ドラマ「ミステリと言う勿れ」が予想以上に「ミステリと言う勿れ」だった。
このドラマ、放送が始まるのをずっと待っていた。
原作のエッセンスを取り込んで作ってくれるのなら、きっと面白いに違いない。
だけどもしかして「コレジャナイ」感に悶えることになるかもしれない。今まで、実写化で(えええーーちょっとそれ違うんじゃない??)と裏切られたことは何度も何度もある。
どうかそうじゃありませんように。
…と、ちょこっとドキドキしながら、祈るような気持ち。
いやー……予想以上に、原作のまんまでしたね…!
あの第一話、ドラマにするには、というか、ドラマの尺におさめるには、ちょっと難しいんじゃないかと思っていた。ややこしいから。
ややこしい上に難しいのが、探偵役である主人公が、ほとんど動かないんですよね。取調室に座って、ただ喋るだけだ。
でも、見事に実写化ドラマになっていた。
超面白い漫画が、面白さはそのままで、テレビの画面の中にあった。
漫画のキャラが、立体化して動いている。
脳内からなんか、ぶわっと出るのを感じました(語彙力…)。
第一話の面白さは、主人公久能が「安楽椅子探偵」として謎解きをするところにある。
それがしかも、本人が容疑者として引っ張られて、取調室に座っている、という状況。
コワモテの刑事を相手に一歩も引かず、ささいな矛盾を見逃さず、切りつけられた刃を見事に打ち返す。
ミステリ好きのハートはここでがっちりと鷲掴みだろう。
あとは多分、久能くんの台詞が、(そうそう、それな…!)とツボを押してくれるところだ。
例えば、お調子者の池本刑事が奥さんとケンカ中であることを鋭く見抜いた後、
「ごみ捨てって、どこからやってますか?」
とツッコむ。
「ごみ捨てって、まず家中のごみを集めるところから始まるんですよ」
「それもしないで、ただ出来たやつをごみ捨て場に持って行くだけで感謝しろって言われても、奥さん身体がしんどいんじゃないですか」
ここで、
「そう、それー!! うちのにも言ってやって!!!」
と溜飲を下げた人、多かったはずだ。
本当に面倒な部分は全部やってもらってるのに、表層的なところだけちょこちょこっと手伝って、
「オレは家事をやってる!」
とドヤってる夫の話、本当によく聞くもん。
理路整然と、よどみなく、忖度なくズバッと言ってくれる久能くんの物言いは、溜飲が下がるんだよね。
自信がない風呂光さんにかける言葉もそう。
「おじさんたちって、徒党を組んで悪事を働くんですよ」
ってさ、「僕は偏見に満ちていて、だいぶ無茶も言いますけど」と断ってはいるけど、事の本質を突いているよね。
「徒党を組んだおじさんたちが働いた悪事」って、枚挙にいとまがないですやん。
悪事をはたらいた女ももちろんいるけど、「徒党を組んで」というところが、ちょっと違う。
「あなたは違う生き物なので、違う生き物のままでいてください」
という言葉を聞いて、風呂光さんの瞳に光が宿る様、伊藤沙莉ちゃん、お見事でした。
話は違うんですが、北新地のビルでガソリンまいて放火した事件があったじゃないですか。
あれを聞いた私の友人が、
「またおっさんなん? ……なんでおっさんてそういうことするんやろな」
とボソッと言っていた。
そう、大体そういうのやらかすのはおっさんだ。全部とは言わんけど99%おっさんだ。
こういうおっさんの凶行を撲滅するにはどうすればいいのか、ずーっと考えてる。
閑話休題。
池本刑事はキャスティングちょっと違うんじゃないかと危ぶんでいたけど、ちゃんと池本刑事でした。エンケンさんの藪さんもいい。
菅田くん、やはり達者な役者さんですね。公式サイトでインタビューを読んだら、
「久能が滔々としゃべると、教祖様みたいになってしまう。そうじゃなくて、発展途上の未熟な人間というキャラにしないと、単なる説教になってしまうので、そこは気をつけている」
とのことだった。
そうそう、よく気がつくし、頭も回るけど、空気が読めなくて、めんどくさいこだわりが強い、未成熟な「久能整」という人物像がよく出ていたと思う。
そして、このややこしい話をちゃんとドラマとして成立させているのは、脚本の力が大きいだろう。
相沢友子さん、好きな脚本家の1人だが、さすがの手腕。
さて第二話、さらにややこしい複雑な事件なので、どうするのかと思っていたら、順番はそのまんまドラマにしたのね。
この話こそ、(ドラマの尺におさまるのか…?)と思ってしまうが、もうこのチームなら大丈夫でしょう。
期待して視聴します。
あ、改めてほしいところがひとつ。
久能くんの長広舌の場面、クラシックの名曲がBGMに流れるんだけど、これがなかなかうるさい。気をとられて、久能くんの台詞を聞きもらしたりする。
これ、要る?? 私は要らないと思う。
余計なBGMはつけないでほしいな。それか、もう少し音量を控え目で。