さて、物語冒頭から、
・同性の上司に突然告白される
・ルームシェアの同僚に突然キスされる
等々、思いもかけない様々なハプニングに見舞われては、そのたびに右往左往してきた春田。
第四話に至っても、春田の生活に「安穏」という言葉は登場しない。
そう、表題の通り、これまでよき上司にして、時に的確なアドバイスをくれる相手だと思っていたメガネの武川主任が、「第三の男」として浮上してくるからだ。
「週末、ちーちゃんと夢の国に行ってきます」
という報告まではよかったものの、そのために牧に仕事を押しつけたことが分かり、またもモンスターぶりを発揮するマロ。
「お前なあ!」
と怒る春田に対して、
「働き方革命って知ってます?」
と知ったか顔で煙に巻いた挙句、マイマイにかばわれて
「パワハラだ…」
と被害者ヅラで逃げ出す始末。
「はぁぁー!?」
という、ここでの春田の苛立ちはよく分かる。
誰だって気持ちよく仕事したいが、話の通じない相手というのは残念ながら、どこの職場にもいるもので。
その場を見ていた人が、こちらの立場を理解してくれるならまだしも、理不尽な相手の味方をしてこっちを諫めてきたりなんかしたら、イライラも倍増しちゃうよね。
「おかしいでしょ!」
と吠えずにいられない春田だが、
「今週の新規物件です」
とアッキーにファイルを差し出されると、
「あ、ありがと」
と普通に受け取る。
ここ、アッキーに八つ当たりしたりしないのはさすがだね。
温厚な春田らしい。
(なんだよ。どいつもこいつも面倒くせェッ…!!)
牧のお弁当を食べながら、憤怒の形相でパソコンに向かう春田。
とそこへ、武川主任が現れる。
背後から春田の肩を抱き、マウスを操作する手に自分の手を重ねて、
「そこの区分は木造じゃなくて鉄筋だろう」
春田はこれ、新規物件の情報を入力しようとしてたんですかね。構造の情報が一部間違っていた、と。
これまでごく普通に上司と部下として接してきたのに、突然のこのゼロ距離に戸惑う春田。
春田の顔のすぐ隣に主任の顔がある。
(なんだ…?)
という疑問を顔一杯に表しながら見つめても、テキは動じず、ニッコリと笑って
「何年使ってんだよこのソフト」
と親し気に肩を抱き続ける。
この後も、大した用事でもないのに何かと呼びつけられ、意味もなく距離を詰められる春田と武川主任の攻防が可笑しい。
中でもやっぱり、一番笑えるのがトイレのシーンじゃないですかね。
春田が席を立つと、さりげなく後をついてくる武川主任。
用を足す春田の隣に立って、気づくと春田の身体のどこかを凝視している。
カーン!という効果音と、民にはおなじみの、あのミステリアスというかユーモラスというか、コミカルなタンゴのBGM。
(春田M)――偶然にしては多すぎる連れション……
この、ナニかをじっくり見定めている政宗の心情、アテレコしようと思えばできるのですが、どう頑張ってもお下品な下ネタになっちゃうのでここではやめときます。
ハイ。
「職場での関係と思いきや突然豹変した男」として、まさしく武川さんは春田にとって「第三の男」なわけだ。
で、もちろん、我々視聴者にとっても、春田を巡る恋のバトルに参戦してきた「第三の男」でもあったわけで。
この時点では、まだ牧の元カレとも明かされず、当て馬なのかライバルなのか、ジョーカー的存在だった武川主任。
「おっさんずラブ」の成功の秘訣はなんと言ってもキャスティングの妙だと、このブログでも何度か言及しているけれど、眞島秀和という演者のお陰で、武川政宗という男、このドラマの中で実に得難い存在感を放つことになる。
春田も部長も牧も、このドラマになくてはならない存在であることは言うまでもないけれど、武川主任asまっしーも、抜きには語れない重要なキャラだ。
「なんで全角と半角が混じってんだ? おかしいよな?」
と言いながら、またしても春田の背後から回り込んでパソコンの画面を覗き込む、のみならず、なぜか春田の顔に近づいていく主任の顔。
――神様、この状態を僕は、どのように解釈したらいいのでしょうか!?――
春田の困惑は分かる。
分かるがしかし、いくらちずに
「春田ソレ、モテ期だよ!」
と言われたところで、なんで「武川さんが自分に気がある」と真に受けるのか春田?
ここまで、
「同じ職場で働く同性が訳分からん行動に及んだ」=「自分に気があった」
という図式が成り立ってきたから、3番目の男である武川主任もそうだと思っちゃったのか。
(いやー違うんじゃね?)
と心の中でツッコミながら、この物語のテンポ感を楽しんで見てましたなあ。
成功したドラマに共通しているのが、
「脇役に血が通っている」
ということだと思う。
武川主任は、この後メインの3人の傍らにいつもいて、お話にがっつり絡んでくるポジションだ。そして、時に春田と牧のラブストーリーを進める上でのかき回し役にもなる、重要な役どころだ。
つまりは、制作サイドからすると「都合がいい」コマの一つでもあるので、ともするとキャラの造形が「典型」になりがちでもある。
「あーいるいる! こういうヤツ!」
という共感は、視聴者の興味を惹きつけることが出来るが、匙加減を間違えてやり過ぎると、キャラがいかにもな「テンプレ」で成立してしまって、しらけてしまう。
眞島さんの、時に過剰なほどの情熱溢れる演技や、凄みのある流し目、なんとも言えない「楽しそうだなぁ~!」の表情etcによって、武川主任の存在感も、視聴者の心に強いインパクトを与えることになった。
まっしーありがとう!
にしても、第四話の武川主任、春田を翻弄するのが楽しくてしょうがないみたいにイキイキしてますね。笑
トイレのくだりも笑えるけど、もう一つ、蝶子さんに突き飛ばされてすってんころりんした春田の肘を無理くり消毒するくだりも可笑しい。
「俺がやってやるよ」
「イヤなのか?」
で、消毒液したたーっからのピンセットでガーゼぐりぐり!がさあ。
アレやられて、
「いたたたた!」
と悶えながら、なんで(この人もオレに気があるのか…)と思えるのか。
うーむ、はるたんの思考回路も謎と言えば謎。