きっかけは、こないだNHKでやった「おげんさん」の再放送だった。
「おげんさん」、いいですよね。私は好きです。何がいいかって、出ている人が全員「本物」なところ。本当に音楽を愛していて、それを共有したいと心の底から思っているのが滲み出ている。
その中で、お父さん役の高畑充希ちゃんが紹介していたグレイテスト・ショーマンのワークショップの映像。
あれに心が震えた。
子供の頃から、歌も踊りも、ミュージカル映画も好きだった。あ、見る方専門ね。神様は残念ながら、私に歌の才は与えてくれなかったようだ。でも、よい音楽と出逢って感動できる感性はプレゼントしてくれた。
今でも覚えているのが、たまたまラジオで聴いたラジオドラマ。アメリカの歌手ドリス・デイの自伝的なミュージカルを、紹介する番組だったのかなあ? 圧倒的な歌声がどれだけ人の心を動かすか、理屈と関係なしに琴線を打ち鳴らすか、子供心に衝撃を受けた。あと、本職の俳優の演技の凄さね。ラジオだから当然、こちらには声しか届かない。なのに、ドリスと父親の関係性とか、話しているときの表情が見ているように脳裏に浮かぶし、映像を見ていたかのように今でも記憶に残っている。父親役が三宅裕司で、バラエティの人として認識していた彼の、役者としての力量を感じて、子供心に
「この人スゴイ…!」
と感動した。
カセットテープに録音して、何度も何度も、それこそ擦り切れるまで聞いたものでした。
だから、「ミュージカル映画」と聞くと、とりあえず興味は持つんですね。
でも、「良質なミュージカル映画」と出逢える確率は、そんなに高くない。世間ではえらく評判のよかった「La・La・Land」も私にはサッパリだった。
「グレイテスト・ショーマン」も、公開当初(あ、面白そうだな)と思った記憶はあるけど、映画館に足を運ぶまでには至らなかった。
高畑充希ちゃんのお陰で、映画本編を見てみる気になった。
で、鑑賞。
感想は、
面白かった!!
これだよ。こういうミュージカル映画が観たかったの私は!!!
まーともかく演出が何しろ趣向を凝らされていて、盛り上げる場面ではちゃんと盛り上げる。計算され尽くしていて、緻密なんだけど、歌唱も役者の動きもパワフルで、なんなら「プリミティブ」と言っていいくらい、力強さに溢れている。
圧巻のパフォーマンスでした。
色んな人が出てくる。「色んな」の中身が本当に多種多様なんだな。
で、最初はちょっと、人と外見が違う人への差別心とは…とか小難しく考えそうになるんだけど、すぐそれがばかばかしくなる。
人間て、もう本当に色んな種類の人がいて、それが普通なんだと。
差別のなんのなんじゃかんじゃ理屈をつけてみても、闇鍋のごった煮であることには変わりないんだと。
それは、一人の人間の中身にも同じことが言える。
絶望に閉ざされて生きていた人に希望の光を与える聖性と、女王陛下に謁見を許されて思いあがった挙句仲間を足蹴にする俗性とが、一人の人間の中に矛盾なく同居するのが、人という生き物の面白さだ。
見終わると、
「なんか色々あるけど、明日も頑張ろうかな!」
とポジティブになれる。
それと同時に、
「しんどいときもあるけど、生きるのって悪くないかもな」
という気にもなれる。
全然違うけど、「プリシラ」を見終わった後の爽快感をちょっと思い出す感じ。
だから、よく出来たミュージカル映画が大好きなんだけど、邦画では難しいかもしれんな、という点が残念ではある。
おげんさん達も指摘していた通り、日本語の言葉としての構造上の問題もあるし、「日常でいきなり歌い出すマインドではない」という、民族性の問題でもある。
おっさんずラブのちょっと前に上映されていた三吉彩花ちゃんが歌って踊る映画、面白いみたいだから、機会があったら見てみようかな。
いやー、いい映画って、やっぱりいいですね。
未見の方、おススメです。