香川照之の昆虫すごいぜ! 2022年お正月スペシャル
去年の年末、術後の傷の痛みにうんうん唸りながらも、私はあるテレビ番組を気にかけていた。
(冬休みに入ったのに『昆虫すごいぜ』やらねーな……)
だが大丈夫。
お正月早々、スペシャルを放送してくれました。
もちろん録画しましたとも。
NHKの他の番組みたいに、晴れ着でこそなかったが、一応お正月らしくあのお琴のBGMが流れて、それっぽく始まってましたな。
いや、違うか。カマキリ先生はあれが正装なんだわ。
いつも通り、番組冒頭から出力全開のカマキリ先生。
「最近ドはまりしてるものがあるのよ!」
と、レモンの木とみかんの木をチェックしている理由について熱をこめて語りだす。
※ここから話が長くなります というテロップを流すスタッフの温度差もいつも通り。笑
「お正月なのでノーカットでお送りしております」と断っておきながら、1分くらいでアッサリ
「ここでまとめに入ると…」
とばっさり切っていて、これもお約束通りで笑った。
いや、でも今回は見ているこちらも熱が入った。
サブタイトル、見ました? 「完全変態」ですよ。
そう。蝶こそ完全変態の生態を持つ生き物。
完全変態とは
卵➝幼虫➝蛹➝成虫と、ライフステージによって全くその姿を変えながら成長していく生態
これがいかに凄いことかについては、私は以前も熱をこめて記事を書いた。
「これは奇跡ですよ。どれだけ凄いことか」
と、カマキリ先生が熱弁を奮う気持ちはよく分かる。
これはもう、全くもって仰る通り。
もう一度書くけど、蛹になって、その中で「一度全身をドロドロに溶かして再構成する」んですよ?
芋虫が美しい羽の生えた蝶に生まれ変わるんですよ??
凄すぎん……??(震)
幼虫の姿から蛹になるとき、身体の中の水分を全部出すんですね。水分が残ってると、蛹になったとき腐っちゃうんだって。
最初は柔らかかった蛹が、徐々に硬くなって、殻になる。
そのまま、冬の寒さを数か月耐え忍んで、じっと春を待つ。
子供の頃、蝶の幼虫を捕まえてきて、かごで飼ったことが何度かあるから知ってるけど、あれ、ちゃんと羽化して飛べる蝶になるの、難しいんですよ。
まあまあな確率で失敗するんだ。孵っても、羽が伸びきらなくて対称にならず、飛べなかったり、触覚が奇形だったり。
別の虫に卵を産み付けられて寄生されてしまったり。
それこそ、水分が残っていて、腐ってしまう個体も少なからずあるだろう。
生き物の生存戦略としては、決して効率がいいとは言えない。
けれど、その中で生き残った個体が子孫を残して、今まで命を繋いできたのだと思うと、それだけでなんかもう、
「……ぐだぐだちっちゃいことで悩むの、やめよう!」
てなる。
この番組、サブタイトルが
「人間よ、昆虫に学べ!」
なんだけど、ホントその通りだと思う。
もう、アレですね。私はかなり、カマキリ先生寄りの視点で見ちゃってますね。
気を抜くとすぐ脱線するカマキリ先生、バッサリ切られた映像がてんこもりあるだろうと思っていたが、今回はその未公開場面も見られて楽しかった。
ルリボシカミキリの回でタマムシ見つけちゃった先生が大興奮でタマムシに没頭しちゃうくだり、わかるわー。
だってタマムシだよ?
タマムシこそ奇跡の虫じゃない?? 何をどうやったら、あんな七色に光る生き物が生まれるんだろう。
うーん、うーん、ホント、昆虫見てると、(命ってなんだろう)とか、(進化ってどうなってるんだろう)とか、そういうことを考えさせられる。
虫好きのまま大人になった人間としては、昆虫マニアの中でもド変態を極めた香川照之が、こうして昆虫の番組を担当していることが非常に心強く感じる。
しかも今年は「完全変態の凄さを伝えていく」ときた。
「蝶推しで行く!」ですってよ。素晴らしい。
多分、カマキリ先生のことだから、途中でどうせタガメとかカミキリムシとか他の虫に心を奪われて年頭の発言も忘れちゃいそうだけど、番組のディレクターさんには是非、この路線を忘れず、1年貫いていただきたい。
今も蛹の中で変態中の昆虫がたくさんいるだろう。冬枯れの山で、沼のほとりで、土手の草むらで、静かに寒さに耐えながら、命の灯を燃やしている。ドロドロに溶けた身体をゆっくりと作り替えながら、成虫になって飛び立つ日をじっと待っている。
それを考えると、手術でちょっとくらい痛いからって、2カ月もすれば治ってしまう傷なんかかすり傷でしかねーな、と思えてくる。
というわけで、今年は「変態が送る変態に関する変態番組」が爆誕することになりそうだ。
今年もついていくぜ! カマキリ先生!!