RICE!
それは突然やってきた。
仕事中、足元に落ちたファイルを取ろうとしたとき、少しずれた位置にあった低い棚に手の小指が引っかかった。
ぐにっと、手の甲側に折り曲げられる形になったわけですね。ほぼ90度。しかも結構強い勢いで。
「!!」
痛いなんてもんじゃない、衝撃で声も出せず、思わず身体をくの時に曲げた。
「え、何何何? ど、どうした!? お腹? めまい?」
急に私がそんな体勢をとったもんだから原因が分からず、焦った声を出す上司。
「……いえ、小指です……小指をやられました……」
状況を説明すると、
「うわ、いたたたた!」
一緒になって痛がってくれた。笑
怪我はいつも突然やってくるよなあ…と思ったものの、感慨にふけっている場合じゃない。
負傷した小指の様子を観察する。めちゃくちゃ痛いし、指のつけねから赤くなって腫れてきた。
突き指か、もしくは捻挫した状態であろうと思われた。
(! 今こそ、アレだ。RICEだ!!)
RICEとは
R…Rest:安静
I…Ice:冷却
C…Complession:圧迫
E…Elevation:挙上
の頭文字を取った言葉で、こうした怪我の応急処置の基本のことだ。
スポーツ界では常識らしいが、2年前に足首を捻挫したとき、私はこの処置を取らなかった。知らなかったのもあるけど、捻挫を軽く見ていたんですよね。(ちょっと痛いけどまあそのうち治るだろう)と思っていた。
ところがどっこい、痛い足を引きずって1時間かけて電車通勤し、仕事も普通に続けているうち怪我の症状は悪化し、ついに肉離れを起こして、2カ月間にも及ぶ杖生活を余儀なくされてしまった。あのときは本当に大変でした。
後からネットで検索し、このRICE処置を行っていれば…と後悔したが、後の祭り。
で、今度こそ!と閃き、上司の助けを借りて、迅速に応急処置に入った。
まずは患部の圧迫とアイシングだ。
アイシングスプレーをシュー!!とかけた後、固定するものを探したが、テーピング用のメディカルテープがない。
「ガムテープじゃダメかな?」
「養生テープ貼ってみます」
右手のことゆえ、自分ではうまく巻けない。上司がきっちりと巻いてくれた。
その上から保冷剤で冷却。
たまたま、ミーティング中の事故だった。
「じゃあ、このまま手を挙げておきます」
頭上に右手を掲げた状態で上司に言うと、
「なんか、挙手してるのにいつまでも当ててもらえない小学生みたいやな」
と笑いながら許可してくれた。
30分経つ頃には、激痛はおさまり、赤みも引いてきた。そろそろとテープを取ってみると、腫れてもいないようだ。
しかし念のため圧迫と冷却はそのまま続けた。
3時間くらい経って、様子を見てみると、ほぼ「治った」と呼べる状態に。
最初はペンで字を書くのもきつかった右手が、普通に作業できるようになっていた。
急性期に正しく処置すれば、これだけ怪我の悪化を防ぐことが出来るんですね。実践してみて、その効果に改めて驚き、感じ入った。コレを発見してくれたドクター、凄い。ありがとう。
そして2年前、怪我して大変だったけど、後知恵でRICE処置を学んでおいてよかった。
あの怪我の体験が無駄にならなかったな、と、初めて思えて、そこが私の中では非常な満足感に繋がったのでした。
あと一つ。前回と違ったのは、今の職場の上司がいい人で、今回のような場合、ミーティングを中断して怪我の応急処置に時間を割くことを当然、と思ってくれていることだ。
前の職場のクソ上司は、私が足を引きずって通勤していてもまったく意に介さない人だった。
というかそもそも仕事中の怪我だったのに、病院に行ったという報告に対して(病院に行ったのも1週間後だったけど)、
「まさか労災使ってないやろうな」
と第一声がこれだもの。人間性が知れるというものだ。
足が痛くて動けず、SOSの電話をしたときも超迷惑そうだった。
(あ、この会社、あかんな)
と見切りをつけて、さっさと職場替えをしたことも、今回つくづく(あのときの判断は正しかったな)と思える点でした。
自分の備えも大事だけど、環境も大事。
怪我は誰にとっても、いつやってくるか分からない。
日頃の準備が必要だ、と思わされた出来事でした。