おっさんずラブが好き!

ドラマ「おっさんずラブ」の細かすぎるレビューブログ。OLの深い沼にハマって当分正気に戻れません。ほぼおっさんずラブの話題しかないかもしれない。ネタはバレまくりなのでご注意を。

「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」第七話感想

 テレ東さんはドラマの作りが丁寧だねえ。

 第七話、せつなくもときめきがぎゅっと詰まった回でした。

 これもまた名作の予感。



 恋の相手である安達と接近出来て、舞い上がっていた黒沢だが、思いが育ちすぎ、胸に秘めておくには大きくなりすぎて、ついに

「これ以上、一緒にいるのがしんどいんだ」

と本音を零してしまう。

 なぜかと言うと、

「俺、お前のことが好きなんだ」

と。

 それはまっすぐで、何の気取りも計算もない、心からの告白。




 その後、黒沢のターン。なぜ同期の安達に惹かれるようになったのか、経緯が丁寧に描かれる。

 顔の美しい人は、そうでない人に比べて人生随分得をしているそうで、どこだかが出した信頼できるデータもあるそうな。

 とはいえ、やはり「容姿が美しい」というだけで被る損もある、と以前から思っていた。

 人は見た目が9割と言われるが、その見た目が完全無欠だと、なかなか中身まで見てもらえない。

「得をしている」と自覚して、だからこそ仕事も人間関係も完璧にこなそうと頑張っていたのに、「イケメン枠」としてしか扱ってもらえない……やりきれないですね。

 何やっても「ただしイケメンに限る」と許してもらえることもあるけど、逆に何をやっても「まあイケメンだからな」で流されてしまって、イラっとすることも多々あるだろう。

 しかし、そんなことを愚痴ろうものなら、それこそ「贅沢な悩み」と言われてしまうのも分かり切っているから、誰にも言えない。

 これはこれで、非常にキツイものがある。



 自分を見れば瞳がハートマークになってしまう女性よりも、絶対にそんな眼で自分を見ることがない同性の安達の方が、安らぎを感じる対象になるのも分かる。

 よく寝癖がついている無頓着さ、一見もさっとしてて地味なんだけど、仕事は丁寧で、人がよくて、他には気づかれにくい可愛らしさもあって……見ているうちに心惹かれていく過程が、非常に説得力があってよかった。

 これなら、黒沢が元々ゲイなのかとか、そういう部分が気にならない。

「好きになった相手が同性だった」

という事実に必然性がある。




 一方の安達くんにしても、黒沢が自分に抱いている想いを読み取って、彼が口に出さない分も既に受け取ってしまっているわけだ。

 ひとつひとつ積み重なったそれらの想いが、安達の中に、はっきりとした何かを形づくっていくのもよく分かる。

 



「好きだ」

と告白した後、(いつかは終わらせないといけない想いなのは分かっていたじゃないか)と自分に言い聞かせる黒澤がせつない。

 実際同性の同期から告白されたところで、その気持ちを受け取ってもらえる確率はとても低いだろう。

 ドラマみたいに、相手が自分のことを好きだと分かっていても、そして黒澤くんが心もイケメンで優しいナイスガイだと分かっていても、友情以上の感情を抱けないことだってままある。

 人生に消極的で臆病だった安達くんが、自分の心の中に芽生えたものを「恋だ」と自覚することが出来、(この関係を失うのは嫌だ)と、一歩踏み出す勇気を持ててよかった。

「好きだ」

と安達に言われて、

「ホントに…いいの?」

と、信じられないのと、夢みたいなのと、ごちゃまぜになった表情で笑う黒沢くんの笑顔がすがすがしく、ドラマながら

(よかったね…!)

と心から祝福してしまった。



(オレは、こいつの心に触れるために、魔法使いになったのかもしれない)



 と、「30歳まで童貞だったので魔法使いになった」という設定も綺麗に回収してました。

 



 まあ、細かいことを言うなら、

・「触った人の心が読める」のは「魔法使い」というよりは「エスパー」なんじゃないかな……

とか、

・そんなこと言ったら多分今30歳を過ぎた童貞は山のようにいるだろうから、周り中魔法使いだらけなんじゃないかな……

とか、

・じゃあ30歳を過ぎた処女は妖精にでもなるのかな……

とか、色々ツッコミたいことはあるんですけど、この際置いておきましょう。




 ところで私は自他ともに認める酒好きですが、

「酒席で他人に酒を強要する」

という行為は大嫌いです。

 それを平気でやる人も嫌い。絶対に一緒に呑まない。というか、そんなやつは酒を飲む資格がないとマジで思う。

 これもねえ、ひと昔前は当たり前に見られた光景だったんですよね。前世紀の遺物としてさっさと絶滅すればいいのに。

 と、怒りを感じつつ、飲めない安達に代わって黒沢が

「僕が代わりに飲みますよ」

とグラスを空ける場面では、(あいや、ワタシが代わりに飲みますとも)とドラマの中に入っていきたくなってしまう。

 私ならワイン一瓶空けてもケロッとしてるからさ……

 あんなクソ社長、呑みつぶしたるわ。けっ。




 こないだ、通勤の電車の中で、私の前に座った男性が、なんと安達くんにクリソツだった。

 赤楚くんではないんだ。赤楚くんは若手イケメン俳優だから、役を離れればもっとしゅっとしたイケメンぶりを発揮して、キラキラしている。

 40過ぎと思しきその男性は、安達くんが年を取ったらこうでもあろうかと思われる寝癖がついていて、髪型もあのまんま。居眠りしている睫毛がばっさーと長くて、メタボというほどではないんだけど、ちょっとだけお腹がぷっくり出ていた。

(うわー…、見れば見るほど似ている……)

と、失礼ながらそのお顔をしげしげと眺めてしまったよ。

 混み合う通勤電車、出来れば避けたいもののひとつではあるけれど、たまにこうして思いがけない出逢いももたらしてくれる。

 

 

 BL作品でこんなに質の高いドラマを見られるようになる日がくるとは……と、腐歴の長い身としては感慨深い。

 いやもう昔はホント酷かったんですよ。マジで。機会があればその話もしてもいいですけどね。アレとかソレとかね。

 いずれ山田ユギ作品とかもちゃんとしたドラマにしてほしいな。