おっさんずラブが好き!

ドラマ「おっさんずラブ」の細かすぎるレビューブログ。OLの深い沼にハマって当分正気に戻れません。ほぼおっさんずラブの話題しかないかもしれない。ネタはバレまくりなのでご注意を。

おっさんずラブの反対側

 今日は録画した映画を2本見た。

「チョコレートドーナツ」と「イミテーション・ゲーム」。

 チョコレートドーナツは、ゲイカップルの話だと知っていたけど、イミテーション・ゲームは始まってすぐアラン・チューリングの名が出てきて「?」てなった。

 そうか、エニグマコードの解読の話だったのね。

 というわけで、はからずも2本続けてゲイが主人公の映画を見ることになったのですが。

 

 いや、どちらもなかなかハードな映画でした。

 「おっさんずラブ」が、同性愛を否定しない、もしかしたら少し先にあるかもしれない優しい世界を描いたドラマだとしたら、この映画の2本とも、それと正反対の作品だ。

 つまり、ゲイを取り巻くヒリヒリした現実。

 

 「チョコレートドーナツ」、主人公のルディがいいんですよ。多分「オカマ」と揶揄されがちなタイプのゲイなんだけど、父性と母性が同居しているというか、育児放棄された子供であるマルコに向ける眼差しがめちゃくちゃ優しいの。メイクされた髭面が、段々美人に見えてくる。(実際綺麗な顔だと思う)

 ルディとポールのカップル&マルコで、幸せな家族を築いていたのに、あらゆるものがこの家族を壊してしまう。なぜなら二人がゲイカップルだから。

 そんな法がある? 同性のカップルというだけで、1人の不幸な子供がせっかく手にしかけた幸せを取り上げて放り出すなんて。

 でも、あったんですよ。

 誰も幸せにしない法律。誰のための、何を守るための法律なんだ。

 

 本当に怖いのは、自分を「常識人」だと思っている側だ。そういう人たちは、自らの「常識」に外れる側の人たちを裁く権利が自分にあると思い込んでいる。

 そしてこういう人、多いんですよね。。。

 

 ルディとポールがゲイカップルであるが故に「子供を育てる環境にふさわしくない」と決めつけた裁判所は、薬物中毒で刑務所に入っていた母親を早期出所させ、マルコを母親のもとに戻してしまう。

 その処置がどういう結末を呼んだのか、ポールが裁判長や弁護士ら関係者に手紙を送るんだけど、彼らが一様に痛ましそうな表情をしていたのが、救いと言えなくもないのか。

 ルディはポールのお陰で歌手として成功するし、ルディとポールの2人の関係は終わらないから、完全なバッドエンドとは言えないんだけど、でもまあ、味わいとしては「切ない」というよりは「苦い」と言った方が適切な映画でした。

 

 アラン・チューリングは、多分この人がいなかったら今日あるコンピューターの開発がもうちょっと遅くなっていたんじゃないかと言われるほど、天才の域の数学者で、色んな意味で多大な功績を残した人だ。

 それは知っていたけど、そうか、エニグマ・コードもこの人が解いたのね。忘れてたわ。

 私は数学という学問そのものには疎いけど、フェルマーの最終定理とか、それを解いちゃったワイルズとか、ポアンカレ予想を解いたペレルマンとか、数学&数学者をとりまくドラマが好きで、その流れでチューリングの名も記憶していた。

 この人は、泥棒のせいで同性愛者だとバレて、めちゃくちゃ不条理な扱いを受けた人だ。この人には「悲劇の英雄」という称号が大げさじゃないと思う。

 同性愛が犯罪だとかって、どこの野蛮な世界なの…と思うけど、つい数十年前のイギリスなんだよね。恐ろしい。。。

 

 当時暗号の最高峰と言われたナチスドイツのエニグマ・コードが解かれていくくだりは、エキサイティングかつスリリングで、面白かったです。

 映画でも描かれているように、チューリングはかなりエキセントリックというか、「変人」にカテゴライズされる人物だったようだ。「天才」レベルの頭脳の人って、どうもコミュニケーション能力までは手が回らない人が多い印象ですよね。ゲイじゃなくても生き辛かっただろうなあ。

 そこを、史実なのかどうか分からないけど、キーラ・ナイトレイが演じるジョーンがうまいこと周りとの軋轢を解消していくんだ。

 ジョーンが提案するように、理解と友情で繋がれた結婚があってもよかったんじゃないかと思うな。

「僕はゲイなんだ」

と打ち明けても

「それがどうしたの?」

とケロッとして言い返す女性なんて、そうそういないよ。

 でも不器用なチューリングは断ってしまう。

 

 生きている間は認められなかったチューリングの功績は、今ではこうして世界中の知るところとなっているし、イギリス政府が当時のチューリングの扱いについて正式に謝罪もしている。

 だけれども、この偉大な人が、投獄された挙句、「科学的去勢(女性ホルモン投与)」などという不条理な扱いを受けて、恥辱にまみれた晩年を送らざるを得なかったことは、そんなことで取り返せないと思う。

 青酸カリをしみこませたリンゴを食べて自殺したとき、チューリングは最後に何を思ったんだろうなあ、と考えてしまいますね。。。

 

 同性婚を認めるところも増えてきているし、その当時と比べると随分進歩したような気もするけれども、それは残念ながら気のせいなんだ、きっと。去年随分話題になった某議員のあの発言とかね。あれ、昭和世代のおじいちゃん議員とかじゃなく、女性の発言だから余計驚く。

 

 「おっさんずラブ」がここまでヒットしたところを見ると、この社会もまだまだ捨てたもんじゃねーな!と嬉しくなる。

 願わくば、「おっさんずラブ」が示してくれた優しい世界が、ごくごく当たり前で「普通」と受け取られる社会が、早く実現してくれますように。