おっさんずラブが好き!

ドラマ「おっさんずラブ」の細かすぎるレビューブログ。OLの深い沼にハマって当分正気に戻れません。ほぼおっさんずラブの話題しかないかもしれない。ネタはバレまくりなのでご注意を。

11人いる!

 私がこの漫画に初めて出逢ったのは、大学の生協だった。

 本売り場で、その頃出始めていた新装文庫版が積まれていた。

 表紙が綺麗で、センスがあると思ったのと、漫画好きとしてもちろん作者の名前は知っていたのと、多分手に取った理由はそれくらいだったと思う。

 それが、私の1st萩尾望都だった。



 読み終わったときのショックは忘れられない。

 あの鮮やかなどんでん返し。

(そう来たか……!)

一本背負いを食らって、どーんと大の字になって天井を茫然と見上げるような心持ちだった。

 そして、長いとは言えない一編の漫画の中に、私の好きなものがすべて詰まっていた。

 未来、SF、ミステリ、サスペンス、冒険、若者の青春群像劇、ほのかなラブストーリーと、それがしかもBL風味。

 張り巡らされた伏線はすべて回収され、ストーリー展開で、タイトルと鮮烈に結びついて、清々しく爽やかなラスト。

 私が読んだ時点で、古典的名作とされていた。私の親世代がリアルタイムだろうと思う。

 けれど、本も漫画もそれなりに多く読んできたと思っていた18歳の私が、物語の完成度と新鮮さに震えるくらい感動した。

 多分、今の時代に新しく出逢う人にも、同じ感動をもたらすのではないだろうか。



 この文章は感想文ではない。

 あの完璧な短編を語る言葉を、私はいまだに持たない。

 それほど、「11人いる!」という作品との出逢いは、私にとって衝撃だった。



 この作品が支持される要素として、フロル・ベリチェリ・フロルの存在は大きい。非常に大きい。

 性的に未分化で、外見は絶世の美少女にして、挙動は少年そのもの。まだ男でも女でもない存在。

 主人公のタダと恋に落ちる……というところまではいかないか。「恋が芽生える」「イイ仲になる」くらいな関係性なんだけど、そこがいい。

 うーむ、BLに自分の何かを投影する少女たちが何を求めているのか、萩尾先生はよくお分かりだと思う。

 お話全体で、恋バナの占める割合がそれほど多くないのも好み。

 サッパリしていて爽やか。



萩尾望都」という漫画家は、日本が生んだ異能の天才だと思う。

 物語が好きで、漫画が好きだという人なら、男女問わず、ほぼ必ず萩尾望都を読んでいる。

 音楽好きが、ほぼ必ずビートルズを通るのと同じように、避けては通れない門として存在している。

 どんな本でも、「読まなければならない本」もなければ、「読んでないと恥ずかしい本」もない、というのが私の持論だけど、「読まないと絶対に損する本」というのはあると思っている。

 日本語が読める人なら、萩尾望都の作品を一度も読んだことがないというのは、人生損している、とすら思う。

 もちろん思うだけで、人に言ったり強制したりはしませんが。




 もうひとつ、読んで震えたのが「半神」。

 これについてはもう、一言も語れません。

 凄すぎて。

「え、何? どういう話?」

と思う方には、ひとこと

「読んで」

としか。




 萩尾望都をマンガの神様だと思う人、この日本にはたくさんいて、この神様は多産でいらっしゃるので、「ポーの一族」「トーマの心臓」「イグアナの娘」「残酷な神が支配する」等々、作品の数ほど「My Best 萩尾望都」がある。

 私にとっては「11人いる!」が、1stにしてBestの「萩尾望都」だな。読んでない作品も多いんだけど。

 この人と同じ国に生まれ、作品を鑑賞出来る環境にいられたことを幸せだと思う。

 

 

 

 

 

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