巨大子宮筋腫全摘手術&入院レポ⑥手術
【手術当日】
朝6:00に起床。二度寝して、6:30頃やってきた看護師さんに起こされた。
手術の朝は、朝一で浣腸される。これが、事前にビビっていた項目なんだけど、いざそのときが来れば、手術前の当然の手順として受け入れる気持ちになる。どうせこの先俎板の上の鯉になるのだ。
その後少し時間を置いて、トイレに行く。出たけどちょっぴり。
歯磨きと洗顔を済ませて待機。
気分は良好だった。昨夜の9時から何も食べていないが、空腹が辛いということもない。お腹の中に何もないと、スッキリして爽快だ。
7:00、最後の水を飲む。この後しばらくは何も口に出来ないので、心して飲む。
手の甲に痛み止めのシールを貼る。弾性ソックスをはき、術着に着替える。術着の下はパンツだけ。
そのまま歩いて手術室へ。
てっきり、ストレッチャーに乗せられてガラガラ…かと思っていた。あれ、緊急のときだけなんですね。自分で歩いていくんだ。
病院では何度も何度も名前を呼ばれる。
部屋に到着して、
「お名前教えてください」
「小谷朔です」
「ハイ」
手術室に入る前、
「お名前教えてください」
「小谷朔です」
「ハイ」
このくだりが何回もある。過去の不幸な取り違え事件を繰り返すまいという医療現場の配慮であろう。
手術室に歩いて入り、中央の手術台にも自分で上がる。上にライトがあって、(おおー、テレビで見てるやつ…!)てなる。
台の上に横たわった後、横向きになって背中を丸める。話に聞いていた硬膜外麻酔だ。針が刺さるのは、さほど痛くなかったが、麻酔が入ってくる感覚が何とも言えずイヤな感じだった。
その後、仰向けになり、酸素マスクをつけられる。
「眠くなるお薬入れますね~」
「ハイ」
と返事をして、そこで意識が途絶えた。
「朔さん! 手術、予定通り無事に終わりましたよ!」
と呼びかけられて目が覚めた。
「とっても順調でした! 予定よりちょっと早いくらい」
(ああ、そうなんだ)
さっきまでスヤスヤ寝ていたと思えないくらい、一発で覚醒した。
(よかった、麻酔ちゃんと効いたんだ。ホントに寝てる間に終わっちゃった)
今の日本の医療技術と、かかっている病院のドクターを信頼していたので、手術自体は全然怖くなかった。私が怖かったのは、稀に起こるという「術中覚醒」だけだったが、それは起こらなかったようだと分かって、非常に嬉しかった。
すぐさま、お腹をさすってみる。ぽこんと膨れ上がっていたふくらみは消えていた。
(お腹がぺったんこになってる!)
これがまず嬉しかった。巨大な腫瘍は私の身体から出ていった。もうあの重さを感じなくて済む。
「筋腫、やっぱり大きかったわ。2kgもあったよ!」
と言われて、驚愕する。
2kgて。一人産んだくらいの重さやないか。
そこからは、ガラガラ…で病室へ行く。乗せられてる方だから分からなかったけど、多分あれはベッドだな。自分の身体にともかくいーっぱい管がついているのが分かる。それと、お腹の傷が痛んだ。当然だけど。
手術が終わって、病室に帰ってきたときの私は、背中に麻酔の管を入れられ、左手首には点滴の針を刺し、尿道カテーテルにおむつ、両足に血栓予防のための装置をつけられているという姿だった。
意識ははっきりとあったので、すぐさまラインで、身内や友達に
「手術無事終わりました」
の報告メッセージを送った。
「おお! おめでとう! よかったね!」
という返信がすぽんっとすぐに来たときは嬉しかった。
一人、
「え、子宮筋腫の手術って、下半身だけ部分麻酔なの?」
と聞いてきた友達がいて、これは多分、メッセージが予想外に早く来たからだろう。
(そんなわけあるかーい!)
とツッコみたかったのと、可笑しくて笑いたいんだけど、術後すぐで、笑ったら地獄を見るので、笑わないようにするのが大変だった。
全身あっちゃこっちゃになんだかんだつけられて、絶対寝たきりかと言えば、そんなことはないのだった。
術後3時間くらいで、チェックに異常がなければ、
「起き上がっていいですよ」
となる。
腹筋は使えないので、ベッドの柵に掴まって、手の力で起き上がる。
ただ、それでも痛いことは痛いのと、1日は絶食でごはんも運ばれてこないし、尿道カテーテルがつけられていてトイレにも行かないので、実際はほとんど寝ていた。
夜の巡回で、
「朔さん、オナラ出ました?」
と聞かれる。
「出ました!」
と答えると、看護師さんがぱっと笑顔になって、
「よかったですね! 腸が順調に動いているようなので、これからはお水を飲んでもいいですよ」
と言ってくれた。
人によってはなかなかガスが出ず、お水の許可が出ないと聞いていたので、これは安心した。
で、この
・術後すぐで満足に動けない状態で、どうやって水を飲むか
が思案のしどころで、事前に予習したYouTubeの動画でも、お水関連のグッズが色々紹介されていた。
そのうちの一つが、「ペットボトルにストローを差して寝ながらでも飲める」というもので、入院する前の日に100均に行って買っておいた。病院の売店でも売っていたけどね。
ベッドの柵にS字フックをつけ、ペットボトルを入れた小さな袋をそのフックにかけて、手が届く距離に配置してあったので、それを取ってすぐに飲んだ。
しばらくはお水の手配もままならないので、500mlの水のペットボトルを2本買って、病室の冷蔵庫に準備しておきました。
ちなみに、婦人科病棟では
「お通じありました?」
とか
「オナラ出ましたか?」
とか頻繁に聞かれる。手術する部位が腸の傍なので、腸が活発に動いているかどうかが重要なんだろう。
大事なことなので、素直に答える。他の人のも聞くことになるが、1日も経てば慣れっこになってしまう。
「〇〇さん、お通じどうでしたか?」
「あ、あったんですけどー、昨日は固くて小石みたいなのがコロコロ出てたのが、今日はなんかびしゃびしゃで…」
と、大きな声で詳細な報告をしている人もいて、全然知りたくもない他人の排泄状況をつぶさに知ってしまうことにもなるんだけど、日常の一部と化して、聞いてもどうっちゅうことなくなるのだった。
排便と排尿は、記入する表も貰うので、正の字で回数を正確につけてました。
手術当日は、看護師さんがともかく頻回にやってきた。1時間おきくらいかな? 血圧と熱、傷の具合をチェック。午後も、ずーっと夜中までそうだった。
背中に麻酔が入っているので、何もないとすぐ、とろとろ寝てしまう。
看護師さんのチェックで起こされて、
「お名前いいですか」
「…小谷朔です…」
「ハイ」
のくだりでちょっと覚醒するんだけど、終わるとやっぱり睡魔が襲ってきて、ほとんど寝ていた。
起きているときはスマホをいじっていた。スマホ、便利。これのお陰で、入院生活退屈せずに済んだ。
(音楽でも聴くかな)
と、アマプラでミュージックかけてみたけど、椎名林檎と宮本浩次の「獣ゆく細道」は、ズンズン響くサウンドが傷に響いて、
(こりゃいかん)
てなって、すぐやめた。
で、結局そのまま寝た。