VIVANTな夏だった。
今年の夏はめちゃくちゃに暑かった。
「猛暑」というだけでは足りない、「酷暑」と呼ぶにふさわしい苛烈な暑さだった。
元は暑さに弱く、田舎から出てきた当初、大阪のうだるような夏の暑さにあてられて、毎年のようにバテていたが、ン十年住むうちにすっかり慣れたらしい。
「好きな季節は?」と聞かれて「夏」とは答えないけど、夏にしか味わえないよさが分かるようになった。
夏の強い陽射しは、世界の色彩を鮮やかにする。
道路に落ちた街路樹の影がくっきりと黒く、つんざくような蝉時雨のうるささに辟易するようになると、(ああ、今年も夏が来たなあ)と感じる。
今年の夏はとりわけビビッドだった。
それは「VIVANT」というドラマのお陰でもある。
「おっさんずラブ」以来、こんなにも(次は一体どうなるの…!?)と展開が気になり、次週を待ちわびたドラマは久しぶりだったかもしれん。
忙しい現代人だからして、見たいテレビ番組はほぼ録画予約するのが当たり前なんだけど、めちゃくちゃ面白い!と思うと、やはりリアルタイムで見たいもんなんですよ。
毎週、日曜日の夜9時はテレビの前に正座待機でした。
放送が済んでしばらく経ったことだし、全体の感想を…とこないだからトライしてるんだけど、なかなかこう、思った感じにまとまらない。
今日ついに諦めた。あの壮大なスケールと、複雑に張り巡らされた伏線を見事に回収しつつ、謎が謎を呼んで、「えっ!! そうなるの!?」と常に視聴者を驚かせてきたドラマ、気軽に総括しようと考えるのが土台無理ゲーだった。
かなり評判になったので、これから見ようという人もいるかもしれん。
未視聴で気になる方にはもう
「ともかく見て!!」
としか。
そもそも私も、最初から見ていたわけじゃなくて、知人のおすすめで見始めたのだった。
「今からでも見て損はないから、見て!」
と言われて、この人がここまで言うのなら…とTverで見てみて、見事にハマった。
人からのお勧めには乗ってみることにしているんだけど、やっぱり、人の言うことは聞いとくもんですね。
そんで、自分がハマったので、私も周りに勧めて、7~8人は見始めたと思う。
観た人全員ハマっていた。
凄いドラマでした。
以下、ネタバレも含む雑感。
物語の中心となるノゴーン・ベキの実家が奥出雲というところが、島根にルーツを持つ私のツボにハマった。
実際、島根にはたたら製鉄で財を成した御三家というのが実在して、モデルとなった櫻井家の住宅は私も訪れたことがある。
刀剣の材料となる玉鋼を作ることが出来るのは、現在島根県だけで、それもたたら製鉄の技術を復活させて今日まで繋いできた経緯があるんだけど、それだけで1本映画が撮れそうな物語があるので、また次の機会に。
ちょいちょい島根の風景が出てくるのも見ていて楽しかった。
乃木と山本が会話しているシーン、東京のはずなんだけど、バックに松江城が映っていて、
「え、あれ? 県庁近くのあそこじゃん!」
てビックリしたこともある。笑
敵と味方がくるくる入れ替わるのもこのドラマの見どころだった。
「次、誰が裏切るのか!?」
というハラハラドキドキと期待で溢れて、ドラマのエンディングでいつも
「ええっそうきたかー!!」
となるのがお約束。SNSで考察班の考察が飛び交って、それを見るのも楽しみだった。
だけど、裏切者であって欲しくない人は最後まで味方だったのもよかった。
薫先生とドラムが裏切者じゃなくてよかったよ……
あとはやっぱりチンギスだね!
こういうスパイものって、敵が強力であればあるほど盛り上がるけど、前半のチンギスの「敵」ぶりは圧巻であった。決死の覚悟で死の砂漠を渡りきった先に、悪魔の形相のチンギスが待ち構えていたときにはもう、腹の底から憎たらしかったもん。(笑)
けどこれがさ、乃木が別班と知れて、第二部とも言うべき後半が始まったのち、野崎さんと手を組むんだよね。
野崎さん、乃木とのバディ感もよかったけど、チンギスとの、慣れ合わないけれどもお互いの実力を認め合った共闘ぶりも印象的であった。
ラスト、バルカを去るベキに深々と叩頭するシーンはぐっと胸に来るものがありました。
冒頭の砂漠のシーンから驚いた。テレビの世界がどんどん「いかに金をかけずに番組を作るか」という方向に注力しているのがあからさまな昨今、
(お金かけてんな~)
と毎回感心して見ていた。
後から聞いた裏話だと、一話一億だってさ!! やっぱりね!!
いやーでも、主役級のキャストを惜しみなく投入して、エキストラもアクションも破格のスケールのドラマって、ゴージャスですよね。見ごたえあるはずだわ。
久しぶりに「本物」の上質のドラマを見た気がしました。
よく出来たフィクションは本当に、我々の心を癒してくれる。
「VIVANT」のお陰で、愉快でビビッドな夏を過ごせた。
続編があるようで、それも楽しみ。