画面に現れる石畳。そして、白と黒、2人分の靴先。
扉が開いて、ここはチャペルであることが分かる。沸き起こる拍手と歓声。
バージンロードを歩くのは、白いタキシードに身を包んだ春田と、黒い礼服の黒澤武蔵だ。取り囲んで祝福の声を投げかけるのは、懐かしい面々。麻呂と蝶子さん、武川さんにちず、鉄平兄に、マイマイもいる。
眩しい光をバックに、待ち受けるのは牧だ。そう、これは結婚式。今から春田と牧、2人で、これから一生を共に過ごすことを誓い合う儀式の場面。
神妙な面持ちで春田と寄り添って歩いてきた武蔵、新郎である春田の手を取って、牧へと手渡………さなかった。
なぜかぐいーっと引っ張って、自分の方へと引き戻してしまう。
「…へっ?」
「イヤだ」
春田の両腕をつかんで、頭を横に振る武蔵。
「イヤだ。イーヤーだ」
「いや、ぶちょぶちょ部長……イヤとかじゃなくて」
「イーヤーダー!!」
駄々をこねる武蔵、険しい表情になった牧にべりっと引き剥がされてしまう。
牧と春田、2人並んで、
「では誓いのキスを…」
と促されて、気を取り直してキスを交わそうとしたところへ、
「ちょっと待ったぁー!!」
大音声で呼ばわる武蔵。
さっきのお返しとばかり牧の身体を引っつかんで春田から引き剥がし、壁にどーん!とぶつけただけでは飽き足らず、がつん!と頭突きまでお見舞いしてしまった!
「部長、何してんすか!?」
春田が慌てて部長を止めようとするも、体勢を立て直した牧が部長の後頭部から殴りかかる。その手には脱いだ靴。式用の底が固いヤツだから、あれの裏で殴られたら痛いと思う。
もうここからは大騒ぎ。牧も武蔵も止まらないし、その様子を見てエキサイトしたのか、武川さんが
「牧ィー!!」
と叫んで参戦するわ、もうしっちゃかめっちゃかの阿鼻叫喚。春田を挟んで戦闘モードがおさまらない牧と武蔵を何とか引き離して、
「2人ともー!! 神様の前で喧嘩するの、やめてくださーーーーい!!」
割れんばかりの大声で叫んだ春田、その面前で赤い風船がばちん!と割れて、
「……ファッ!?」
目覚めた春田、がバッと起き上がって、
(えええーこれが初夢ェ!? やーだぁ~!!!)
頭を抱えてごろんごろんするという、まあ、ありがちと言えば非常にありがちな夢オチなんだけれども、この冒頭で、「おっさんずラブ」制作チームの、
「皆さま、お待たせしました! チーム『おっさんずラブ』、帰って参りました!」
という挨拶が、しっかりファンの心に伝わる場面になっている。
ここまで3分足らず。この短い時間で、
(あー、『おっさんずラブ』だ! 私たちが夢中になった、2018年の『おっさんずラブ』の続きが始まったー!!)
と、実感することが出来たのは、私だけではないはずだ。
そう、「おっさんずラブ」って、
「春田を巡って牧と武蔵がわちゃわちゃするドラマ」
なんですよね。Season1では第二話、屋上で手作り弁当(重箱!)を春田に差し出す武蔵と、そこへ現れた牧とが
「どっちが春田の悪いところを10個言えるか!?」
という熱いバトルを繰り広げたのだった。
それと全く一緒! リターンズのこれは春田の夢なんだけど、でも、「おっさんずラブ」というドラマの骨格をよく表している。
だから、牧と武蔵の中の人も本気だ。笑 「徹子の部屋」で座長が遣都を評して
「チワワがドーベルマンになりました」
て言ってたのはこの場面のことだったんだな! Season1の屋上バトルはキャットファイトだったもんね。けど今回は確かに、キャットじゃないわ。バトルモードのギアが1段上がっとる。
「最初に鋼太郎さんが頭突きしてきて…」
と遣都が言っていたのも分かった。そうね、武蔵が頭突きしてるよ。先に。だからガッと遣都のスイッチが入っちゃったのね。そら、靴も脱ぎますわ。仲介役のはるたんは大変だけど。
これから始まる「リターンズ」のオープニングとして、チーム一丸となって本気で撮ったんだな、ということがよく分かる。
ここから先の場面も、引き続き制作陣からの「挨拶」が詰まっている。
春田が起き上がると、カメラが引いて、部屋の全景が映される。民にはおなじみのあの部屋じゃない。でも天空不動産のカレンダーかかってるし、何か見たことあるグッズがチラホラ。
積んである段ボールには「凌太私物」の文字。そして春田と牧の記念写真。カメラが映したのは一瞬、コンマ何秒の世界だけど、もうアドレナリンがドバドバ出てるから、動体視力が研ぎ澄まされている。ヲタの集中力舐めんな。
カレンダーには「牧8時成田着」の赤い文字。
もう、この数秒、2秒くらいな間で、ここが
(牧がシンガポールから帰ってきて春田と一緒に住む家だ!)
という情報を、全OL民がキャッチしたことでしょう。
慌てて家を飛び出す春田。
そしてナレーション。
「春田創一39歳。新年早々、寝坊ですー!」
バックに流れだすお馴染みのBGM。
走る春田を捉えたカメラが、徐々に視点を上げていく。
映し出される風景は、Season1とは違っている。外界で5年という月日が流れたのと同じように、「おっさんずラブ」の劇中でも時間は流れていて、変化したものもある。
だけど、天空不動産の「おっさんずラブ」の世界は変わりない。
あの日、牧がシンガポールに行って、2人揃って指輪を嵌めた手の写真をアップした日、多くの民の心の中で、「おっさんずラブ」世界の時計は止まってしまった。
けれど、5年の時を経て、時計はまた時を刻み始めた。
春田がリュックをしょって走る姿を見ながら、
(帰ってきた……『おっさんずラブ』が帰ってきた……)
としみじみ感じて、泣けてきた。
まだ始まって5分も経ってないのに。笑
ですので、この記事のサブタイトルが(まんまやんけ)と思われた方、そういう、得も言われぬ感慨が込められたサブタイトルなのだということで、ご理解をいただければ。
ということで、開始5分にもう2500字以上費やしてしまったので、いったん切りたいと思います。
時間も体力もあるからサクサク続きを書くつもりだけど、さて、明日の第二話放送までに間に合うだろうか(非常に疑問)。
あああ~~でも久しぶりのこの作業、楽しいーー!!(悶えております)
出来れば明日までに全部書く! 頑張る!!