝来ファンドのエライじいちゃんがやって来るくだりでは、なぜかまったく広東語が理解できなくなっている春田
・うどん屋の仕事の内容を理解したからと言って地上げの役に立つとは思えんのだが…
・いくら好きでも夏祭りの季節にお揃いのセーターを手編みするだろうか……私編み物しますけど暑い時期は毛糸触りたくないですよ。
・以下略
…とまあ、ツッコもうと思えばツッコミポイントは枚挙にいとまがない。
もうめんどくさいので書かなかったところも沢山あるけど、私はスルー出来るその部分が「めっちゃ気になる」という人もいるだろう。
うーん、こうして見ると、劇場版の脚本はやっぱ、雑ですね。ハッキリ言って。
「春田と牧のその後編」というご褒美感と、役者陣の変わらぬ演技、あとは勢いで押し通した感があるけど、作品としてのクォリティはドラマ版に比べるとかなり劣る。
これが、「ヒットしたドラマの劇場版」に非常にしばしば見られる現象でして。
シナリオブックを読むと、徳尾さんが脚本を作るのに使った時間は正味三カ月。これでも時間に余裕があった方だそうな。
他にも平行して別の仕事をやりながらだから、「おっさんずラブ」だけに集中するわけにもいかない、という事情も分かる。
これだけ売れっ子だらけのキャストを全員押さえて、そのスケジュールも睨みつつ、ドラマ版の「その後」を作るのは、私たちが考える以上に至難の業なのかもしれない、とも思う。
例えば、我々民の多くが望んだような、「春田と牧の何気ない日常」「細やかな心理描写」「脇キャラもちゃんと生きる描写を入れて場面を作る」こういう条件を満たす映画を作ろうとすると、多分もっと時間と制作費が必要になるんじゃないかな。そして恐らく、それだとキャストの日程が合わない。
という事情を踏まえて、多少の瑕疵には目をつぶって劇場版の世界を楽しむ人、楽しむことは楽しんだけど「うーん…」とモヤモヤが解消できない人、ドラマ版とのあまりの落差にガッカリしてしまった人、色々と立場は分かれると思う。
それはもう、仕方がないことだと思います。
私は、クォリティの違いは感じつつも、劇場版は劇場版で、めっちゃ楽しむことが出来ました。
8月下旬から延々レビューを書き綴ってきて、こうしてツッコミたいところもあまさずツッコんで、誰よりも楽しんで味わい尽くしたという満足感も得られました。
あー、ようやくほぼ書き終わった。楽しかったなー。
ラスト、「天空不動産の奇跡」というタイトルで、総括的な記事を書いて、劇場版のレビューは終わりです。
年内にはアップすると思う。
……多分。