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ドラマ「おっさんずラブ」の細かすぎるレビューブログ。OLの深い沼にハマって当分正気に戻れません。ほぼおっさんずラブの話題しかないかもしれない。ネタはバレまくりなのでご注意を。

「バクマン。」感想:ジャンプ的ヒットの法則解説漫画

 今日、本当にたまたま「バクマン。」という漫画を読んだ。登録しているコミックサイトで無料だったので。

 単体でもちろん面白い作品として楽しめたんだけど、「鬼滅」にハマった後だと、余計に(なるほどー…!)と腑に落ちることが多かった。

 有名作品だし、多分同じことはとっくに漫画ファンの誰かが見つけて、指摘しているだろうけれども、自分の中での発見ということで書く。



 ある日、少年二人が出会ってプロの漫画家を目指すというところから物語は始まる。

 …というとあまりにもざっくりで雑なんだけど、まあ知ってる人は知ってるだろうし、そこが大事なところじゃないから省略。

 頭がよく、文才に恵まれた高木秋人は、大量の漫画を読み込んでヒットの法則を見つけ出す。

 で、この漫画、「漫画を作るとはこういうこと」と、ジャンプの編集部を舞台にかなりリアルに作り込んでくれているので、これからプロ漫画家を目指す若い人にとっても指南書になるくらいなクォリティなんだけど、ここで語られる「法則」を、「鬼滅」はすべて満たしているのだった。



「ヒット作に共通するのは、刀だ」

と高木は看破する。

「ONE PIECE」、「BLEACH」、「銀魂」、「NARUTO」…とヒット作が挙げられていて、私もそれらは知っている。だけど、「刀」というアイテムが共通項だとは気づかなかった。

「……! 確かに!」

と、膝を打つ思いであった。




 上に挙げた作品は、ジャンプの王道・THE☆バトル漫画でもある。

 だから、持ち込みしてくる新人は皆バトル漫画を描いてくる。王道で当てるのは狭き門となっており、主人公である真城&高木のコンビの作風には合わないから、敢えて王道を外した方向で掲載を勝ち取ろう、ともちかける担当編集。

 掲載されることは大事なんだけど、「当たる」のはやはり王道のバトル漫画であることも事実。

 そこのジレンマで悩むことになる。




・主人公が魅力的でキャラが立っている

・バトルに正当な理由がある

・敵キャラが主人公と同等かそれ以上

・可愛いヒロインがいるとなおよい

・シリアスとギャグのバランスが秀逸



バクマン。」で説かれるヒットの法則、「鬼滅の刃」にはことごとく当てはまっている。

 主人公の炭治郎は、熱血漢で正義漢、まっすぐで心優しい少年漫画ヒーローとして申し分のないキャラクターだ。

 だけど、まっすぐすぎて時々空気を読まないところとか、天然なところとか、適度に抜けていて、絶妙のタイミングでギャグが来る。

 貧しくとも家族で幸せに暮らしていたのに、ある日突然、その幸せを奪われた。「家族を惨殺された」とあれば、炭治郎が鬼を殺そうと鍛錬を積み、闘いの場に出るのに、これ以上正当な理由はない。

 でさあ、「鬼滅」の成功のカギって、禰豆子のキャラだと思うんですよね。これも多分2万番煎じくらいだと思うんで、あまり大きな声で今更言えないですけど。

 小さくって携帯できちゃうんですよ。そして何より、喋らないんですよ。これ大事。弱き者として守られる存在でありつつ、鬼だからいざというときは箱から飛び出て戦線に加わる。

 で、「妹」キャラ。

 最強。

 

 

 ここまで挙げた点に加えて、「努力・友情・勝利」というジャンプ漫画の三大要素も漏れなく盛り込んでいるのが何気に凄い。

 炭治郎は最初から強いわけじゃない。努力によって呼吸を習得し、強い鬼を倒す力をつけていく。

 善逸、伊之助も、最初は我が強く、バラバラの方向を向いていたのが、徐々に仲間としての意識が芽生え、友情が育まれていく。

「無限列車」で腹に怪我を負った炭治郎を「大丈夫か!」と伊之助が心配するくだりは、もうそれだけで涙が出た。

 

 

「当たる」と大きいのが漫画の世界。

 多分今も、デビューを夢見て漫画を描き続けている人たちが大勢いる。

 どうすればヒットするか、知恵を巡らし、過去のヒット作を研究して、計算し尽くして話を作っているはずだ。

 だけど、そんな中、本当に「当たる」のはほんの一握り。で、どれが当たるかは蓋を開けてみないと分からない。

鬼滅の刃」のメガヒットは、社会に一大ムーブメントを巻き起こし、コロナに疲れたこの国の大人と子供を元気にしてくれたと思う。

 よく作り込まれた作品だから、分析のし甲斐もあるというものだけど、いわゆる「ヒットの法則」はきっちりと踏襲していた、という話。

 

 

バクマン。」、まだ最後まで読んでないのでアレですが、書くこと・作ることに興味があり、「鬼滅」が好きな人で、まだ読んだことがないという人がいれば、是非是非おすすめです。

 二重三重の意味で楽しめる。

 大場つぐみ小畑健デスノートコンビの引き出しの多さにも感心。