おっさんずラブが好き!

ドラマ「おっさんずラブ」の細かすぎるレビューブログ。OLの深い沼にハマって当分正気に戻れません。ほぼおっさんずラブの話題しかないかもしれない。ネタはバレまくりなのでご注意を。

おっさんずラブ第三話③ はるたんダンス!

 そそくさとその場から離れようとする春田を引き留めたのは、マロ・マイマイ・武川主任の営業部脇役トリオ。何気に営業成績優秀な主軸トリオでもある。

 マロががしっと春田の腕を捕まえてるのが面白いですね。全然先輩と思ってないの丸分かりやーん。

 え、えっ?と戸惑う春田を囲んで、

「どうだった?」

「へ?」

「…どうだった」

「何がですか?」

「案内してきたんでしょ?物件」

 マイマイと武川主任が二人して詰め寄る。

 そりゃ、営業部を率いる部長の奥さんが、夫のいない間にやってきて、あろうことか部屋探しを依頼するって、只事じゃないですもんね。賃貸ならまだしも。

 蝶子さんとしては、職場に夫の不倫相手がいるのではないかという疑念を抱いて、探りに来ているわけなので、それっぽい口実があればなんでもよかったんだろうけど、こうやって自分が来ることで周囲から黒澤家の家庭の事情について詮索される餌を与えることになることまでは頭が回らなかったんだな。

 うっかりにも程があると思いますが、こういう自分に都合のいい考え方、割と女性はよくするような気がします。

 自分の行動が思っていた以上に反響を呼び、時には波紋となって思わぬところまで影響が及んでいく…なんてこと、ありますね。実際。




 春田の方はと言えば、事情がまるで分かっていないので、詰め寄られても鳩が豆鉄砲を食らったようにビックリしている。その驚きが、ぴょこんと浮いたままの右足に現れていますね。可愛い(*´ω`)。

 広めの1LDKをいくつか回ったと聞き、さらに身を乗り出すマイマイ

「どんな様子だった?」

「へ? いや…さっぱりした、イイ感じの人でしたよ」

 うんうん、そこは合ってる。接した時間はわずかでも、短いやり取りで意外とその人の人となりって分かるものです。

 ……が、

「あ…まあ、いかにも仕事頑張りすぎちゃって、結婚するタイミングを逃したご婦人、ていう感じでしたけど」

 こっちがいかんかった。笑 一人暮らしの部屋を探しているアラフィフ女性ということで、春田なりに(どういう事情だ?)と色々推理を巡らせたんだろうけれども、まるで当たっていない。

 確かに蝶子さん、所帯じみていないし、自立してやってきた感があるけれどもね。

 素直な春田、蝶子さんが話した設定をそのまま受け取ったのだね。

「いやいや。奥さんだから」

「……ハイ?」

 いまいち分かっていない春田に、主任がかぶせる。

「部長の奥さん!」

 

(オクサン? オクサンて奥さん? 誰が誰の? ―――え、まさか、あの人……が、黒澤部長の……奥、さん…?)

 

 と、春田の脳裏ではこのような思考が一瞬で巡ったのではないかと思われます。

 ようやくことが呑み込めた春田、

「…………えええッ!」

 と眼をむいて声をあげる。



 さてここからが、座長・田中圭の真骨頂ですよ、皆さん。

「周りに振り回される」のが春田のキャラクターの役割なので、このドラマの7話という時間の中で、何度も何度も混乱の極みに突き落とされるんだけど、「驚く」「事態を呑み込む」「困り果てる」という一連の演技が、どれもいちいち新鮮で面白い。

 しかも、私このレビュー書くために多分30回以上は繰り返して見てるし、連ドラ放映時から録画をハードリピートしてること考えても、もしかするともう500回くらい見てるかもしれないけど、座長の困惑する演技、「見飽きた」と思ったことが一度もない。

 ていうかね、ここをレビューしようと思って、ストップしてはちょっと戻って…て見てるんですけど、見るたびに毎度笑っちゃうの。面白いから。

 これ、すごない…?

 ホント、こんな役者がなぜ「おっさんずラブ」まで埋もれてたんだろう。

 世間の眼は節穴でしたね。

 私もそう。

 節穴ですみませんでした座長…!…と、今さらだけど全力で謝りたい。




 驚くと、「部長」という簡単な名詞が言えなくなる春田。

「ぶ、ぶぶぶ……部長のッ…」

 武蔵に告白されたときみたいになってます。ついさっきまで一般客だと思ってご案内していたお客様が、まさかの武蔵関係者。そりゃ動揺するよね。

 そこへかぶせるのが、今度は舞香さんだ。

「離婚の素振り、あった?」

「へっ!?」

 そう言われて、否応なく春田の脳裏にある場面がフラッシュバックする。

「妻とは離婚の話をしてきた。だから、もう少しだけ! もう少しだけ時間をくれ!」

 そう、屋上でお弁当アタックされていたときのことですね。

 もちろん春田は武蔵の求愛に「応」とは答えていないんだけど、一人で突っ走っている部長、確かに「離婚」の二文字を口にしていた。

(オ……オレや……)

 騒動の当事者が自分であると、ようやく呑み込めた春田。




 ますますヒートアップしていく天空不動産営業部トリオ。

「やっぱり原因は、部長の女性問題か」

 武川主任の眉間にはくっきりと皺が刻まれていて、事を深刻に捉えている様子が伝わってくる。

 比べると、

「それってもしかして不倫!?」

 と言う舞香さんは、身近に現れたスキャンダルにちょっとはしゃいでいる風だし、

「ドロドロWhooo!」

 麻呂に至っては完全に面白がってる。

 しかし、春田は気が気でない。誰かが何か言うたび、眼をむいたままそっちの方を向いて、

「だとしたら相手は誰だよ!」

こぶしを自分の膝に振り下ろす武川さんの剣幕にびくっと飛び上がりそうになる。

 この、視線うろうろ、身体はソワソワ、落ち着きなくまごまごしている春田の困る仕草がめちゃめちゃおかしくて、何度見ても笑いを誘われる。

「まさか、この営業所の中にいたりして」

 オフィスの中に視線を巡らせて、ニヤリと笑う麻呂。この時点では麻呂は全然関係ないから、今この瞬間、一番楽しんでるよね。笑

 しかし、麻呂のこの台詞で、またしても春田の脳裏にある場面がフラッシュバックする。



 マンション高層階のテラスで、下界を見下ろしながら交わされた会話。

「キミの営業所にハルカさんて子いる?」

「私どもの営業所にはいないですが…」

 「ハルカ」という名を持つ社員はいないので、素朴にそう答えた春田だったが、蝶子さんが部長の妻と分かった今となっては、彼女が一体誰を探しているのか、分かりたくなくても分かってしまった。

 

 (オレやん…!)(白目)



「ちなみに私ではありませ」

「ともかく春田!(聞いてない)くれぐれもヘタな真似するなよ」

 マイマイの台詞をまるで聞いてない武川主任のぶった切り方も面白かったですが、武川さん、割と人の話聞いてないよね。笑

 そこで春田の事情聴取を終えた3人、気が済んだらしく、さっさと散会する。



 さあ、後に残された春田。

・直属の上司に言い寄られている

 というだけでも一杯一杯なのに、

・その上司が自分のために離婚しようとしている

・その妻が自分を探して営業所に乗り込んできた

 と、さらにややこしい事態が自分の周りを取り囲んでいることに気づいてしまった。

 どうする春田……!?

 

 

 ……となるんですが、まあこういうとき、とりあえず躍るんですよね。春田は。



(マジか)

(部長の奥さんの家を一緒に探すって……え、え?)

(オレ離婚の後押しをすることになっちゃうの?)

 覚束ない足取りでぐるぐる回る春田。

(え、え、ええー?)

 そう、はるたんが困ったときのこのダンス、BGMの曲の名も「HARU TAN TAN」。

 春田という男の属性をよく表してますね。




 正統派の美形は、頬骨から下がしゅっと細く、逆三角形になっていて、口元がひっこんでいる顔が多い。

 座長はその美形の黄金比ではないんだけど、口もとに「隙」があって、表情によっては見る人をドキッとさせる色気の元にもなっている。

 で、こういうコミカルなパートでは、口をぽかんと開けた困り顔が最高に間抜けで可笑しい。

「ちゃんとダンスやっていればよかった」

といつぞやのバラエティ番組で言ってたけど、このリズム感を感じさせない動きが、んもう絶妙に「春田!」なんですよね。

 俳優・田中圭の色んな要素が「春田創一」を作り上げる元になっていることが随所で感じ取れて面白い。



 続く!